SOAの意味するもの――時代を見る新たな潮流(3/5 ページ)

» 2005年04月25日 00時00分 公開
[清水敏正(日本アイ・ビー・エム),ITmedia]

勢力図の書き換え

 巨大企業が世の中心価値を形成していた時代は終わり、思ってもいなかった勢力図の書き換えが起きる。人々の購入動機が企業を興隆させる例ではNTTドコモの携帯電話があり、最近ではアップルコンピュータのiPODがある。固定電話から携帯電話へのシフト、ADSLの急速な普及、インターネットでの購入があたりまえになると予想した人は数少ないだろう。迅速な企業の経営判断、体制の刷新、事業の廃止・開始、などのサイクルは、M&Aの増大と共にITシステムへの大きな課題である。

 2005年4月4日付けの朝日新聞のコラム、人脈記『社長たちのアメリカ(1)』に書かれた松下電器産業社長の中村邦夫氏のストーリーは、正に新しい企業の動きを示唆している。中村氏が何度も読み返した本『BEATING JAPAN』では、日本企業の技術重視、顧客ニーズの無視などの『欠陥』が描かれていた。ブランドさえあれば売れると思い込んでいるとも書かれていた。

 以下、要点を抜粋すると、『…松下の事業部は縦割りの壁を作り、情報が流れない。お客が何を欲しがっているかをつかむことを忘れている。…97年に帰国、00年6月に本社の社長に就くと、幸之助が導入した事業部制を廃止し、子会社群も吸収した。2年後にはV字回復の軌道に乗せる。』 

 組織のこのような変革は、我々の想像以上に困難であったろう。IT改革以上に難しいことは容易に推察できる。SOAに根本理念があるとすれば、迅速さであり、ビジネス目的の追求である点で、中村氏の思想と共通するものがある。

 SOAへの日本の大企業の取り組みは、残念ながら米国に比べて出遅れている観は否めない。昔のITの目標は、所謂『機械化』であったし、最近ではERP、CRM、SCMなど部分的に企業の活動を支援するもの、あるいは一部の中枢であった。ここに来て、それらを横断する水平軸での統合、インテグレーションが本来のSOAの目的とするところであるが、そのためには、LOB側(注)、業務側の密接な理解と協力が必須である。SOAはIT部門だけでは出来ない。

 (注:LOB“Line Of Business”企業が業務を進める上で、主要な役割を果たす基幹業務アプリケーションのこと。在庫管理や受発注システム、SCM、ERP、会計などのシステムを指す)

CIOだけでは進まない

 SOA推進に強力なCIO(最高情報責任者)が必要なのは言うまでもないが、CIO一人の理解と掛け声だけでは何も進まないのは日本企業だけの特徴ではない。

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