「JSFツール? Borlandの顧客はALMを求めている」とパオリーニ副社長Interview

JavaOne 2004 San Franciscoで「Java Studio Creator」がデビューする中、Borlandの周囲は最適化ツールのバージョンアップのみで派手さはない。しかし、開発ツールの老舗は「顧客は包括的なソリューションや開発プラットフォームを求めている」と話す。

» 2004年07月01日 13時48分 公開
[聞き手:浅井英二,ITmedia]

 Sun MicrosystemsがJavaOne 2004 San Franciscoで「Java Studio Creator」をデビューさせる一方、Borlandの周囲は最適化ツールのバージョンアップのみで派手さはない。しかし、Sunと同様、20年もの歴史を誇る開発ツールの老舗は、「ALM」(Application Lifecycle Management)を掲げ、複雑で大規模なインターネットアプリケーションを構築したい企業やデベロッパーらのために包括的なソリューションや開発プラットフォームを追求している。今回のJavaOneで発表した「Optimizeit Server Trace 3」やJava Tools Community参加の狙いについて、デベロッパーツール部門のGMを務めるジョージ・パオリーニ副社長に話を聞いた。

Sun在籍中はJavaOneやJCPを推進したパオリーニ氏

ITmedia 今回のJavaOneでBorlandは「Optimizeit Server Trace 3」を発表しました。その新しい機能や狙いについて教えてください。

パオリーニ 最適化ツール、Optimizeitの一部であるServer Traceは、J2EEアプリケーションのパフォーマンスをテストし、どこに問題があるのかを解析し、改善を図るものです。今回のバージョン3では、パフォーマンスのボトルネックを診断する機能強化はもちろんのこと、本番稼動環境で障害が発生したJ2EEアプリケーションの情報を必要に応じて収集するProduction Editionも用意しました。これにより、ダウンタイムを最小化するとともに迅速な問題解決を図ることができるようになりました。

 また、Server Trace 3ではEmpirix e-LoadやMercury LoadRunnerといったサードパーティーの負荷テストツールも統合できるようになりました。

ITmedia テストだけでなく、本番稼動の領域にもボーランドが参入していく、ということですか。

パオリーニ Optimizeit Server Trace 3がその最初の製品ということになります。ご存じのようにBorlandは、要件定義から最適化・テストに至るまでエンドツーエンドのALM(Application Lifecycle Management)ソリューションを提供していますが、Server Trace 3は本番稼動環境にもその領域を拡大するものです。

 Server Traceは、コラボレーション基盤のStarTeamに緊密に統合されています。企業顧客にとって、デベロッパーやテスト担当者、あるいは運用管理者といったITチーム全体のコラボレーションというのは極めて重要です。テスト担当者や運用管理者がボトルネックを調べるとき、チームで情報を共有することができれば、迅速な解決が可能となるからです。

ITmedia 最近、さまざまなITベンダーが「SOA」(サービス指向アーキテクチャ)を喧伝しています。これへの対応はどうでしょうか。

パオリーニ Optimizeit Server Trace 3では、J2EEベースのSOAアプリケーションを最適化できるようになっています。J2EEの分散環境で、例えば、WebサービスのプロバイダーとSOAアプリのあいだでWebサービスのリクエストがどれくらいのレスポンスタイムで返されているのかを追跡し、解析するのです。

ITmedia Sunは「JSF」(JavaServer Faces)をサポートした「Java Studio Creator」をJavaOneで発表しました。BorlandはJSFをサポートするツールを出してくるのでしょうか。

パオリーニ Borlandは常にJavaの標準をサポートしてきました。まだ正式発表していませんが、キーノートでもデモしましたし、今年の後半には出荷できると思います。

 ただ、JSFは、ASP.NETに対するJavaワールドの回答で、複雑かつ大規模なインターネットアプリケーションの構築に対処するものではありません。SunがJava Studio Creatorで狙っているのは、Visual Basicのように、白い紙にボタンをペタペタ貼り付け、データベースとバインドするような簡単なアプリケーションを迅速につくることができるようにすることです。

 われわれはエンドツーエンドのソリューションであるALMを重視しています。Borlandを支持してくれているデベロッパーらは、要求定義からモデリング、開発、最適化、テスト、そして運用と一連の流れが統合され、情報が共有できることを求めているのです。

ITmedia Java Tools Community(JTC)に参加することも明らかにしました。その狙いを教えてください。

パオリーニ JTCは、Javaの仕様を策定するJCP(Java Community Process)に対してツールに関するロビー活動を展開するような独立した組織と考えてください。Sunにいた時代、私はJCPを推進する立場にあったのでよく知っているのですが、JCPはどちらかというとサーバの機能にフォーカスしていて、デベロッパー向けの機能、特にツールについては討議が十分ではありません。JCPにおけるJava仕様の策定に対して、ツールのつくりやすさや互換性という観点からアドバイスをしていくことがJTCの役割となります。

ITmedia 互換性というのはどういう意味でしょうか?

パオリーニ デベロッパーにとっての互換性とは、あるツールで開発を始めたものを別のツールでも引き継げるということです。Javaは仕様が厳格に守られ、互換性が維持されていますが、ツールとなると依然としてリスクが伴います。JTCでは、特定のツールに顧客やデベロッパーらが縛られることがないよう討議を進めていきます。Borlandは開発のためのプラットフォームベンダーを目指しており、サードパーティーと連携できる相互運用性や互換性を重要視しています。

ITmedia 1月の創設時に参加を見送ったのはなぜですか?

パオリーニ 最初から深く関わっていましたが、JTCとJCPの関係が明確になっていなかったために見送りました。しかし、今後はコアメンバーとして貢献していきます。

ITmedia 日本市場について何かニュースはありますか。

パオリーニ 2月に東京で発表した「Together Edition for JBuilder X Developer」が好調なため、7月からワールドワイドで提供を開始することになりました。Together Edition for JBuilder X Developerは、特にWeb開発機能に的を絞ったモデリングツールをJBuilder Xに統合し、より多くのデベロッパーにUMLモデリングを活用してもらうのが狙いです。

 Borland LiveSourceテクノロジーによって、設計情報とコードの同期が可能なため、デベロッパーらは、例えば、既存のコードからモデル図をつくるといったこともできます。

 先ほどのJSFの話ではないですが、Borlandの顧客らにとっては、真っ白な紙の上にボタンをドラッグ&ドロップで貼り付け、初めからアプリケーションを開発するということは稀です。だれにも既存のコードがあり、どこからSOAに移行すればいいのか悩んでいるのです。コードからリバースできるTogether Edition for JBuilder X Developerは彼らの役に立つはずです。

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