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ANAグループの「購買DX」がテイクオフ SaaSの真価を引き出す「Fit to Standard」とAI活用で実現する戦略的調達の未来

ANAグループが購買改革に取り組み、わずか4カ月で安定稼働へと導いた。全社的なDX戦略の下、旧システムからの移行において「あえてカスタマイズしない」決断を下して、大幅なコスト削減と業務効率化という大きな成果を挙げた。その改革の裏側を取材した。

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 ANAグループの「間接材の購買改革」が順調な運用フェーズに入り、新たな購買システムがDXのエンジンとして本格的に稼働し始めた。かつての調達プロセスは、独自の業務プロセスに最適化させた個別開発(カスタマイズ)によってシステム管理コストが上昇し、幾つかの課題を抱えていた。今回の改革は、「2カ月の前倒し稼働」など予期せぬ事態に直面しながらも、無事にプロジェクトを完遂した。

 この購買改革によって開発費や運用費の最適化を実現し、コストの大幅な削減といった成果を早期に享受した。その裏にあるのが、「購買システムをカスタマイズしない」という思想だ。これが、戦略的な購買業務や効率的な運用を支える“英断”になった。

 同社が挑んだ“真のDX”の実現に向けた購買改革について、プロジェクトを主導したANAのキーパーソンに聞いた。

DX戦略による企業変革を「購買改革」で支える

 ANAグループの購買改革は、中期経営戦略におけるDX戦略の一環に位置付けられる。デジタルの力で企業変革や価値創出を加速させて、航空会社ならではの「人による高品質なサービス」にデジタル技術を掛け合わせて事業の飛躍を狙う「Digital by Default × Human Premium」構想を掲げているとANAの橋本至氏は説明する。

 「デジタル技術を活用して、複雑な調達プロセスを代替・改善できれば、創出された時間を『本来リソースを割くべき高付加価値な業務」へシフトできます。また、DX戦略の核である『データやノウハウをグループ横断で資産化する体制』を構築するためにも、調達データを正しく俯瞰(ふかん)して分析できる次世代の購買基盤が求められていました」

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ANAの橋本至氏(デジタル変革室 オペレーション・コーポレートシステムソリューション部 経営サポートチーム リーダー)

旧購買システムを刷新し、「サステナブルなIT基盤」へ

 ANAの調達部が扱う品目は多岐にわたる。飛行機、航空燃料、空港車両、制服といった運航に関わるものから、事務用品などの間接材まで幅広い。より効果的な調達を目指して調達構造改革に取り組んできた。間接材購買においてはシステム導入から5年が経過しており、次なるステップへの課題が見えてきたと同社の廣田望氏は明かす。

 「従来型のシステム導入では、自社の複雑な業務プロセスに合わせてアドオン開発(カスタマイズ)を行いがちです。しかし、カスタマイズをした瞬間(稼働時)がシステムの最高点となり、その後はSaaSの製品思想の進化や業務の変化との差がどんどん開いてしまうという本質的な課題がありました。そこで次期購買システム(システム名:FORTUNE II)を検討する際に、『SaaSをカスタマイズすることなく、業務をシステムに合わせてそのまま導入するFit to Standardの徹底』という明確な方針を下しました」

 SaaSの進化によって得られる恩恵を継続的に受けられる体制への転換を図るという、コストに責任を持つ調達部らしい勇気ある判断だった。

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ANAの廣田望氏(調達部 調達システムチーム マネジャー)

高い要件適合率と横串検索――ANAが探し当てた購買システム

 多くの従業員が使う間接材の購買システム「FORTUNE II」の土台となる製品として、複数の候補から選ばれたのがソフトバンクのグループ企業であるSB C&Sが開発したSaaS型の間接材購買システム「パーチェスワンクラウド」だ。

 「選定に当たって、パーチェスワンクラウドはRFP(提案依頼書)の要件に対して8割以上という高い適合率を示しました。SaaSでありながら、ANA独自の要件に対して業務に合わせた柔軟なフィッティングが可能だった点が大きな決め手です」(廣田氏)

 「IT担当者から見て、ANAの調達部はFit to Standardを深く理解しています。だからこそSB C&Sさんから深い提案があり、円滑に意思決定できました」(橋本氏)

 廣田氏は、パーチェスワンクラウドの機能性も高く評価する。豊富な種類の外部カタログサイトと連携しており、そのまま利用できる。加えて、内部カタログと外部カタログを一括で横串検索し、最安値順に表示したり絞り込んだりできる機能は、現場ユーザーによる価格比較業務の効率を格段に引き上げる。さらにパーチェスワンクラウドの料金体系が「発注明細数による従量課金」となっており、ANAグループ全体に展開してユーザーが増加しても無駄なコストが発生しないこともポイントだった。

突如の2カ月前倒し稼働 分割と集中で乗り切る

 購買システムの移行プロジェクトが進行する中、都合により FORTUNE II のリリース時期を2カ月前倒しする必要に迫られた。

 「この難局を乗り越えるため、プロジェクトフェーズの大胆な『分割と集中』を決断しました。まずは購買業務を止めないための『STEP1(購買)』を最優先に取り組んで4カ月で構築。精算データの会計システム連携や過去データの移行などは『STEP2』として分割して1カ月後ろにすることで、リソースを極限まで集中させました」(廣田氏)

 高いスキルを持つSB C&SのエンジニアとANAが協創し、週2回の定例会議で疑問点を解消しながらプロジェクトを進行。大規模な移行プロジェクトでありながら大きな混乱なく安定稼働に至った

「マニュアルレス」と「早期のコスト削減」がもたらす現場の余白

 ANAは、Fit to Standardを徹底したことで、これまでと比較して開発費や継続的な運用費を大幅に削減することに成功した。

 「人件費も上がっている中で、コスト抑制効果を早期に享受できたことが驚きです。経営陣からも高く評価されました」(橋本氏)

 FORTUNE IIに関する問い合わせ対応は、SB C&Sによる購買支援サービス「パーチェスワン」のBPOサービスが担っている。システムを理解している専門家にヘルプデスクを頼むことで適切に対応できる。パーチェスワンクラウドの更新への追従が早い点もメリットだ。

 現場のユーザーにとっても、パーチェスワンクラウドの直感的で分かりやすいUIは大きなメリットをもたらした。日常的に使うECサイトのようにマニュアルレスで操作できるようになったことで、問い合わせ対応が激減。教育コストの大幅な削減を実現した。これにより、システム担当者の人数も最適化され、浮いたリソースは「購買戦略」や「KPIマネジメント」といった戦略的な調達業務へシフトされている。

適材適所の SaaS と「BlueLake」が切り開く、AI×データドリブン調達の未来

 ANA の調達 DX は、単なる購買システムの刷新にとどまらない。パーチェスワンクラウドの導入と並行して、独自のグループ統合データ分析基盤「BlueLake」を連携させた点が特筆すべきポイントだ。

 単一の巨大な購買システムに全てを統合するのではなく、間接材の購買業務はパーチェスワンクラウドのような適材適所のSaaSを利用して現場の利便性を高める。その一方で、グループ全体の購買データをBlueLakeに集約して、俯瞰して分析できる環境を構築した。

 「AIを高度に活用するためには、質の高いデータの蓄積が不可欠です。すでにAIによる品目カテゴリーの自動分類に着手しており、将来的には他の購買システムのデータもインプットさせる予定です。また、購買データ以外の外部データとかけあわせることによって、AIによる潜在的な異常値の検知や、新たなソーシング戦略のインサイトを得ることで、プロアクティブな調達を実現していきます」(廣田氏)

 業務をSaaSの標準機能に合わせる決断力、困難なスケジュールを完遂するプロジェクト推進力、そしてデータとAIを見据えた構想力。ANAとSB C&Sが二人三脚で成し遂げた本プロジェクトは、大企業におけるDXの最適解を示す、鮮やかな成功モデルといえるだろう。

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提供:SB C&S株式会社、全日本空輸株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2026年5月29日

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