新役員体制で船出のトレンドマイクロ第3章

トレンドマイクロは1月6日、新会長および新社長兼CEOの就任会見を開いた。1月1日付けで、前社長兼CEOのスティーブ・チャン氏が会長となり、前CTOのエバ・チェン氏が社長兼CEOに就任した。

» 2005年01月06日 16時56分 公開
[堀哲也,ITmedia]

 トレンドマイクロの第3章の幕開けだ。トレンドマイクロは1月6日、新会長および新社長兼CEOの就任会見を開いた。1月1日付けで、前社長兼CEOとしてパワフルな人柄で同社を引っ張ってきたスティーブ・チャン氏が代表取締役会長となり、前取締役グループCTOのエバ・チェン氏が社長兼CEOに就任した。

 会長となったチャン氏は、「次の5年はトレンドマイクロにとって重要。IT業界が大きな変化している中で、今後も会社を成長させていくためには、明確なビジョンを持たなければならない」と話した。

新役員体制になったトレンドマイクロ 左からスティーブ・チャン会長、エバ・チェンCEO、大三川彰彦日本代表

 同社が注力するエンタープライズソフトウェアの世界では、OracleがPeopleSoftを買収し、同社のライバルであるSymantecはVeritas Softwareを手に入れるなど、市場統合の流れにある。同社にとって、これまで通りの成長を維持するには、組織としてのガバナンスを強化する必要があり、チャン会長が統治を行うことでそれを確実なものにする。

 日本代表の大三川彰彦氏は、新体制を「第3章の幕開け」と表現。創業から上場までの第1章、ネットバブル崩壊から成長の第2章を経て、新役員体制となった第3章では「成長の継続」を掲げる。

 新役員体制の決定に当たっては、あらかじめ同社のビジョンやミッション、戦略を策定しており、新CEOのチェン氏はこれらを確実に実行していく役割を担う。チャン会長は、「彼女には米国の厳しい市場で戦い、当社を成長させてきた実績がある。CEOとしてベストの資質を備えている」と新CEOを評価する。

 新たな戦略とは、「脅威のライフサイクル管理」「タイムリーなアップデート」「ネットワーク情報フローとの統合」の3つ。今後も脅威は予測不可能であることから、予防から復旧までを顧客を支援していくことを約束するほか、大規模感染に即座に対応できる製品・技術・組織を目指す。また、個別のネットワークだけでなく、携帯電話やデジタル家電などあらゆる機器がつながるネットワークをインフラとして保護していく。

チェンCEO カスタマーセグメンテーションによる組織で、柔軟かつ迅速に対応する、と所信を話すチェンCEO

 新戦略を舵取りするチェンCEOは、チャン会長とともにTrend Microを設立、チャン会長が日本に本社機能を移した後、米国の業務執行役としてTrend Microを切り盛りしてきた経歴を持つ。2002年には取締役グループCTOを務めており、米Network World誌では、2004年ネットワーキングの世界で最も力のある50人の中の1人にも選ばれている。

 チェンCEOは、「トレンドマイクロはスティーブの特徴のあるCEOの下で既に成功している企業。これを上回るパフォーマンスを求められるので、緊張している。しかし、自信もある。自分としては(CEOの大役を任されても)落ち着いているし、当社には既にしっかりとした基盤が出来ている」と気持ちを語る。

 新戦略をどのように実行していくかについては、「コアコンピタンスは、ウイルスエンジンだけでなく、組織にある。組織全体が、大規模感染に対応できるファイアーファイター(消防士)のメンタリティーを持っている。この強みとサービスを顧客にきちんと説明していく」と述べた。

 特に、顧客がCIOや専門のセキュリティ要員を抱えているかなど、規模よりも組織形態に合わせて柔軟に対応できるよう、同社の組織体制を作り変えていく方針。「学習する組織。ここに注目してほしい」(チェンCEO)。

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