筆者はGW中の1週間、東京〜仙台の往復に限らず、インサイトを積極的に使ってみた。蛇足になるが、ロングドライブ以外の利用シーンで感心したところもいくつか紹介しよう。
まず、意外に使い勝手がよかったのが、リアのカーゴルームだ。インサイトはカーゴルームの下にバッテリー類を搭載しているため、荷物はほとんど積めないかと思いきや、これがけっこう実用的に使える。旅行用トランクはもちろん、クルマに積むのに難易度の高い「幼児用補助輪付き自転車」も余裕をもって収まった。しかもハッチバックなので開口部が広く、大物の荷物も積み下ろしがしやすい。これならばファミリーカーとしても合格点だろう。
また助手席の妻に評判がよかったのが、交差点で止まる度にエンジンが停止するアイドリングストップだ。これはプリウスにも搭載されている機能だが、信号待ちでエンジンの振動と音がなくなることは、慣れるととても心地よい。
そして、忘れてはならないのが、ホンダの純正カーナビである「インターナビ」の快適さだろう。インターナビは独自の渋滞情報サービスを用意しており、サーバー側からの情報で的確に渋滞を避けていく。さらにインサイト向けの機能として、エコ運転を支援する「ティーチング機能」や、パソコンからエコドライブ状況を把握する機能まで用意された。インサイトの魅力を5割増しくらいしてくれる装備である。インターナビの価格は、カーナビとリアカメラ、ETCのセットパッケージで24万9000円。最近話題のPNDと比べれば高いが、サーバー連携で機能やサービスが向上していくことを考えると、むしろお得感がある。
一方、インサイトでやや不満に感じたのが、最上位グレードの「LS」以外は、横滑り防止装置である「VSA」が標準搭載されていないことだ。しかし、VSAのオプション価格は5万2500円と良心的なので、GタイプやLタイプなど他のグレードを購入する際は“必須装備”として装着しておきたい。もし予算に余裕があり、安全性をより重視するなら、「i−サイドエアバッグシステム+サイドカーテンエアバッグシステム」も合わせて装着したいところだ。
世間では「インサイトVS.プリウス」で、とりわけ価格競争の部分ばかりが話題になっている。しかし、インサイトと向き合うと、このクルマの本質的な価値が、単なる“プリウス・キラー”という部分ではないことが分かる。
インサイトの本質的な価値は、「プリウスと違うハイブリッドカーの新基準を作ったこと」にある。「ハイブリッドカー=プリウス」の世界観にくさびを打ち込み、異なるコンセプトで独自の世界観を作り、それを“誰もが手が届くクルマ”に仕立てあげたのだ。特に都市在住者や若いファミリー層にとって、インサイトは清新でとてもセンスのいいクルマだと思う。
日本ではもうすぐ、トヨタの新型プリウスが発売される。強力なライバルに正面から挑戦し、切磋琢磨しながら、どれだけ新たなハイブリッドカー市場を創りあげられるか。21世紀の今、F−1参戦以上にホンダ魂が問われる挑戦となりそうだ。
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