タムロン「SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD」(Model A011)は、35ミリフルサイズで150〜600ミリの焦点距離をカバーする超望遠ズームだ。同社の超望遠ズームといえば、2004年に発売された「SP AF 200-500mm F5-6.3 Di LD [IF]」(Model A08)がロングセラーを続けているが、それを上回る焦点域を実現した上で、新たに手ブレ補正機構「VC」を搭載した新開発のレンズである。
箱から取り出してまず感じたのは、その外観から漂う迫力と威圧感だ。レンズの最大径は約10.5センチで、全長は約25センチ。標準付属する丸形フードを付けると全長は30センチを超え、さらにテレ端までズームアップすると鏡胴が伸びて40センチ以上にもなる。構えた姿は、まるでバズーカで獲物を狙うスナイパー。街中で使うと結構目立つ。
重量は、着脱式の三脚座を含めて1951グラム。今回使用したボディ「EOS 5D Mark III」と合わせると約3キロとなり、重みが肩にずっしりと食い込む。ただし、大きくて重いことは確かだが、フルサイズで600ミリの焦点距離に対応するレンズとしては小型軽量と考えることもできる。
大口径の単焦点超望遠レンズとは違って、中型のカメラバッグに入れて持ち運べるし、腕力に自信があれば手持ちで撮ることも不可能ではない。特に、ふだんから超望遠系のレンズに親しんでいる人なら、このくらいのサイズと重量は苦にならないだろう。
外装はツヤ消しの黒を基調にした高品位な作りだ。鏡胴部にあるブランド名を記したリングは、同社製品でお馴染みのゴールドから、落ち着いた雰囲気のシルバーに変更されている。レンズの先端付近に、傷つきや転倒から保護するためのプロテクションラバーを装着したことも同社では初の試みだ。
AFは、超音波モーター「USD」によって静粛かつ滑らかに作動する。薄暗いシーンや低コントラストの被写体では、迷ってなかなかピントが合わないことがあるが、明るい屋外の順光条件であればストレスなく合焦する。ゆっくりした動きならフォーカスを追従させながら撮ることも可能だ。またレンズ側面には、ピントの範囲を15メートル以遠に制限するフォーカスリミッターを装備。スムーズなピント合わせを行うには、このフォーカスリミッターを積極的に活用したい。
MFの際のフォーカスリングの感触はまずまず。ズームリングはやや重めだ。自重で鏡胴が伸びることはない。手ブレ補正には、内蔵した3つの駆動コイルが補正レンズ(VCレンズ)を電磁的に駆動する「3コイル方式」を採用。補正の効果は上々で、慎重に構えれば1/60秒でもぶらさずに撮影できた。
写りは、150〜300ミリくらいの焦点域では開放値から良好な解像感を得られる。さらにズームアップすると周辺部の解像がやや甘くなるが、絞りを1〜2段程度絞り込むことでシャープネスを高められる。色収差や周辺減光が気になることはなかった。
今回の試用では、望遠鏡をのぞくような超望遠ならではの圧倒的な視覚を気軽に楽しむことができた。モータースポーツや飛行機、野鳥の撮影だけでなく、部分を切り取る感覚の風景写真や、背景をすっきりと整理したポートレート用にも打って付けだ。コストパフォーマンスに優れ、超望遠撮影の入門者にもお勧めできる。
(モデル:長澤佑香 オスカープロモーション)
(ヘア&メイク:HANA)
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