Sunの宣伝に踊らないJava開発者

Javaの創始者という立場にもかかわらず、Sunは相変わらず商用の開発ツール市場で苦労している。Java Studio Creatorには大きな期待がかかるが、これまでSunのツールにほとんど関心を示さなかった開発者コミュニティーに認識を改めさせるのは容易ではなさそうだ。(IDG)

» 2004年07月06日 21時34分 公開
[IDG Japan]
IDG

 Sun Microsystemsは、6月末に開催された「JavaOne 2004 San Francisco」カンファレンスの来場者は昨年のイベントを2000人も上回る1万4000人に達したことを明らかにした。これは、Sunが9年前に作り出したJava言語/開発プラットフォームへの関心が依然として高いことを示すものだという。

 しかしJavaの創始者という立場にもかかわらず、Sunは相変わらず商用の開発ツール市場で苦労している。アナリストらは、商用Javaツール市場の底辺にSunを位置付けており、Borland SoftwareとIBMがリードする同市場でのSunのシェアは10%以下と見積もっている。

 Sunでは、JavaOneでデモやプレビューを行った新製品、特にビジュアル開発環境の「Java Studio Creator」が、自社のツール製品に対する関心を再燃させるだろうと大きな期待を抱いている。しかし、これまでSunのツールにほとんど関心を示さなかった開発者コミュニティーに認識を改めさせるのは容易ではなさそうだ。

 「Sunの製品は一切使っていない」――そう話すのは、ソルトレイクシティーにあるBeneficial Life Insuranceのソフトウェア開発者で、JetBrainsの「IntelliJ」のユーザーであるスコット・ジェンセン氏だ。

 「SunはJavaを作り出した。この事実は彼らにマーケティング面での優位性を与えるが、結局、重要なのは製品の競争力だ」と同氏は話す。

 ウェストバージニア州レイブンズウッドにあるPechiney Rolled Productsのシニアシステムアナリスト、リック・デービス氏は、「Sunのツールは検討したこともない」と言う。

 同社ではIBMの「WebSphere」アプリケーションサーバを使っており、ほかの多くのWebSphereサイトと同じく、同サーバ向けにデザインされた開発ツールを利用している。デービス氏はSunがJavaOneで発表した新製品に興味を示しながらも、「多くの製品に興味があるが、検討する時間はない」と話している。

開発者らは「オープンソース」のツールを好む

 JavaOneの来場者から十数名を無作為に選んで聞き取り調査を行ったところ、Sunの商用ツールを使っている人は一人もいなかった。数名が、Sunのオープンソース統合開発環境(IDE)である「NetBeans」を利用していると答えた。Sunは、NetBeansのバージョン4.0をJavaOneでプレビューした。

 テキサス州サンアントニオにあるSierra Nevadaのソフトウェア技術者、ダニエル・ベラ氏は、「NetBeansで十分用が足りるので、Sunの商用ツールを使う必要はない」と話す。同氏の数名の同僚もNetBeansを使っており、そのうち2人がオープンソースの「Eclipse」IDEに乗り換えたという。EclipseはIBMが開発し、今年になって独立非営利組織に管理がゆだねられた。

 大手投資銀行のアーキテクト(匿名希望)は、Eclipse、NetBeansおよびIntelliJを使っている。経費がかかるという理由でBorlandの「JBuilder」を使うのをやめ、安価なIntelliJに乗り換えたそうだ。また、NetBeansよりも「軽快」なEclipseの方を気に入っているという。

 このアーキテクトは「現実的に唯一のJava管理者」であるとしてSunに敬意を表しながらも、「彼らはJavaへの投資をどうやって回収するのだろうか。SunがJavaプラットフォームで儲けることができるとは思えない」と話している。

 Sunはバンドルオプションや会員方式の価格設定といった新機軸を打ち出しているものの、EclipseやNetBeansなどの無償のオープンソースオプションの人気の高まりは、商用製品に脅威となっている。

 Meta Groupのアナリスト、トーマス・マーフィー氏は、コストを削減するために商用ツールとオープンソースツールを併用するという複合的なアプローチを採用する企業が増えるとみている。同氏によると、J2EEツールスイートは開発者1人に付き5000〜1万ドルものコストがかかることもあるという。

 「人々はこういった状況に抵抗している」(同氏)

 しかし商用ツールが備えるアドオンを必要とする開発チームもある。デトロイトの自動車メーカーDaimler Chryslerの開発マネジャー、ジョセフ・サーブ氏によると、同社では、IBMの「WebSphere Studio Application Developer」に含まれるEJB(Enterprise JavaBeans)のサポート、テスト環境およびエンタープライズアプリケーション連携モデラーが必要だという。

 Java Studio Creatorは、Microsoftの開発環境に似たドラッグ&ドロップ型ツールで、Sunの開発者ネットワークの会員(年額99ドル)になれば無償で提供される。同ツールに対する関心の度合いは、開発者によってさまざまだ。

 アリゾナ州フェニックスにあるChoice Hotels Internationalでアプリケーション開発マネジャーを務めるトッド・リーサー氏は、「Java Studio Creatorはおもちゃだ」という声も耳にしているが、同氏のグループではCreatorを検討するつもりだとう。同氏のグループは現在、Eclipseを使っている。「Eclipseはオープンソースで無償だ。しかも素晴らしいIDEだ」と同氏は話す。

 カリフォルニア州シーサイドにあるNorthrop Grummanのソフトウェア技術者、クリストファー・ランドル氏によると、これまでSunのツールは概して遅いという印象を持っていたが、JavaOneのラボでCreatorをテストして驚いたそうだ。ただし、実際に同ツールを使うかどうかは別問題だとしている。同氏はIDEを使っていないという。

 「IDEの場合、自分の目的と関係があるのかどうか分からないような手順も覚えなければならない」とランドル氏は話す。Creatorには気に入らない点がほかにもあるという。

 「私は基本的に、ドラッグ&ドロップ方式のプログラミングは嫌いだ」(同氏)

 Gartnerのアナリスト、マーク・ドライバー氏によると、使いやすいRAD(Rapid Application Development)ツールは、ハードウェア志向のSunにとって開発ツール分野で影響力を確保する最後のチャンスとなるという。同分野にはリーダーが存在しないからだ。「Sunはこの市場では勝ち目がなく、実際、負けてきた。これまでずっと、ソフトウェア戦略に関してはことごとくへまをして痛い目に遭ってきた」とドライバー氏は指摘する。

 Meta Groupのマーフィー氏によると、Sunがツール分野で前進するには、同社のアプリケーションサーバでより強固なプレゼンスを確立しなければならないという。「両者のコンビネーションが必要なのだ」(同氏)

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