最近の富士フイルムは、超高倍率ズームやら3Dデジカメやら、面白い製品はあったけれども、主力製品が弱くていまひとつぱっとしない感があり、2005年の「FinePix F10」(レビュー)でいち早く「画素数より高感度!」を打ち出しながら、その座を裏面照射型CMOSセンサー搭載機に奪われてしまったさまには、一抹のさみしさ漂うほどだった。
でも今度は違う。新製品「FinePix F550EXR」は(たぶん)その大リベンジモデルである。デザインこそFinePix Fシリーズの前モデル「FinePix F300EXR」(レビュー)を踏襲しているが、撮像素子を一新。しかもGPSも搭載と、魅力的な「全部入りモデル」に進化したのだ。
一番の特徴はやはり新型撮像素子。
新型センサーは「裏面照射型CMOSセンサーのEXR版」である。
従来、FinePix主力モデルが搭載したのは「画素を八角形にして斜めに並べた」スーパーCCDハニカムEXRだった。「EXR」という隣り合った画素を混合して感度を倍にしたり、隣り合った画素それぞれに別の露光時間を割り当ててダイナミックレンジを広くする技を取り入れて高感度や広ダイナミックレンジに対処していた。
今回は「EXR」構造を取り入れた裏面照射型CMOSセンサーにしたのである。高感度で高速な裏面照射型CMOSセンサーに、斜め配列&独自の画素混合技術(EXR)を加えたわけだ。画素数は1600万画素とソニーの新型裏面照射型CMOSセンサーと同じだが、EXRならではの3つのモードを持っている。
ひとつは「HR」で、普通に1600万画素裏面照射型CMOSセンサーとして使うもの。ひとつは「DR」で、異なった露光時間を割り当てた2つの画素を混合してダイナミックレンジを広げる。残るひとつは「SN」で、2つの画素を混合して感度を2倍に上げるものだ。この2つは画素を混合する関係で画像サイズは半分(800万画素)になる。
F550EXRはダイナミックレンジを調整する機能を持っていて、「HR」モード(つまりフル画素時)でも100%(ノーマル)から最大400%まで変えられる。これは感度を上げて露出アンダーで撮影し、暗部を持ち上げることでダイナミックレンジを広い絵を作り出す技術と思っていい。だからダイナミックレンジを上げるとその分だけ絵が荒れる。
対してDRモードでは最大「DR1600%」(つまり4段分)まで上げられるうえに、DR400%まではISO感度も上がらない。2つ並んだ画素の片方の露光時間を短くしてダイナミックレンジを広げているからだ。「露出を変えた2枚を同時に撮って合成してる」わけで、高速連写と重ね合わせによるダイナミックレンジ拡張に比べると処理に時間がかからないし、絵に不自然さもでないのが圧倒的によい。
続いてSNモード。実はフル画素の状態でもISO3200まで感度を上げられ、SNモード時とISO感度の上限は変わらない。違うのは画質。フル画素で撮って800万画素相当に縮小した写真とSNモードでの写真を比べると、差はないように見えるが、よく見ると、フル画素で撮った方はノイズ低減処理が強めにかかっていて、ノイズは少ない分ディテールがちょっと溶けている。どちらで取っても、F300EXRより高感度時の画質はよくなった。これはすばらしい。
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