RFIDはプロセス変革とともに――舟本流通研究室代表 舟本秀男氏RFIDが変革する小売の姿(2/2 ページ)

» 2004年09月22日 22時15分 公開
[舟本秀男,舟本流通研究室]
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 1999年に設立されたAutoIDセンターは2003年10月、研究部門を除きEPCグローバルにその機能を移管した。研究開発から実運用に向けその体制を新たにしたわけである。

 EPCグローバルは流通標準推進機構であるEANインターナショナルとUCC(両機構は2005年1月より“GS1”として統合化される)の傘下に位置する。両機構の参加企業は世界100万社におよび、バーコード、EDI、商品コードの標準を設定推進している。当然日本も当機構の主要構成組織としてその標準を採用することになる。

 EPCグローバルの標準は、64ビットもしくは96ビットのICタグに登録されるEPC(エレクトロニック・プロダクト・コード)、リーダ、周波数帯域、読み取ったコードを検証するEPCグローバル・ミドルウェア、商品の明細データが入っているONS(オブジェクト・ネーミング・サービス)データベース、EPCコードの所在を特定するEPCインフォメーション・サービスから構成されている。

 EPCのコード体系には広く普及されているバーコードと同期を保つため、同じGTIN(14桁の商品コード体系)が採用されていることを認識しておかなければならない。

 Wal-Martはもとより、それに前後してRFIDを採用すると発表した英Tesco、独Metro、米Target、米Albertsonsなどの大手小売業、さらに、これら小売業の主要取引先はEPCグローバルのメンバーであり、その標準に準拠したシステムを採用する。

 日本発の技術、日本発の世界標準といった論議が新聞や業界紙の紙面を賑わせているが、流通業界がグローバルに拡張している現在日本のみが独自標準で進むことは不可能であり問題を残すことになる。

 むしろ積極的にEPCグローバルに参加し、日本の誇る技術やプロセスをグローバルに展開することが世界と日本の流通サプライチェーン改革に貢献することになるであろう。

我が国への影響

 経済産業省は平成16年度、UHF帯用のRFIDタグを用いた実証実験を7業界で実施、さらに低価格のICタグを実現しようとする「響」プロジェクトの立上げを発表している。またUHF帯(950−956Mhz)のRFID利用への開放も明春には実現しようとしている。

 ただし、グローバルでみると、RFIDは民間主同で推進され急速に普及しようとしている。過酷な競合環境の中、持続的競争優位性を高める一環としてRFIDに取組んでいると理解すべきである。

 サプライチェーンの効率化を一層高め、販売管理費比率を抑え、商品の可視性を高めることによって販売機会を増加させ、取引先とのコラボレーション関係を深めることで競争力を一層高めている。

 このような大手を中心としたサプライチェーン連合が、グローバル化の急進展する我が国の流通業界に次々に参入しそのパワーを拡張している。

 国際的に複雑で効率性に劣ると言われている我が国の流通機構も、今こそ変革していかなければならない時に至っている。そのプロセス変革を促すと期待されるRFIDに真剣に取組む必要があろう。

 世界最大の家電小売BestBuyもRFID採用を視野に入れているという話も聞かれる。これにより、世界のコンシューマーエレクトロニクス製品供給基地となっている我が国の家電メーカーで、RFID採用機運が一挙に高まることになるだろう。


著者:舟本秀男氏(舟本流通研究室代表)

日本NCRにおける33年間の業務経験と、5年間の米国勤務経験を基盤に、流通業を革新するための最新の取り組みを研究することで知られる。平成11年に舟本流通研究室設立、米国ムーンウォッチメディア社と業務提携し『リテール・システムズ・アラート』日本語版を発行。日本経済新聞が主催するRetail Technology Summitの企画も手がける。

 経済産業省委託、2002年「SCM推進のための商慣行改善調査委員会」委員。総務省、2002年「国際競争力回復のための企業IT化戦略研究会」委員、ほか。著書『流通再生戦略(同友館)』『図解CPFRがわかる本(日本能率協会マネジメントセンター)』など。

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