レンズの絞り羽根はどれだけの光の量を撮像素子へ当てるかを制御します。ですが、通過する光の量を調整することで、ピントがあって見える範囲にも影響がでます。F値を大きくするとピントの合う範囲の前後でもピントが合っているように見え、小さくすると、その逆に、ピントのあって見える範囲は狭くなります。この「ピントが合っているように見える範囲」を「被写界深度」と呼びます。
被写界深度は「浅い」「深い」といった呼び方で表現し、ピントが合っているように見える範囲が広い状態(F値が大きいとき)は「被写界深度が深い」、ピントが合っているように見える範囲が狭い状態(F値が小さいとき)は「被写界深度が浅い」といいます。
一眼レフらしさといわれる、被写体の前後が柔らかく写る「ボケ」は、被写界深度が浅ければ浅いほど発生します。絞りは撮像素子へあたる光の量を調整すると同時に、ボケ量の調整も担うのです。
シャッタースピードはシャッターを開けている時間を指します。この時間が短ければ短いほど、撮像素子に光が当たる時間は短時間となり、写真は暗くなります。ですが、短ければそれだけ動いている被写体をブレず、また、カメラを持つ手が動いてしまった際に発生する写真のブレ(手ブレ)も回避できます。
シャッターの開いている時間を長くすれば(シャッタースピードを遅くする)、撮像素子に長時間、光を当てることになるので写真は明るくなりますが、その分だけ被写体が動いている間も光を取り込み続けるので、被写体がブレて写ってしまう(被写体ブレ)ことになります。シャッタースピードは被写体の動きをどのように撮影するかの役割も持っているのです。
走っている人など動きの速い被写体をブレずに撮影したいというときには、シャッタースピードを速くし、同時に、取り込む光の時間が短くなってしまうことによる光量の低下を補うため、F値を小さくしてやればよいことになります。逆に噴水などの流れる水を表現したいという時にはシャッタースピードを遅くして、かわりにF値を大きくして光が入りすぎることによる明るすぎを防いでやればよいことになります。
このように写真を撮影する際、絞りとシャッタースピードは密接な関係を持ちます。最適な値を手動で毎回設定するのは手間になりますので、ほとんどのカメラでは最適な明るさ(露出)となるよう、カメラが自動的に絞りとシャッタースピードを決定してくれる機能を持っています。これがプログラムAEです。
ですが、多くのデジタル一眼では、このプログラムAEのほかにも、絞りは利用者が決めてシャッタースピードはカメラ任せにする「絞り優先AE」、シャッタースピードは利用者が決めて絞りはカメラ任せにする「シャッタースピード優先AE」などの撮影モードを備えています。ボケ量だけは自分で設定したいときには絞り優先、動きの制御だけは自分でしたいという時にはシャッタースピード優先を選択して撮影するとよいでしょう。
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