ホスト脱却、ERP導入で次世代のビジネス展開を図るアパレル企業中堅企業のIT化の実際(4/4 ページ)

» 2005年10月25日 08時11分 公開
[田原 佳和,ITmedia]
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 2004年12月にプロジェクトをキックオフ。SAP R/3のモジュールではSD(Sales and Distribution)、MM(在庫購買管理)、FI(財務会計)とCO(管理会計)の一部を導入した。コストと期間を圧縮するため、EOS(Electronic Ordering System)については既存のホストの仕組みを残した。

 また、物流に関しては1年前に外部倉庫とホストシステムのオンライン連携が完成していたので、基本的にそのインタフェースと同じものをR/3側で作り込むことで対応した。

いよいよ本番稼働

 そして、8月1日、本番稼動。

 本場稼動直後は不慣れなオペレーションも目立ったものの、徐々に現場も慣れていった。。だが、まだまだ、以前のような村田長に最適化されたシステムに比べるとユーザーの負荷は大きい。また、R/3の標準レポートでは、村田長の営業部隊が必要とする情報を提供できないなどの課題もあり、対応しながらの運用となった。

 キックオフから8カ月足らずでの本番稼動は、ロジスティクスを含んだSAP R/3の導入においては比較的短いほうである。だが、実際には、ユーザーが早い意思決定を下し、アドオンが多くなければ導入期間はそれほど長くならないのだ。

 最大の問題は、実際に使うユーザーの新システムへの「慣れ」である。中堅企業では大企業と比較して意思決定に時間がかからないのは事実であろう。ただし、体制的に専任化は難しく、十分に細かい部分まで検証できるかというと実際にやってみないと分からない部分も多い。業務プロセスが明確になっていない場合も多く、以前のシステムも改修に改修を重ねてきているので、最終的な仕様書がない場合も多い。

 当然、「あるべき姿」もぼやけた状況での導入となるため、運用フェーズに入った当初の負荷は大きくなる傾向がある。だからといって、テスト期間を長くしても結果的には状況は改善されないだろう。「あるべき姿」が見えない中でテストしていても、若干オペレーションへの慣れは高まるが、精度は上がらない。テストと本番では、その習得への気迫が違うからである。

 とにかく、村田長は変革への第一歩を踏み出した。今後の他事業への展開、データウェアハウスの導入、ホストリプレースに向けてのサブシステムのダウンサイジングなど、取り組むべき課題は多い。

 村田長は自社でこそ生産していないが、大きな調達先である中国メーカーとの連携のために、中国にも事務所を置いている。現在も多通貨を利用しているが、将来的にはそこでも何らかのパッケージシステムの利用を検討する時期が来るだろう。また、VPNを通じてのモバイル利用も始めようとしている。

 まずは、ERPの導入に成功した。だが、恩恵を受けるのはこれからが本番なのである。

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