ニコンのミラーレス一眼カメラ「Nikon 1」用の超望遠ズーム「1 NIKKOR VR 70-300mm f/4.5-5.6」が人気だ。Nikon 1のセンサーサイズ「CXフォーマット」は、焦点距離を35ミリフィルム換算すると2.7倍となるため、70ミリ〜300ミリは、189ミリ相当〜810ミリ相当という画角になる。テレ端810ミリというとんでもない画角を、とてもコンパクトなシステムで振り回せるのが受けているようだ。今回は外付けEVFやグリップなどが同梱される「Nikon 1 V3 プレミアムキット」と試したが、こちらのキットも評価が高く品薄状態が続いている。
レンズ本体はニコンらしくとてもしっかりとした造りだ。フォーカスおよびズームリングは、一本ずつ切削された高級感あふれる、かつ指がかりがいい金属製のローレットになっている。ズームリングにあるボタン式のロックを解除すると、カメラ本体の電源が投入され、ズーミングが可能となるが、そのズームトルクも重すぎず軽すぎず使い心地がよく感じた。
またM/A(マニュアル優先オートフォーカス)方式なので、AF時にフォーカスリングを回せば瞬時にマニュアルによるピント合わせに移行できる。その回転スピードによってフォーカスの送り量が変化するので、意図した合焦が可能となっている。使用していてイマイチだと感じたのはレンズフードだ。バヨネット式なのだが着脱がいまひとつシャッキリとしない印象で、ここだけはニコンらしくないと感じた。
写りと使い勝手は良好だ。1 NIKKOR初となるスーパーEDレンズを採用し、定評のあるナノクリスタルコートを施しただけはある。ヌケが気持ちよく、EVFをのぞいていてもクリアさが分かるほどだ。810ミリという遠近感の圧縮効果とボケによる異次元のスナップショットを、とてもコンパクトな Nikon 1というシステムで、手持ちで楽々と味わえるのは快感ですらある。
晴天時の屋外のスポーツや、航空機や生き物などの撮影には Nikon 1の超高速なオートフォーカスと連写性能とで本当に快適に撮影できることだろう。とてもよく効くVR(手ブレ補正機能)がそれを実現してくれる。より撮影を楽しみたいのならば、Nikon 1 V3にEVFとグリップを装着して臨みたい。被写体への追従度とカメラのホールディングがグッと向上するからだ。
東京駅前で地図を見る外国人観光客を810ミリでスナップ。サングラスから髪の毛、地図の描写はなかなかのものだ。ボケも自然で美しい。どうやら日本土産の店を探していたようで、ブラジルから来た彼女に、撮影後いろいろと教えてあげた。
テレ端の35ミリ換算810ミリという世界は、日常の視点と全く違う世界が広がっている。街中のスナップショットも通常の感覚と異なったショットが撮れるから面白い。被写体を探す目線も変わってくるので、撮り歩くのも楽しくなってくる。
羽田空港国際線ターミナル展望デッキから、ワイド端70ミリ(35ミリ換算189ミリ)でスカイツリーを撮影。
羽田空港国際線ターミナル展望デッキから、続いてテレ端300ミリ(35ミリ版換算810ミリ)でスカイツリーを撮影。暑く水蒸気が多い日だったのでスカイツリーが滲んで写っている。
そのスカイツリーの足元まで行き、テレ端でゲイン塔を写しとってみた。強風だったが、よく効くVRのおかげで、見上げる体勢だったのにも関わらず安定して撮影ができた。間近から撮ると遠近感が圧縮され、140メートルもあるアンテナ部分がわずかなものに見えてくる。
駐機中の航空機エンジン部分をアップで。エッジ部分やディテール、質感もしっかりとしている。1インチセンサーでISO450でもレンズとのマッチングの良さで実にクリアな描写だ。
コクピットのアップを狙ってみた。硬質なガラスの雰囲気、使い込まれたワイパーや頭の塗装がはげたリベット、ビスの形状まで納得のいく写りだ。羽田空港国際線ターミナル展望デッキには、撮影用に金網の一部に大きめの穴があいているのだが、通常の一眼レフ用大口径望遠レンズだとどうしてもネットの端がフレームに入ってしまう。しかしこの Nikon 1 のシステムなら余裕でそれをクリアできる。
コンパクトで適度な重量があり、VRもよく効くので動体の撮影も楽勝だ。Nikon 1の超高速連写とAFで、目まぐるしく飛ぶ位置を変えるカモメも難なくノートリミングでフレームのど真ん中に捉えることも可能である。マウント横にある、フォーカス制限切り替えスイッチを上手く使えばより効率よく撮影ができるだろう。
Nikon 1の広範囲な105点の位相差AFエリアと、この1 NIKKOR VR 70-300mm f/4.5-5.6の相性は抜群だ。静物、動体に関わらずススッと超高速で確実に、かつ追従AFができるのが撮り手にとって嬉しい。特にフレーム一杯に広がるAFエリアは、超望遠域でズーミングしながらコンポジションに気を配っていても、しっかりと被写体に食らいついてピント合わせしてくれるのが頼もしい。僅かな差が画角に大きく影響を与える超望遠域において、撮影をガッチリとアシストしてくれるので撮ることに集中できるのだ。このレンズとNikon 1 V3プレミアムキットが欲しくなってしまったほどである。
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