Blogであるべき「形」へのこだわり――カレンBlog情報共有の未来(2/2 ページ)

» 2005年06月07日 15時56分 公開
[聞き手:木田佳克、森川拓男,ITmedia]
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四家 Webというものは今後、大きく2つに分かれていくと思います。ひとつは、従来型のサイトが発展していくことで、印刷物の模倣からスタートしたものがインタラクティブ性を増すケース。例として、Flash Communication Serverなどを用いてますますエンターテインメント色が高まり、インタラクティブテレビに近いリッチな流れです。

 もう一方は、いわゆるValidを重視する方向性ですね。XMLの規格をしっかりと守り、人間も読むけれども、機械やサービスも可読するというものです。セマンティックWebへと進化する仕掛けです。

 表現上で言えば、Blogの大きな功績である構築の容易さだけに留まらず、更新が簡単、記事蓄積の仕組みが規定されていることが重要です。記事投稿することが簡単ということは、これまで情報配信に時間を割くことができなかった人が記事を書く機会を得たわけです。それが、企業では社長という流れでもあり、IT業界から離れればタレントやスポーツ選手などが直にコメントできるようになったことがポイントでしょう。いろいろな人が、それぞれの「私」を出していけるようになったわけです。

企業利用Blogの形

ITmedia 企業によっては、あまりに気軽に配信出来てしまうことにとまどいを感じるという意見がありませんか。

四家 あります。ただし、気軽に配信できるから気軽に配信するというのは違う話だと思います。例えば、カレンでは、Blogマーケティングを行う場合、かなりしっかりとした設計を行います。いくら気軽に更新できるからとはいえ、読者にとってつまらないネタで水増し更新し続けるのは好ましくありません。このため、ひとつの商品でBlog展開するといった場合、2カ月間限定というのが多いですね。その間は、厳密なスケジュールを決めておき、すべて洗い出しておくのです。また、期間終了後にはできる限り「更新終了しました」という形で保存しておくことをすすめています。Blogにはコメントやトラックバックによる反響もあるため、SEO的な効果もあります。

 ただし、良い面として割とスケジュール通りにならないことも多いです。例えば日産の「TIIDA BLOG」であれば、アドリブがどんどん入っています。実は2004年10月から2カ月限定の予定だったのですが、いまだに続いているという状況なのです。このアドリブ性も重要であり、それを受け止めるシステムとして柔軟なBlogがあり、活性化にもつながっていくわけです。

RSSへの期待

ITmedia ブラウザでもRSS対応が今後の流れとしてありますが、情報の流れのトレンドとしてどのように見ていますか。

四家 大いに期待したいですね。例えばメールマガジンは、技術的、目的を加味してもRSSでほぼ事足りてしまうでしょう。なぜ踏み切れないかというと、メールの普及率が限りなく100%であり、RSSリーダーの普及率は現在、推定5%程度という状況だからです。100対5では話にならないでしょう。この状況が変わり、RSSが50程度まで上がってくると、メールマガジンの形態はRSSに任せられるはずです。そして、単に移行することにメリットがあるのではなく、個人情報を抱え込まなくてもよい点が大きなところです。従来は、とにかく個人情報を集めることに執着してきた感がありますが、この情報の中には無関係な人も含まれていたはずです。これはスパム規制などの情勢も影響していますが、配信のための手間もコストがかかりますし、個人情報を抱えることがリスクとのなり得るわけです。

 一方で、逆に過剰反応で抱えるなという方向に行くのも間違いではあります。最終的には必要な個人情報を再定義するべきということでしょう。

イントラネットの利用、個人を出すことの意味

ITmedia イントラネットベースのBlogへの関心も最近問いただされています。

四家 カレンのビジネスとは直接関係がないですが、有望な市場だと思います。いちばん分かりやすいところで言うと、全社向けの一斉メールはやめようという話があります。これをRSSで置き換えて、RSSリーダーを使い、不特定多数の人に投げかけるものは全部RSSにしか流さないよってしちゃうと。そうすると、社内からのお知らせと、競合他社の情報など社外から流れてくる情報も、全部RSSで流すということが可能になってくる。それをさらにイントラネットの中にその組み込まれてしまえば、非常に生産性が上がるんじゃないかなと。RSSリーダーの普及率の問題がありましたけども、会社ですから、全員に使わせることができる。

 まず情報の流通の仕組みとしてはRSSが前提にあって、そこにBlogがどのような役割を果たしていくかというところにおいては、やはり「人」だと思うんですよ。つまり会社の中で、それぞれがいま何に興味関心があるのか、これまでのバックグランドは? など、知る機会が少ないはずです。たまに飲み会で話を聞けば、こんなに面白いやつだったのかなどと気づき、あの仕事の相談をしたいななどという話もよく出てくるわけですね。人の情報というものは、部署に落ちるものでもなければ、社内のデータベースに落ちるものでもなく、「人」に付くものじゃないですか。そうなると、特定の人のパーソナリティをもって情報が整理されていく仕組みとしてのBlogは、社内向けにも価値あるものになると。もう毎日飲み会やってるのと同じような状態になってくるのでは(笑) 非常に大きな意味を持つと思いますね。

ITmedia RSSリーダーなど、ビューを担うソフトの機能性を吟味しなければ、Eメールと同じになる気がしますが。

四家 企業向けにはイントラネット向けの独自RSS配信が必要になると思います。あとは、情報の重要度を機能レベルで実装するか、運用レベルで行うかなどの必要性が問われると思いますね。

ITmedia あまりにBlogが高機能さにシフトすると、標準規格であるメリットが壊れてしまう危険は。

四家 そうですけどね。社内におけるニーズ次第だと思います。出来る限り標準的なもので対応しておき、どうして必要な要件を開発するという話ではないかなと。例えば、うちの社員は表に出ることが多いので普通のBlogだけではチェックできないという理由からケータイで読むようにしようかという話になると、どう組み込んでいくかという展開になります。通常のMTだと読めないから、新しいテンプレート開発するとか、ケータイ専用のRSSリーダーを持ってきてカスタマイズして使うとかって話になっていくのかな。できる限り標準で走っておいて、必要なところだけカスタマイズしていく方が、効率的かなと思います。



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