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第135回 デジ一眼とHD動画の関係今日から始めるデジカメ撮影術(1/3 ページ)

» 2010年12月24日 11時00分 公開
[荻窪圭,ITmedia]

 いつの間にか、デジタル一眼レフへの動画機能搭載が当たり前になった。ミラーレス一眼は当然のこと。カメラによって動画フォーマットや圧縮形式、連続撮影時間、動画撮影中のAF……そのほかも含めた仕様は大きく異なるが、ハイビジョン(HD)動画を撮れるという点では同じ。

 そんな機能があるのなら使ってみよう、というわけで、今回は「はじめてのデジタル一眼動画」というテーマに挑戦してみよう。

デジタル一眼動画の迫力とよい点と苦手な点

 デジタル一眼動画が最高に楽しいのはその映像のクオリティ。一般のビデオカメラに比べて撮像素子のサイズが格段に大きいので、背景や前景がすごくきれいにボケるし、レンズのクオリティも高い。

 しかも撮像素子の感度が高いので、室内でもすごくきれいに撮れる。そんなわけで一発目のムービーをどうぞ。

 これはニコンのD7000に50mmF1.4という単焦点レンズをつけて、比較的暗い部屋で撮ったもの。背景の大きなボケやクオリティの高さを見て欲しい。

 だがしかし、光があれば影もある。

 大きくボケるということはピントの合う範囲が狭い(被写界深度が浅い)ということ。だからほんのちょっとした動きでピントがズレちゃうのだ。上の動画はマニュアルフォーカスで撮ってるけど、猫がちょっと動くだけでピントがズレるのが分かると思う。そのかわり一眼ならではの柔らかい描写になってる。

 写真は一瞬を切り取るので、その瞬間だけピントが合っていればいいけど、動画はそうはいかない。撮っている途中で一時的にズレるのはしょうがないが、ピンボケが長く続くのは気になる。

 逆にわざとピントの合う位置を動かすという楽しみもある。

 イルミネーションでちょっと遊んでみた。

 こちらはパナソニックの「DMC-GH2」(以下、GH2)+14-140mmズームレンズ。

 また、動画撮影時のAF性能はカメラによって違う。ちょっと前のカメラだとMFのみというものもあったし。

 音の問題もある。

 カメラ本体内蔵のマイクを使うと、レンズの駆動音やカメラの操作音を拾いやすいのだ。GH2+14-140mmレンズ(HDレンズと呼ばれていて、HD動画用に設計されたレンズ)のような動画をはじめから意識した組み合わせだとAF時のレンズ駆動音も静かでよいが、本体とレンズの組み合わせによっては、AF時の駆動音をかなり拾うのだ。

 D7000に古いAFレンズ50mmF1.4をつけて動画を撮ってみたところ、冒頭にAF時のレンズ駆動音が入ってしまった。

 気になる場合は外付けマイクにする。あるいはマニュアルフォーカスにするのも手だ。

 もうひとつ、デジタル一眼って基本的に「ビデオを撮るのに向いた形じゃない」ことを理解しておくのも大事。

 だから撮るときは両手で持たないとブレやすく安定しづらいし、ズーミングにも難がある。

 コンパクトデジカメやビデオカメラは電動でズーミングするけど、デジタル一眼の場合、当たり前だけどズーミングは手動でズームリングを回さなきゃいけない。だから、なめらかなズーミングが難しい。ズーミングの速度が不安定だったり途中で回転がひっかかっちゃったり(レンズによって、リングが固いのもあるから)。

 手で持ったままなめらかにズーミングするのは難易度が高い。

 ズームアウトして全体を見せようとしてるんだけど、ズームアウトの動きがぎこちないのが分かるかと思う。

 もうひとつの注意点は手ブレ。

 本体内手ブレ補正を搭載してるカメラの場合、一般に「撮像素子シフト式手ブレ補正」は動画に向いてない。動画の撮影中は常時、撮像素子を動かし続ける必要があるためだ。だからオリンパスのPENシリーズは動画時は「電子式手ブレ補正」に切り替わるし、ソニーのα55は手ブレ補正をオンにするとオフの時より連続撮影可能時間が極端に短くなる。ソニーのホームページによると、環境温度が20度のとき、手ブレ補正オフだと約29分だが、オンだと約9分になってしまうのだ。

 レンズ側で手ブレ補正を行う機種の場合はレンズ次第。

 例えばGH2は動画撮影に力を入れているが、単焦点レンズや超広角ズームレンズのように手ブレ補正を搭載してないレンズもある。

 静止画を撮るときは、写真にブレが写らなければいいわけだが、動画だと撮り続けるのでどうしてもブレは発生する。

 とまあこうして列挙してみると面倒くさそうだが、そこは心構え次第。得手不得手を理解して使えばなんてことはない。

 デジタル一眼動画が得意なのは、以下の2点だと思っていいだろう。

  • (1) 撮影中にズーミングしたりカメラを動かしたりできるだけしないで、シンプルに短時間のビデオクリップを撮る――一眼ならではのボケや暗所での強さを手軽に楽しめるし、ちょっとした瞬間をハイクオリティで残せる。
  • (2) デジタル一眼ならではの表現力を生かすべく、きちんと準備をして本格的に撮る――長所と短所を理解した上できちんと取り組めば、デジタル一眼ならではの映像作品を撮れる。

 長所短所を理解して使えば、ビデオカメラやコンデジの動画機能とは格段にハイクオリティな動画を楽しめるのだ。

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