中堅企業のシステム構築の勘所――とにかく早く稼動させるシステムインテグレーターとの付き合い方(4/8 ページ)

» 2005年10月26日 09時02分 公開
[神宮司 剛,ITmedia]

業務をどうするかが先、システムは最後

 「システム化は目的ではない。ただのツールにすぎない」

 よく聞かれる議論だ。しかし、実際の取り組みを見るとシステム化が目的になっているケースが多いように思う。パッケージ機能に合わせて業務を見直す、システム稼動と同時にプロジェクトを終えてしまうなど、システムの観点で業務を検討するものの、ビジネスの観点から業務を見直してないケースは多いのではないか。

 会計・経理など独自性が重要でない業務なら、こうしたシステム中心のアプローチもあり得る。しかし、販売・生産など他社とは違うやり方が求められる業務にこうしたアプローチを採用するのは危険だ。システムに業務を合わせために他社に差別化できなくなる、というよりは、大抵の場合、カスタマイズをたくさん行い、複雑で使えないシステムになってしまう。

 システムインテグレーターを中心にした調査によると「システムの品質問題がどこで起きているか」という問いに対して、「要求定義が不十分だった」とする回答が圧倒的に多かったそうだ(日経コンピュータ「要求定義の定石 2004年1月」)。多くの企業がプロジェクトを始めた時点でつまずいていることになる。

 これは、要求定義の作業そのものよりも、業務をどうするかを十分に検討しないまま、要求定義に取り掛かったことが本当の原因ではないかと思う。競争するために、儲けるために、ビジネスの観点から業務をどう変えるのか、何を残して何を捨てるのかをまず検討するという当たり前のことから始めなければならない。

 業務をどうするか検討することで、結果として、そもそもシステムが必要なのかどうか、必要とすればシステムの要件と優先度を明らかにできる。規模が小さい中堅企業であれば、競走上優先度の低い業務は、システム化しないという選択もあり得るのだ。

 こうした検討は、システムインテグレーターの要求定義とは全く異なることを認識したい。

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