「日本は技術を自ら生み出す市場、もはや米国追随ではない」、Ciscoのマイク・ボルピ氏Interview(2/2 ページ)

» 2004年12月14日 21時22分 公開
[鈴木淳也,ITmedia]
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―― 日本と海外で、CRS-1の機能に対する要望はどのように違うのでしょうか?

ボルピ 日本では比較的コアルーティング関連の機能に対する要望が多いのに対し、ワールドワイドではエッジ系の機能に対する要望が多いようです。例えば、新世代のイーサネット系サービスを提供するような事業者では、「MPLS-PE」「L2/L3-VPN」「VPLS」などの機能を早めに盛り込んでほしいと言ってきています。OSのアップデートのリリースは半年に1回の周期で、いちばん直近では来年2005年1月に予定されています。これらの機能が搭載され始めるのは、2回リリース後の2006年ごろになるでしょう。

―― JuniperやAvayaなどのライバルとの競合について教えてください。

ボルピ Juniperとの競合では、Ciscoはここ最近通信事業者向けに力を入れていることもあり、CRS-1以外の製品サイクルが順調でいい勝負をしていると考えています。Juniperに対する強みとしては、こちらのほうがイーサネットの技術に強いことでしょう。例えば、新技術に積極的なYahoo! BBなどは、コアの部分はパケットベースで処理していても、エッジ側の集約部にはイーサネットを利用しています。この場合、両者の技術に秀でている点で有利になります。

 Avayaに関しては、地域的な差異も大きいでしょう。例えば、北米ではAvayaが大きなシェアを持っていますが、日本や欧州ではまた別の、地域それぞれのライバルが存在します。また北米市場に関して話をすれば、彼らが標ぼうする「VoIP」はあくまで移行過程のものに過ぎないということです。Avayaの目標は既存のPBXをIPベースに置き換えることですが、われわれはその先の展開、例えばコールセンターや、マイクロソフトのExchangeとの連携、ビデオカンファレンスのように、IP化したうえでいかに付加価値を載せていくかに着目しています。

ボルピ氏 米Cisco Systemsルーティング技術部門のシニアバイスプレジデントを務めるマイク・ボルピ氏。黒澤氏が「私より敬語がうまい」と冗談をいうくらい達者な日本語で、日米両国のビジネスの現状をわかりやすく解説してくれた

―― 今後、Ciscoにとってのビジネスチャンスは?

ボルピ IPテレフォニー関連、そして光関連です。特に今後、光ファイバのインフラへの置き換え需要が発生することになりますから、そこがビジネスチャンスになると考えています。通信キャリアは、メーカーに対して箱(製品)の提供だけを望み、テストなどもすべて自前で行ってしまう傾向があります。とにかく新しい物好きで高性能なのを選択して、力技で動かしてしまうのです。Ciscoとしては、ユーザーに対して戦略的なインフラ構築をお手伝いできるような体制を作っていくのが目標だと考えています。

―― 日本でのコンシューマビジネス(リンクシス)の現状を教えてください。

黒澤 北米では50%以上のシェアを持つリンクシスですが、日本ではまだそれほどメジャーな存在ではありません。バッファローをはじめ、強力なライバルが多数いる市場ですから、少しずつシェアを拡大する戦略をとっています。例えば先日は、CATV事業者のJ-Comとの提携で、CATV経由でリンクシス製品の販売を行うチャネルを確保しました。J-Comは国内でも最大手ですから、今後ほかの事業者も追随していく可能性があります。このように、サービスプロバイダのチャネルを最大限に活用していく方向を考えています。

―― 北米市場ではLinksysは、Ciscoブランドとどのように差別化するのでしょうか?

ボルピ Ciscoは「High-Value」、Linksysは「Cheap」というように、二面戦略をとっていきます。実際、Linksysの100ドル未満の製品に、Ciscoブランドの製品と同様のサポートを求めるユーザーもいないでしょう。ただ「Linksys by Cisco」という形で、TV-CM上でLinksysのブランディングキャンペーンを行っています。実際、この作戦は効果が高く、Cisco買収時に40%前後だったLinksysの市場シェアは、CMキャンペーン後に50%以上にまで跳ね上がっています。



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