エンタープライズ・グリッド推進するオラクルとEMCEMC Forum 2004 AUTUMNレポート

EMC Forum 2004では、日本オラクルの鈴木俊宏氏とEMCジャパンの松本淳一氏がグリッドコンピューティングについて語った。両社は「Mega Gridプロジェクト」で、グリッド環境を構築するためのガイドラインの作成などで共同している。

» 2004年11月08日 17時17分 公開
[宍戸周夫,ITmedia]

 グリッドコンピューティングが、学術研究用システムからエンタープライズ分野にも進出してきた。それを象徴するプロダクトが、オラクルが提供する「Oracle 10g」といえる。

 EMC Forum 2004では、「ここまでできるエンタープライズ・グリッド・コンピューティング」とのタイトルで、日本オラクル プロダクトSC部アーキテクトグループ担当ディレクターの鈴木俊宏氏が商用グリッドへの流れと同社の取り組みなどを紹介。セミナー後半では、EMCジャパンの松本淳一氏がオラクルなどと共同して進めている「Mega Gridプロジェクト」を説明した。

グリッドは学術系から商用へ

鈴木俊宏氏 日本オラクル プロダクトSC部アーキテクトグループ担当ディレクターの鈴木俊宏氏

 「グリッドコンピューティングは複数のコンピュータをネットワークで接続し、あたかも1台のコンピュータのように見せかける手法。それぞれのコンピュータに処理を割り振り、並列処理を実現させ、科学技術計算など大規模な演算処理を実現するようなシステムを安価に実現させることができる。現在では、学術研究機関で培ったグリッド研究の成果を、商用利用できる技術としてビジネスの土壌に育て上げる流れが起きている」

 セッションの冒頭で、日本オラクルの鈴木氏はグリッドの学術研究用から商用への潮流をこう述べた。

 同社は、最新のOracle 10gでグリッドに対する並々ならぬコミットを示しているが、今回鈴木氏は、特にOracle 10gが提供するストレージ管理ソフトである「Automatic Storage Management」(ASM)について説明した。

 同氏によると、ASMによって、ディスク領域やファイルの管理を自動化し、管理者の負担を大幅に減少させることができるという。「データベースが使用するディスク領域の最適配置を自動的に行ない、データの冗長化による信頼性の向上とストライピングによる高いパフォーマンスを実現する。また、ディスクの追加や削除は動的かつオンラインで行えるため、データベース・サイズの増加に柔軟に対応する」。

 ASMによるストレージの仮想化が、グリッドコンピューティングの実現に重要な役割を果たしているということである。

 その一方で、「グリッドを支えるのはソフトウェアの技術ばかりではない」と鈴木氏は言う。根底では、プロセッサやサーバ、ネットワークストレージ、ネットワークインターコネクト技術など、ハードウェアの技術革新が支えている一面も忘れてはいけない。

安心と安全と安定を手に入れる

 EMCジャパンの松本淳一氏は、従来型のシステムが抱える問題点として、孤立したシステム環境を指摘。孤立した状態では、サービスによってピーク時が異なり、リソース利用率が変化する。そのため、需要に応じた変化が困難で、スケールアップ/スケールダウンが難しく、資源を有効に利用できない。

 「グリッドのアプローチは、異種・雑多なリソースを標準化し、孤立化したシステムを統合。コンポーネント管理を仮想化することで、業務効率を高め、TCOを削減できる」と松本氏。

 そして、グリッドのモデルを実現するための要素として、低価格なサーバリソースの有効利用や、標準的なアプリケーション/ミドルウェアの採用、複数サーバの要求に対する柔軟かつ流動的な対応、高い可用性、管理性、拡張性のほかに、ネットワークストレージも挙げている。ネットワークストレージは、すべてのコンピューティングリソースがすべてストレージシステムにアクセスすることを可能にするからだ。

 またオラクル、デル、インテルと共同して進めている「Mega Gridプロジェクト」にも言及。同プロジェクトでは、グリッド環境を実際に構築するためのガイドラインの作成を目標としており、IA32とIA64を利用したOracle 10g RAC環境の構築に、ストレージシステムとして「Symmetrix DMX」「CLARiX」「Celerra」を使用するとしている。このガイドラインは2004年末に策定される予定という。

 さらに、グリッド環境でのEMCが果たせる技術としては、具体的には「EMC ControlCenter」と「EMC ControlCenter Automated Resource Manager」の2つを紹介。EMC ControlCenterは、ストレージ・レポジトリの管理を行い、視覚的に管理・プロビジョニングするインタフェースで、EMC ControlCenter Automated Resource Managerは、自動的なストレージ・プロビジョニングとレプリケータ機能を提供する製品である。

 グリッドとEMCの情報ライフサイクル管理(ILM)の関係については、「あくまで相互補完するもの。これからの情報システムはグリッドによりサービスや情報を統合して不足や不満を解消する一方、ILMで、情報を失うことなくリスクを低減し回避することができる。ユーザーは安心と安全と安定を手に入れることができる」と結んだ。

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