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物欲の夏、買って後悔しないアイテムは?(AV&デジカメ編)麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(1/2 ページ)

» 2013年07月22日 10時00分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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 夏のボーナスシーズンを迎え、物欲を刺激されやすい時期になった。経済の先行きに対する明るさも見え始め、今年は少しぜいたくをしてみたいと考えている人も多いのではないだろうか。そこで今回は普段と少し趣を変え、AV評論家・麻倉怜士氏が個人的に使って良かったもの、欲しいと思ったものを紹介してもらおう。

AV評論家・麻倉怜士氏

――今年は高付加価値商品が人気のようです

麻倉氏: 経済の雰囲気も改善され、過去2年とは状況が変わっています。例えば薄型テレビでは50V型を超える大画面が良く売れています。先日発表されたBCNのPOS集計調査では、昨年6月には5.2%だった台数構成比が今年6月には9.3%へと上昇しました。販売されたテレビの“平均インチサイズ”は初めて32を超え、「32.8」となっています。消費者の大画面志向を物語る結果といえるでしょう(→関連記事)。

 注目の4Kテレビは、ソニー、東芝、シャープから出そろいました。その中でも魅力的なのはソニー。まずはブラビアの「X9200Aシリーズ」を紹介しましょう。

音に目覚めたテレビ

麻倉氏: 私は1月に米ラスベガスで開催された「International CES」の会場で初めて見ましたが、シルエットがすごく横長だったので、最初は21:9(シネマスコープサイズのアスペクト比)の、フレームが太いテレビかと思ったのです。しかしよく見ると両サイドに大きなスピーカーが付いていました。

ブラビアの「X9200Aシリーズ」

麻倉氏: もう1つ驚いたのは、展示ブース内に4Kテレビのシアターが用意されたことです。普通ならプロジェクターやAVアンプのデモンストレーションを行うようなスペースを用意しているのに、置いてあるのはテレビ1台だけ。にも関わらず、テレビとは思えない音量と音質で映画「アデル」や「ソルト」を上映していました。

 テレビに映る映像はSDからHD、4Kへと進みつつあります。しかし、音は逆にどんどん貧弱になっていました。これまで表にはあまり出てきませんが、ユーザーも音が悪いと感じていたはず。良い映像には良い音がなければいけません。

 しかし今回の「X9200Aシリーズ」は期待以上ですね。開発にあたり、ソニーは“音のプロ”をオーディオ事業部から引っ張ってきたそうですが、その完成度はまさに「音に目覚めたテレビ」。安っぽい5.1chはもういりません。


――映像のほうはどう見ましたか?

麻倉氏: 各社の4Kテレビを横並び比較でチェックすると、東芝とシャープが“4Kらしさ”を出そうと精細感を重視した画作りをしているのに対し、ソニーは少しだけ甘い印象を受けます。しかし、色や階調とのバランスが良く、トータルでは高評価ですね。

 色域の拡大も効いています。X9200Aシリーズに採用された新しい「トリルミナスディスプレイ」技術は、米QD Visionの発光半導体「Color IQ」を用い、白色LEDから純度の高い青、緑、赤の波長を取り出すというもの。x.v.Colorの色域をサポートし、“Mastered in 4K”BDソフトを再生するとより正確な色を表示できます。また、試聴の際に一般的なBDのようなDCI色域のソフトでも色再現性の向上効果があることを確認しています。

 製品のデザインが従来の薄型テレビとは全く異なるので好き嫌いはあると思いますが、X9200Aシリーズは高い次元でバランスした製品です。今後、10年くらい使い続けられるテレビを探しているのなら、まず候補に入れるべき製品でしょう。

泣けるほど楽しいBDソフト

「レ・ミゼラブル」<ブルーレイ・コレクターズBOX(5枚組)>は、24ページの豪華フォトブックや、サウンドトラックCD(2枚組、42曲収録)、撮影アニー・リーボヴィッツによる限定版コレクターズ・カード(6枚組)などを同梱(どうこん)した豪華版。8190円でパラマウントジャパン(C) 2012 Universal Studios.ALL RIGHTS RESERVED Artwork (c) 2013 Universal Studios.ALL RIGHTS RESERVED

――次はBD 「レ・ミゼラブル」ですか

麻倉氏: 今年前半に発売されたBDの中では1位決定です。 「レ・ミゼラブル」は映画として成功しましたが、BDも好調でパラマウントさんの話では40万枚(出荷数)はいくのではないかと予想しているそうです。

 レ・ミゼラブルは、貧困にあえぐ民衆が自由を求めて立ちあがろうとしていた19世紀フランスを舞台に、パンを盗んだ罪で19年間投獄されていたジャン・バルジャンのその後の物語。面白いところは、泣けるシーンが人によって異なること。マニアの間では、「どこで泣くか」が話題になっているようです。

――これまでにも何度も舞台や映画になっている作品ですが、ここまでヒットした要因はなんでしょう

麻倉氏: 1つの要因は“感情と歌の同化”だと思います。例えばBDのチャプター4。コゼットのお母さんが貧困のうちになくなるシーンは、“泣きどころ”の1つです。このシーンでアン・ハサウェイの「夢破れて」という歌が流れるのですが、舞台で見ると悲しい内容なのにしっかりと歌っていて、それはそれで素晴らしいけれど、ちょっとリアリティーに欠けるんですね。それが今回の映画では、苦しいときの声がそのまま歌になっている。それが涙腺を緩めさせるのです。

 通常、ミュージカル映画の場合、先に歌を録音して演技を後で撮影するものですが、今回は監督がその場で歌も収録しようと提案したそうです。出演者は服に小型マイクを仕込み、横の部屋で演奏されるピアノの音を小型のイヤフォンで聴きながら歌いました。物語にふさわしい感情を歌で表現できる上、映像と音楽が完全にリップシンクしているため、口元をアップで映しても違和感が全くありません。そのシーンの感情にぴったりと合った映像が撮影できたのです。

 また、アップのシーンではカメラの被写界深度を浅くして、わざとバックをぼかしています。カメラは手持ちなのか、画面が揺れるのですが、それが演じる人の心の動きを映し出すのです。またBDには7.1ch音声が入っていますが、劇中、後ろから出る音はほとんどありません。しかし最後のシーン――ジャン・バルジャンが亡くなるときに、パリの広場では蜂起した民衆がうたっている――そこで初めて、全チャンネルフルパワーで大合唱を表現します。それが“叫びの深さ”を示しているのです。

 このようにレ・ミゼラブルは、見た人の感情を揺り動かす仕掛けが「これでもか」というくらい濃厚に入った映画です。泣けるほど楽しめるBD、推薦です。

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