Interview:「Notesは将来も革新を継続」とゴヤールLotus部門GM集中連載 「グループウェア」は再び革新の主役に?

Notesはレガシー? IBMがJ2EEベースのLotus Workplace製品ラインの出荷を開始すると、ライバルたちはクライアント/サーバ型で築いたNotesの牙城を崩すべく、さらに“口撃”を強める。Lotus部門GMのゴヤール氏に話を聞いた。

» 2004年08月16日 00時05分 公開
[聞き手:浅井英二,ITmedia]

IBMは2002年1月、Lotusphereカンファレンスでコラボレーション製品の基盤としてJ2EEスタンダードを採用することを明らかにした。以来、独自技術をベースとしたNotes/Dominoの将来に顧客らは不安を抱くようになり、クライアント/サーバ型で築いたNotesの牙城を突き崩したいMicrosoftやOracleらも、容赦なく「Notesはもはやレガシー」と“口撃”を強めた。しかしIBMは今年5月、サーバによる集中管理が可能な「IBM Workplace Client Technology」を発表した。その狙いは再び革新の中心に豊富な機能を備えるリッチクライアントを据えようというもので、Notesの既存アプリケーションや開発スキルがそのまま使い続けられることも意味する。昨年1月、Lotus部門GM就任直後のLotusphere 2003カンファレンスで「Next Gen」という言葉を使い、J2EEによる製品統合による革新をリードしてきたアンブッシュ・ゴヤール氏にNotes/Dominoの将来を聞いた。

インタビューは電話会議で行った。写真は昨年5月のIBM Software World 2003にて

ITmedia Lotus Notesの出荷から15年、この製品はグループウェアの歴史そのものでした。わくわくするような革新が今後もNotes/Dominoに期待できるのでしょうか。

ゴヤール Notes/Dominoのイノベーションは間違いなく継続しています。それを裏付けるように2004年の第1四半期、Notes/Dominoの売り上げは10〜12%の伸びを見せました。Notes/Dominoのコミュニティーは着実に拡大しています。

 その背景には、われわれがソフトウェアの新しいトレンドや用途に柔軟に対応していることがあります。例えば、Linuxへの対応です。これまでもDominoサーバはLinuxをサポートしてきましたが、6.5からはLinuxクライアントで動作するMozillaブラウザでも(ブラウザ上でLotus Notesクライアントと同等の操作性や機能性を提供する)Domino Web Accessをサポートしました。このDomino Web Accessは、今年1月にニューヨークで開催されたLinuxWorldで、「Best Front Office Application」アワードを受賞しています。

 機能の強化も数え切れません。Lotus Instant Messaging(Sametime)を統合したほか、WebSphere Everyplace Accessによってアクセスできる携帯端末の幅も広がり、多くの顧客らがDominoを活用しています。

ITmedia しかし、もうずいぶんと長いあいだ、MicrosoftはExchangeによってNotesを追いかけてきましたし、Webベースのグループウェアも成功を収めています。

ゴヤール IBMはメッセージングだけでなく、人を中心とした生産性に着目し、そのための機能を盛り込んできました。考えてみてください。ほとんどのビジネスは人を中心としたプロセスです。

 例えば、コールセンターです。社内にある情報を最大限に有効活用し、さらに必要に応じて社内の専門家につないで顧客の問題を迅速に解決できれば、コールセンターを応答性の高い組織に変える、つまりオンデマンド化できます。これによって企業は、コストを削減しながら顧客の満足度を高めることができるでしょう。

 われわれは、コンテキスト(脈絡)に合った形でその生産性を改善したいのです。企業や組織に所属する人の生産性を高め、企業や組織そのものをオンデマンド化していく支援をしたいのです。グループウェアをめぐる現象は、1990年代がメッセージングでしたが、21世紀は人を中心とした生産性の改善であり、それこそがIBMのミッションです。

 Microsoftは手ごわい競合他社です。しかし、Notes/Dominoは、こうした機能面はもちろんのこと、稼動OS環境の選択肢や柔軟性、さらには堅牢なセキュリティという点で顧客らから支持されています。2003年、われわれは1500社の新しい顧客を獲得しました。その多くは競合他社、特にMicrosoftからの乗り換えであり、今年の第1四半期もその勢いは続いています。

 さらに選択肢という点では、2003年11月に出荷が始まったLotus Workplace製品群も選ぶことができます。J2EEというオープンなインフラの上にメッセージングとコラボレーションのソリューションを構築できるもので、こちらも2003年11月から4カ月間で320社の顧客を獲得しました。

むやみなWeb化は不要

ITmedia J2EEベースのLotus Workplace製品群が登場したことによって、既存のNotes/Dominoユーザーに混乱があるように思います。

ゴヤール 2005年末から2006年初めに登場するNotes/Domino 8.0は、Notes/DominoとLotus Workplace製品群、両者の優れたところを併せ持つ製品となります。つまり、クライアント/サーバ型のNotes/Dominoを使っている顧客は、むやみにWeb化するのではなく、そのままNotes/Dominoラインで既存のアプリケーションを使い続けながら、サーバ集中管理型のメリットを享受できるようになるわけです。

 Notes/Dominoの顧客に勧めたいのは、サーバベースのクライアント管理技術が盛り込まれている現行のバージョン6.xを踏み台とし、8.0へ移行していくことです。そうすることによって、既存のクライアント/サーバ型のアプリケーションをWeb化しなくとも、同様の高い管理性が実現できるようになるからです。

ITmedia 開発環境はどうなるのでしょうか?

ゴヤール Notes/Dominoでは現在、2つの主要な開発ツールを提供しています。コラボレーション型のアプリケーションを開発するDomino Designerとワークフロー型のDomino Workflowです。このどちらで書かれたアプリケーションも、8.0では修正を加えることなくLotus Workplace製品群で使えるようにします。Domino Designerとそのスキルは将来に渡って活用し続けることができるわけです。

 確かにわれわれは2つの製品ラインを提供しており、ユーザーの一部に、「Notes/Dominoなのか、Lotus Workplaceなのか」という不安があるのは分かります。しかし、一つ例を挙げましょう。IBMがLinuxベースのサーバ製品を提供し始めたとき、AIX(IBMのUNIX派生)の顧客は「将来はどうなるのか?」と心配したわけですが、われわれは今も、そして将来もAIXに対してしっかりと投資を続け、両者の親和性を高めていきます。

 人を中心とした生産性の改善をわれわれはIBM Workplaceファミリー(Notes/DominoやLotus Workplace製品群の総称)で推進していくわけですが、その根底にあるのは選択と柔軟性です。心配はありません。

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