開発の混乱を終わらせよう――IBM Rational Software Development Conference

10月に開催されるIBMソフトウェア主催の「IBM Rational Software Development Conference」では、米国でのカンファレンスの方向性とは少し異なり、マネージャー層も見据えたものとなっている。

» 2004年09月24日 16時34分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 日本アイ・ビー・エムの主催で10月7から8日にかけて行われる「IBM Rational Software Development Conference」。同カンファレンスは7月にテキサス州グレープバインで行われた「Rational Software Development User Conference 2004」の日本版となる。

 同カンファレンスはもともとIBMに吸収される以前から存在しており、IBMとして正式に行うのは今年が初めてとなる。しかも日本でのカンファレンスは初めてとなる。そうした初めてづくしのカンファレンスで1000人規模の集客を見込む。同カンファレンスの魅力はどこにあるか? また、日本での開催ということでどんな味付けが加わっているか? 現在、米持氏やSDPテクニカル・エバンジェリストの藤井氏などとカンファレンスの準備に追われるRationalブランド・マネージャの渡辺 隆氏に見所を聞いた。

渡辺氏 Rationalブランド・マネージャの渡辺氏。はじめてROSEに触れたときはUMLの経験も浅く、「何と使いにくいツール」と思ったそうだが、最新のAtlanticですべてのツールが統合されたのを見たときには「手前味噌ながら鳥肌が立った」という。ちなみに好きな言語はPL/Iだとか

見ておきたいブーチの講演

 今回、大きな目玉となるのは、実に6年ぶりの来日となるIBMフェローのグラディ・ブーチ氏(7日の基調講演で登場)だろう。同氏はジェームス・ランボー氏、イヴァー・ヤコブソン氏とともに、3大メソドロジスト(スリー・アミーゴス)として知られる。ヤコブソン氏は高齢を理由に先日IBMを退職したが、ブーチ氏やランボー氏は現在も精力的に活動を続けている。ブーチ氏の口からは自身が研究している内容と関連したソフトウェアの未来について語られることが予想されるが、7月のカンファレンスで話した内容とは趣が異なるものになりそうだ。日本の開発者だけでなく、PMなどが考えるべきことなどにも触れられるはずだ。

「向こうの事例を多く紹介することも最初は検討したが、英語の壁などもある上、参加費を取る以上、参加者には満足してもらいたいので、もっと身近な事例であったり、単なる製品紹介だけでなく、もっとディープな活用方法や、AtlanticのコアテクノロジーであるEclipse 3.0に焦点を当てたセッションなど多岐に揃えた」(渡辺氏)

 また、この第4四半期に出荷を予定しているRational製品後継「Atlantic」(コードネーム)のお披露目となり、その一部を実際に目にすることができる。これまでの開発ツールというと、共通のプラットフォームというものが存在していなかったため、分析・設計・開発という流れにギャップが必ず発生していた。そうした橋渡しをするのがたとえば紙の書類であったりしていたが、Atlanticの登場により、メタデータでツールが連携可能となり、この部分のギャップを縮めることが可能となる。このインパクトは大きい。

 さて、Rational製品というと、高嶺の花だと思われる方も多いかもしれない。ツールはどんどん低価格化しているし、ボーランドなどの競合からは安価な開発ツールも出ている。この価格差を補って余りあるものは何か?

「サービスの部分でしょうね。開発ツールの上の部分と下の部分、たとえば分析ツールを無料にしても使ってくれる人は少ないかもしれない。またテスティングフレームワークであるJUnitなどを使って負荷テストをする場合でもまずはテストモデルの作成が必要となる。こうした部分は必ずサービスが必要になるが、そうした全体のサービスも含めて提供する、つまりIBMからノウハウも提供することで付加価値としているのです」(渡辺氏)

いかに開発の上流をコンサルティングするか

 米国でのカンファレンスは、どちらかといえば開発者に重きを置いたものであった。しかし、米国と日本でのキャリアパスの違いなどを考慮し、今回のカンファレンスでは「ビジネスをどう分析するか」、「ビジネスからどうやってITに落とし込むか」、つまりマネージャー層も見据えたものとなっている。

「マネジャーの方に向けて、SOAがどういう価値を持つかを説くセッションなどを通じ、SIerなどが今切実に感じている、”いかに上流をコンサルティングするか”についての道標を与えたい」(渡辺氏)

 また、まだまだ誤解の多い反復型開発方法論であるRUP(Rational Unified Process)についてのセッションも予定されている。

「反復型というと、”ウチもやっているよ”というが、実はそれは反復ではなく、ただのプロトタイプを作っているだけ、または手戻りではないのですか? と思わせるような場合もあります。こうした誤解を解いて、もっと反復型開発を知ってほしい」(渡辺氏)

 特にマネージャクラスがこの部分を理解していないと、そのプロジェクトは予算と納期の狭間で深刻な困難に直面することになる。マネージャークラスはこの機会にRUPについての自己の認識を確認してみるのもいいだろう。

 なお、マネージャー層を見据えたものになっているとはいえ、開発者向けのセッションも数多く用意されている。メタデータ管理の仕組みや、Eclipse 3.0のプラグインを作ってみよう、といったデベロッパー向けのセッションも用意されている。今回は2日間で50セッション以上あるため、自分に合ったものを選ぶのが難しいとお考えの方もいるだろう。そんな方は、こちらのサイトを参考に、2日間余すところなく同カンファレンスを堪能してほしい。

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