「日本は技術を自ら生み出す市場、もはや米国追随ではない」、Ciscoのマイク・ボルピ氏Interview(1/2 ページ)

ブロードバンド大国日本におけるCiscoの戦略は、はたまた富士通との提携の真意は――Worldwide Analyst Conference 2004会場で2人のキーマンにインタビューした。

» 2004年12月14日 21時22分 公開
[鈴木淳也,ITmedia]

 米カリフォルニア州サンタクララ――シリコンバレーでも中心地にあたるこの土地の中心に、米Cisco Systemsの本社キャンパスがある。12月6日〜8日の3日間にわたり、この場所で同社のアナリスト向け年次カンファレンス「Worldwide Analyst Conference 2004」が開催された。

 今回、日本市場の総責任者であるシスコシステムズ代表取締役社長の黒澤保樹氏と、以前には日本に滞在して販売戦略を進めたこともある米Ciscoのルーティング技術部門シニアバイスプレジデントのマイク・ボルピ氏の両氏にインタビューの機会を得て、日米市場の現状ならびに、その差異や今後の展望までを語ってもらった。

黒澤氏 シスコシステムズ代表取締役社長の黒沢保樹氏。日本市場における企業の要求の厳しさや苦労について、いろいろエピソードを語ってくれた

―― シスコの日本での現状を教えてください。

黒澤 日本市場の売上の半分が、サービスプロバイダ相手のビジネスによるものです。一昨年が約45%、昨年が50%と少しでしたから、その比率は少しずつ上がってきています。一方企業相手のビジネスの感触としては、景気の影響もあるのか、少しずつ設備投資が始まっている印象があります。

 問題は、サービスプロバイダ相手のビジネスをこれからどうやって伸ばしていくかなのですが、大手と呼ばれる事業者は国内に両手で数えられるほどです。決定的な魔法の策はなく、それぞれに違う考えを持つ担当者の要望をかなえられるように、営業がきめ細かい対応で売り込んでいくのがベストな方法です。幸い、日本は世界のほかの市場と事情が違うことを、上司であるマイク・ボルピも理解を示してくれています。

ボルピ 日本での生活が長かったので、市場の特殊性はよくわかっています。11年前に日本のビジネス立ち上げで来日したのですが、当時は米国のビジネススタイルをそのまま持ってくるやり方でした。当然、いろいろ苦労したわけですが……。

 そのころは技術的にも市場の成熟度でも、米国のほうが先を走っていたという理由もあると思いますが、現状ではブロードバンド対応を見ても分かるように、むしろ日本がネットワーク業界を引っ張っている状態です。ことモバイル技術に関していえば、おそらく世界でもナンバーワンかナンバーツーでしょう。もはや米国の技術をそのまま持ってくるのではなく、自らが率先して技術開発を行う市場となりつつあります。

―― Ciscoが日本で独自に進めている戦略はあるのでしょうか?

ボルピ 3点あります。1つはコアルータのCRS-1に日本ユーザー向けの機能を組み込んだこと、2つめは富士通との提携、3つめが日本での開発センターの開設です。

 すでに、ユーザーの求めるものが米国と日本では違ってきています。米国ユーザーが高速インターネット接続技術を中心に求めるのに対し、日本ではビデオオンデマンドやIP電話などのリッチアプリケーションが中心になります。つまり、インフラはすでにあり、その上で実現するアプリケーションに比重が移っており、業界をリードしている状態なのです。売上の面でも、日本はCiscoにとって大事な市場です。

―― 富士通との提携のメリットを教えてください。

ボルピ 提携相手が富士通であることの最大のメリットは、彼らが単に製品を売るパートナーではなく、インテグレータとしての能力も備えていることです。彼ら自身の販売チャネルはもちろんのこと、導入のためのノウハウを持ち合わせているため、顧客の要望に迅速に対応し、フィードバックを吸い上げることが可能になります。富士通には、ローカライズの部分だけでなく、不具合や機能改変/追加などの細かい部分まで対応してもらうことを想定しています。

 たとえば、ユーザーが「不具合があるようだから、ちょっと見てくれ」と言ってくれば、エンジニアが飛んでいくのが日本の市場ですよね? いちいち米国に問い合わせるよりも、迅速な対応で実績のある富士通に直接面倒をみてもらったほうが、ユーザーとしても安心のはずです。そして、これらフィードバックにより改良されたコードは、ワールドバイド向けにも反映されることになります。

―― 開発センターの概要について教えてください。

ボルピ 詳細は来週(注:インタビューが行われたのは8日)発表予定ですが、当初は10人くらいの規模でスタートし、徐々に大きくしていくことになります。

―― CRS-1に組み込まれたという日本向けの機能とは何ですか?

ボルピ IPv6とマルチキャスト関連です。また、ネットワーク管理やL2/L3トンネリングプロトコルなども日本ユーザーからの要望によるものです。いずれにせよ、機能はいちどに強化できないため、どの要望を優先するかの順位付けが重要になります。その中で、日本ユーザーの要望のいくつかを優先させていただきました。

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