解散? 存続?――UnitedLinuxはどうなったのか

「UnitedLinuxはまだ存在している」と主張するConectivaとターボリナックス、「解散した」と言い切るSCO。消極的に構えるSUSE。UnitedLinuxはどこに向かうのか、各社の見方はさまざまだ。(IDG)

» 2004年07月28日 19時39分 公開
[IDG Japan]
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 2002年5月、4社のLinuxベンダーが標準化された検証済みの堅固なエンタープライズ版Linuxの開発を目指し「UnitedLinux」を立ち上げた(2002年5月30日の記事参照)。このプロジェクトには多くの労力と期待が向けられたが、結局は計画通りにはいかなかった。

 UnitedLinuxの第1版はその年の11月に登場したが、同団体のWebサイトは2003年4月以降、更新されていない。一方、SUSE LINUX、旧Caldera International(現SCO Group)、ターボリナックス、Conectivaという発足当初のパートナー4社にも、多くの変化が訪れている。

 SCOは2003年3月にIBMを相手取った悪評高い訴訟を起こし、同団体を混乱に陥れた。同社は、自社のSystem V UNIXコードの一部を、IBMがLinuxに不正流用したと訴えている。そして、ターボリナックスはオーナーが変わり、米国市場からほぼ撤退。これがUnitedLinuxをさらに揺るがすことになった。さらに昨年末には、Novellが長期戦略の一環としてSUSEを買収し、傘下に収めた。

 こうした変化が起きているにもかかわらず、SUSE Enterprise Linuxをベースに開発されたUnitedLinuxは、依然としてSCOを除くパートナー企業から販売されている。SCOは対IBM訴訟を起こした後、Linuxの販売を終了した。同社はほかにも、Novell、DaimlerChrysler、AutoZoneなどを知的財産侵害を理由に提訴している。ただし、DaimlerChryslerに対する訴訟では先週、SCO側の主張の大部分が退けられた(7月22日の記事参照)

 UnitedLinuxはどこへ向かうのか? 質問を向ける相手によって、その回答は異なっている。

使命は終えた――Conectiva

 ConectivaのCEO(最高経営責任者)、ジャック・ローゼンツバイク(Jaques Rosenzvaig)氏は、標準化したエンタープライズ向けOSを開発するという、同団体が当初に掲げた目標は達成されたと話す。しかし、UnitedLinuxの今後の活動は、新しい展開を見せるかもしれないとする。

 「団体ではなく、製品を作ることが目的だった。UnitedLinuxは、検証済みの一本化したLinuxを実現するという目的地に向かうための乗り物のようなものだ」(ローゼンツバイク氏)

 SCOが訴訟を起こし、SUSEが買収されたにもかかわらず、UnitedLinuxはまだ存在しているとローゼンツバイク氏。「多くの教訓を学んだ。われわれが前に進むための礎になるだろう」。また、UnitedLinuxの販売、サポート、サービスは継続中だと同氏は話している。

 ターボリナックスの国際事業担当ディレクター、マイケル・ジェニングス氏は、SCOの訴訟によってUnitedLinuxを市場に送り出す初期の取り組みに遅れは出たが、ほかの3社にはSCOを締め出すことはできなかったと語る。「業界ではUnitedLinuxのアイデアが本当に歓迎されていた。不幸な出来事が始まってしまったときには、実際に軌道に乗りかかっていたのだ。そしてわれわれは今では、ただ静観しようと考えている。年内に事態は再び動き出すだろう。一体どこへ向かうのか、正確には定かではない」

 「UnitedLinuxは事実上、まだ機能している。まだ組織の形をして、まだ利用中の全顧客をサポートしている。製品を使っているユーザーはたくさんいる」とジェニングス氏。なお、パッチやアップデートは、2007年いっぱいまで提供する予定だという。

NovellのSUSE買収でほぼ終わり――SCO

 しかし、SCO広報担当のブレーク・ストーウェル氏は、別の見方をしている。SCOの関与する限りでは、UnitedLinuxは正式に解散したというのだ。

 SCOの訴訟、NovellのSUSE買収、ターボリナックスのオーナー交代といった要素すべてが影響しているとストーウェル氏。「解散を招いた要因はたくさんある」とする同氏は、NovellのSUSE買収が「UnitedLinuxにとどめを刺したと言える」と主張する。

 UnitedLinuxの元ジェネラルマネジャー、ポーラ・ハンター氏は、現在Open Source Development Labs(OSDL)で事業開発ディレクターの職にある。ハンター氏はSCOの見方を軽視し、「参加企業は自由にUnitedLinuxによる製品の販売、マーケティング、サポート、サービスを続けられる。UnitedLinux 1.0以降の今後に向けた開発については、ここ数カ月、公式な活動を一切していない」と話している。

 ただし、UnitedLinuxの活動はいくつかの分野で成功したとハンター氏は語る。「特にConectivaやターボリナックスにとっては、UnitedLinuxの成果によって、Oracleなどの有力な独立系ソフトベンダー数社とさらに緊密な関係を持てるようになった。関係者全員がこうしたグローバルパートナーと接触を持ち、一定レベルの認定を受けられるようになった。各社が独自に目指していたとしたら、非常に困難だったろう」

 一方、SUSEの元CEOで現在はNovellのEMEA(欧州、中東、アジア)部門責任者リヒャルト・ザイプト氏によると、SUSEはUnitedLinux顧客向けにサポートを続けているが、もはやUnitedLinuxの活動に対しては積極的ではないという。UnitedLinuxのパートナーベンダーであるIBMをSCOが提訴したことが、関与しなくなった主な原因だ。

 Novellは、SCOを除いて活動を続けないかとConectivaとターボリナックスに持ちかけたが、交渉は成功しなかったという。「要するに、われわれは独自の道を選んだのだ。Conectivaとターボリナックスが次期版(のSUSE LINUX Enterprise Server 9)をサポートしてくれるならうれしい」が、サポートに関する合意は一切ない。

 現在、企業ユーザーはエンタープライズ向けLinux市場で、SUSEとRed Hatという2大プレイヤーを選択肢に持ち、好きな方を選べるとザイプト氏は話す。顧客とベンダーはLinuxディストリビューター2社に絞って契約を結び、サポート・検証コストを抑える考えだという。「彼らは1社だけという状況を好まない。再び独占状況に陥ってしまうためだ」(ザイプト氏)

目標は果たせず?

 一部のアナリストは、UnitedLinuxはすべての目標を達成したわけではないとしている。

 「失敗だったと思う」と語るのはQuandt Analyticsのステイシー・クワント氏。UnitedLinuxにはパートナー4社が参加して開発コストを引き下げ、SUSE Enterprise Linuxの技術的な基盤からOSを開発するという狙いがあった。しかしユーザーにとっては、Linux Standard Base(LSB)プロジェクトのコードをベースにした方が良かったのではないかと同氏は指摘する。LSBプロジェクトは、Linuxディストリビューション間の互換性を高め、どの対応システムでもアプリケーションを実行できる一連の標準を開発している。

 IDCのアナリスト、ダン・クズネツキー氏は、UnitedLinuxには当初、米国Linux市場をリードするRed Hat製品の代替として、「誠実な敵対勢力」を開発する使命もあったと語る。しかし、NovellがSUSEを買収して「誠実な敵対勢力の位置に付こうと判断した」ことで状況は変わったとクズネツキー氏。

 発足時のパートナーは、当初の目的の一部をあきらめたようだとクズネツキー氏。UnitedLinuxが最初に発表された際には、「この団体は、ただ1つ(Version 1.0)だけではなく、皆に対して長期にわたってコミットする考えだった。こうした状況の下でコミュニティーは1つにまとまったが、時とともにそれぞれが別の方向に進んでしまった」と同氏は語る。

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