この春、各社から20倍前後の高倍率ズームレンズを搭載したコンパクトデジタルカメラが多数発売された。これらはいずれも強力なブレ補正の搭載をうたっているが、実際に手持ち撮影してもしっかりブレなく撮影できるのか? 実験してみた。
人間は機械と違って、微動だにせず同じ姿勢でいることはまず無理である。仮に動いていないと本人が思っていても、実際には呼吸など微妙な振動やシャッターボタンを押した際の動きがどうしてもカメラに伝わってしまう。カメラに振動が伝わると被写体を捉えた光の軸が記録面に対してズレてしまうので、輪郭がぼやけたり、時には何が写っているか分からない失敗写真になってしまう。
そこで、レンズや撮像素子のユニットをブレを打ち消すように動かすことで、手ブレを補正してしまおうというのが現在の手ブレ補正の仕組みだ。ジャイロセンサーが動きを検知し、瞬時にレンズやセンサーを動かすというのだから、考えてみればスゴイ技術である。最近ではさらに、写真に使われていないセンサー記録面の外側の画素も使って合成することで、電子的に手ブレを補正するモデルもある。また、補正のアルゴリズムを改良することでも精度を上げている。
こういったように、手ブレ補正の技術は年々向上しており、さらにそれを小型化することに成功、レンズの性能も上がっているので、以前なら不可能だったコンパクトサイズでも光学20倍のような超高倍率ズームレンズの搭載が現実的なものとなった。
20倍ともなると35ミリ換算で500ミリ相当に迫るが、交換レンズで500ミリとなるとレンズだけで2〜3キログラムの重量になる。それが200グラム前後(このクラスで世界最軽量をうたうソニー「DSC-WX300」にいたっては約166グラム!)のコンパクトカメラで写せるのだからいい時代になったものだ。
今回用意した機材はソニー「DSC-WX300」(光学20倍)、ニコン「COOLPIX S9500」(光学22倍)、パナソニック「DMC-TX40」、富士フイルム「FinePix F900EXR」(光学20倍)、カシオ計算機「EX-ZR700」(光学18倍)の5モデル。いずれも現行シリーズ製品の中では、スリム&高倍率ズームレンズの売れ筋とよべるモデルだ。
実験方法は晴天の屋外で同じ場所から被写体をテレ端一杯までズームして5枚ほど撮影。撮影モードはそれぞれ各社オススメのオートを使った。具体的には、EX-ZR700は「プレミアムオート」、DSC-WX300は「プレミアムおまかせオート」、COOLPIX S9500は「オート」、DMC-TZ40は「インテリジェントオート」、FinePix F900EXRは「プレミアムEXR AUTO」に設定。画像サイズはそれぞれもっとも大きなサイズにしてある。シャッターはAFが真ん中周辺で合致した時に切るようにした。
比較用として、手持ちで撮影する前にそれぞれのカメラを三脚にすえて、2秒タイマーを使ってシャッターを切ったものも用意した。FinePix F900EXRだけは場所は同じだが、機材調達の関係で別の日に撮影してある点を了承いただきたい。
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