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“レンズだけカメラ”の進化形、“マウントだけカメラ”「ILCE-QX1」を徹底解剖(1/3 ページ)

» 2014年09月18日 23時19分 公開
[荻窪圭ITmedia]
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 2013年秋にソニーが出したQXシリーズが、「レンズだけカメラ」として話題になったのは記憶に新しい。あれに新シリーズが登場した。今度は「レンズすらないレンズだけカメラ」、言うなれば「マウントだけカメラ」だ。

 言っていることがよく分からないかもしれないが、要するに、「レンズ交換式レンズだけカメラ」なのである。

 もはやレンズすらなくなり(もちろん撮影時はレンズ付けなきゃいけないんだけど)、「マウントと撮像素子とメディアとバッテリーと画像処理回路」だけの「筒」になってしまったのである。ミニマムにもほどがあるという感じ。

 これ、誰がどう使うと楽しいの? というわけでいろいろと使ってみた。

QXはモニターを持たないワイヤレスデジカメ

 軽くおさらいしよう。QXシリーズは“液晶モニターやシャッター以外の操作系を持たない”デジカメである。シャッターボタンは本体に付いているので本体だけでも撮影は可能だが、本来は「モニター兼コントローラー」になるスマホと組み合わせて使う「ワイヤレスカメラ」だ。クリップでスマホに装着してもいいし、カメラとスマホを離して遠隔操作してもいい。スマホとカメラはWi-Fiで接続される。そして、QX1はそのシリーズの「レンズ交換式バージョン」なのだ。

 QX1のマウントはソニーのミラーレス一眼で使われている「Eマウント」。撮像素子はAPS-Cサイズで約2010万画素、中味はα5000相当と思っていいだろう。

 ボディはAPS-Cサイズのため、1インチセンサー+ズームレンズ内蔵のQX100より一回り太いが、そのボディにはストロボも内蔵している。

ILCE-QX1ILCE-QX1 キットレンズのE PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS(SELP1650)を装着したQX1と、1インチセンサーのQX100を並べて見た。やはりQX1の方が一回り太い。

 非常にコンパクトだが、レンズ交換式ゆえ、装着するレンズによって重量感はがらっと変わる。もっとも適しているのが標準ズームレンズの16-50mmだろう。電動ズームだし、レンズもコンパクトだ。

ILCE-QX1ILCE-QX1 E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS(SELP1650)を装着したQX1。非常に小さくてコンパクトだが、カメラとして必要な機能はすべて入っている。レンズを外して正面から見ると、ほんとに「マウントだけカメラ」

 ワイヤレスなのでスマホとWi-Fiでつながっていればどう使ってもいいが、本体には汎用のアタッチメントがついており、スマホの裏にこうして装着すると普通のデジカメっぽく使える。

ILCE-QX1ILCE-QX1 ボディの背面にアタッチメントを装着し、スマホをアタッチメントの爪で挟み込む。右の写真は本体+レンズのみの状態
ILCE-QX1ILCE-QX1 スリムなiPhoneでも、5インチクラスのAndroid機でもOKだ。左は本体+レンズ+iPhone 5s、右が本体+レンズ+AQUOS Phone SERIE SHL15(5.2型ディスプレイ搭載のAndroidスマホ)

 では使ってみる。

ILCE-QX1 ちょっと画面が乱れてるが、接続中の画面

 NFC搭載のAndroid機では本体のNFCアイコンとスマホのNFCアイコンを重ね合わせれば、カメラからスマホに接続情報が転送され、自動的にスマホからカメラにWi-Fi接続される。

 カメラの電源がオフでもこれを使えば「オン→Wi-Fi接続→カメラ側のアプリ起動」まで自動的に行ってくれるので楽。時間はちょっとかかるけれども。

 条件がよければ(スマホが他のWi-Fiにつながってないなど)、カメラの電源を入れ、スマホでアプリを起動すればすぐつながる。初期のQXにくらべるとストレスはなくつながりやすくなっている。

ILCE-QX1 フタを開けるとバッテリーとmicroSDカードスロット。バッテリーのフタに(写真には写ってないけど)Wi-Fiのパスワードが書いてある

 iPhoneはNFCを使えないので、最初の1回は手動でパスワードを入力してやる必要がある(バッテリー蓋の裏に書いてある)。パスワードの入力は一度だけでOK。

 iPhone 6/6 plusはNFCを搭載しているが、サードパーティのアプリからNFCを利用できる仕様になっているのかどうか不明なので、今後どういう対応になるのかはまだ分からない。

 QXを使っていて一番面倒なのがこのWi-Fi接続なのだが、一度接続したあとはQX1の電源を入れっぱなしにしておけばかなり楽になる。撮りたいときにスマホのアプリを起動するだけですぐつながる。これをやるとバッテリーを極端に消耗するけれども、まあ、USB充電が可能なのでモバイルバッテリーを1つ用意するか、予備バッテリーがあれば大丈夫だろう。

ILCE-QX1ILCE-QX1 microUSB端子を使って充電や画像の転送を行う。モバイルバッテリーから充電できるのは便利。側面に小さなモニタを持っており、Wi-Fiの起動やバッテリの状態はここでわかる。αのロゴの上にNFCのアイコンが見える。ここにスマホのNFCアイコンを重ねればすぐ接続できる

 バッテリーの持ちと快適さのどっちが大事かといえば、後者だ。

 一度つながれば細かい操作はスマホ側から行う。

ILCE-QX1 撮影中の画面。左下に撮影モードや環境設定のアイコンが並ぶ。電動ズームレンズ時はTとWのボタンでズーミングも可能だ(ただし、スマホからのズーミングは遅いので、レンズのズームレバーを使った方がいい)

 とはいえ、ソニーの他のデジカメに比べてQXは機能が非常にシンプル。スイングパノラマやピクチャーエフェクトといった特殊な機能はない。

 撮影モードは静止画と動画のみ。静止画時は、おまかせオート、HDRや手持ち夜景が自動的に働くプレミアムおまかせオート、そしてP/A/Sの3つだ。

ILCE-QX1ILCE-QX1ILCE-QX1 選べるのは静止画と動画の2種類のみ。撮影モードは5種類で、シーンモードなどは特にない。設定画面ではホワイトバランスや連写などの設定ができる。設定可能な内容は他のソニーのカメラに比べると非常に少ない

 普段はプレミアムおまかせオートで十分だろう。P/A/Sのモードの時はタッチパネルで露出補正やISO感度などを操作する。

ILCE-QX1 露出補正中。スライダーを指で動かす

 プレミアムおまかせオートはやたらと「絞りたがる」ので、できるだけ絞りを開いて背景をぼかしたり、シャッタースピードを早めに維持したい人は、絞り優先(A)を使うべし。

ILCE-QX1 プレミアムおまかせオートで近距離撮影。F9まで絞り込まれたが、もうちょっと背景をぼかしたい。16-50mm 16mm 1/80秒 F9 ISO100 プレミアムおまかせオート
ILCE-QX1 絞り優先AEで絞り開放で撮影。E PZ 16-50mm 16mm 1/500秒 F3.5 ISO100 絞り優先AE

 面白いのは連写機能。連写をオンにすると、シャッターボタンのデザインが変わり、ボタンがスライド式になる。ボタンを指でスライドさせると、それを元に戻すまで延々と連写してくれるという寸法だ。

ILCE-QX1 連写をオンにすると、シャッターボタンのデザインが変わり、タッチするのではなく、スライドになる。一度スライドさせると連写開始、もう一度スライドさせると終了だ

 AFはカメラ任せでもいいが、画面をタッチするとそこにピントを合わせてくれる。せっかく大画面のスマホで操作するのだから、タッチAFを多用したい。ロックオンAFも可能だ。

ILCE-QX1 タッチAFを使うと、そこにピントを合わせに行き、うまく合うと枠が緑になる。右下のボタンを押すと解除。このとき、露出補正やISO感度などはグレーアウトする

 ただし、1つだけ使いづらいのは、「タッチAFでAF位置を指定しているときは露出補正やISO感度変更などの操作ができない」こと。グレーアウトしてるのが分かるかと思う。まず露出系のセッティングをしてからタッチAFという順番じゃないといけない。

 その他、連写のオン/オフがメニューからじゃないとできないとか、スマホを横位置にしてフルスクリーン状態にすると、画面を押すときの指の位置が少しずれただけで露出補正したかったのにタッチAFと解釈されちゃうなど、アプリの使い勝手にはまだ改善の余地がある。

ILCE-QX1 横位置だとほぼフルスクリーン状態になるので、絞りを変えたいのに押す位置がずれてタッチAFが働いちゃうケースも

 もうちょっとデザインを改良していただければと思う。ソニーのWi-Fi搭載スマホ用アプリはQXもαも同じものを使ってるわけなのだが、QX専用のアプリをデザインしても悪くないんじゃなかろうか。

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