「ツールありき」で始まった情報共有情報共有を成功に導くための7つのヒント(前編)

「情報共有による生産性の向上」―― 企業の多くがグループウェアに夢を見たのは、もうずいぶん昔のことになる。あれからもう10年以上。情報共有は、どれだけわれわれの生産性を向上させてくれたのだろうという疑問がわいてくる。実際のところ、情報を共有することの本質についてよくよく考えれば、行き詰まり感さえ漂ってくるのが現状ではなかろうか。本稿の主題は、「これを打破するために、今すぐはじめるべきこと」である。

» 2005年11月01日 00時00分 公開
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 今回、ITmediaでは、そのヒントを探るべく、マイクロソフト株式会社を訪ね、ポータル&コラボレーションのソリューションスペシャリストならびに同社情報システム部門のITアカウントマネージャーらによる座談会を実施した。現状の問題点や課題、情報共有のあるべき姿、そして、今回の議論で浮上したいくつかの知見を紹介していこう。

マイクロソフト本社で実施した座談会

「ツールありき」で始まった情報共有

―― テクノロジーはドッグイヤーと呼ばれるほどの速度で進歩しているにもかかわらず、多くの企業がいまでも「情報共有」を課題として認識しています。なぜ、満足できる情報共有を実現できていないのでしょうか。

澤氏 過去を振り返れば、情報共有は「グループウェアありき」で始まったために「ツールの中でできること=情報共有」ととらえられてきました。また、企業において「本当の意味での情報」が精査されないままであったがゆえに、情報がバラバラに蓄積され、うまく生かしきれない。グループウェアという器に、情報をずらっと並べたために「検索機能」が必要になり、情報を活用するための処方箋として「ポータル」を入れることになりました。これは、間違いではありませんでしたが、いったん「情報の精査」に立ち返る必要があると考えます。グループウェアやポータルといったツールありきではなく、情報自体の精査が大切なのではないでしょうか。


マイクロソフト株式会社 システムテクノロジー本部 インフォメーションワーカーテクノロジー部 ポータル&コラボレーショングループ ソリューションスペシャリスト 澤 円 氏


マイクロソフト株式会社 システムテクノロジー本部 インフォメーションワーカーテクノロジー部 ポータル&コラボレーショングループ ソリューションスペシャリスト 益子 滋 氏

益子氏 みんなパソコンを使うようになりましたが、10年前と比べて仕事は楽になったでしょうか。IT環境はより整備され、パソコンをはじめとするIT環境は私達のビジネス上、必要不可欠な存在になりました。しかし、必ずしも仕事自体全て楽になったわけではありません。その原因は、色々と挙げられるのでしょうが、パソコンで効率化された分だけ一人当たりの仕事量が増えたこと。さらには情報量が増大したことが挙げられます。楽に情報を処理できるようになったのですが、一方で有象無象の情報も大量生産されるようになってしまった。情報そのものに着目すると、情報の精査、分類、見極めを含めて、だれもが「もっと効率化できるのではないか」という漠然とした思いを抱いているでしょう。

岩崎氏 とくに情報システム部門では、「良いインフラがあるのだから、もっと使いこなしてほしい」「社員に楽になってほしい」「選択と集中により、本来業務に専念してもらえる環境をつくりたい」といつも考えており、これが永遠のテーマになっています。ツールの観点からも見てみましょう。ファイルサーバなどはプリミティブに操作できるため、情報を貯めるには良かったのです。ところが、情報を集める、精査するとなると2次加工が必要になります。探す手間がかかるし、やっと見つけた情報が古かったりする。そうなると、やがて情報を探すことをあきらめ、人に聞くようになり、その人の仕事を中断させてしまうといった非効率な部分が生じてしまう。そうした課題を抱えていると思います。

澤氏 情報を生産する能力が上がってきたため、情報を整理しなければならないニーズが生まれました。つまり、大量生産される情報は、すべてが有意義なものでないわけですから、それを精査したカタチでツールに上げる必要があります。そうしなければ、どんなツールを使っても情報がたまればたまるほど使われなくなるでしょう。必要な情報は何で、それをどんなタイミングで提供されれば社員は嬉しいのか、それを最初に考える必要がありますね。

ツール以前に情報の精査が必要

―― ツールありきの情報共有に欠けていた点を、もう少し掘り下げていただけますか。

昇塚氏 「自分が欲しくない情報は、結局ノイズになるだけだ」という人がいます。ただ、何がノイズでない情報なのかは、その人の立場によって異なります。逆に、自分に必要な情報が何なのかを明確にわかっている人も少ないのではありませんか。

益子氏 そうですね。お客様に「必要な情報は何ですか」と尋ねてみても、ほとんどの方が、従来のツールが扱ってきたありきたりの情報しか思いつかないものです。情報共有を考えるときの発想自体が、これまでのツールに縛られてしまっているのかもしれません。従来のツールに引きずられないようにするという意味でも、だれにとって、どんな情報が、いつ必要なのか、といった情報の精査は大切です。

澤氏 報告書や売上データなど、「社内にある情報=ドギュメントやデータ」というイメージがありますが、必要な情報の定義は業種や職種によって様々です。一例を挙げますと、「ライブカメラが情報共有ツールだ」というお客様もいます。そのお客様は、ライブカメラを工事現場に設置して、外の様子を見えるようにすることでコストダウンにつなげています。たとえば、雪が降るとトラックを使えない現場で工事をする場合、雪だと工事を休みます。それをライブカメラで即座に判断できるわけです。トラックを無駄に走らせたり作業員を手配したりするより、1万円でカメラを買うほうがはるかに安いですからね。大切なのはツールではなく、個々のエンドユーザーにとって有益な情報とは何かを精査し、それを定義すること。本来、その次のステップとしてツールの選択があるはずです。

岩崎氏 昔、メールと電話を比較した議論がありました。いま考えれば本当に不毛な議論ですが、グループウェアやポータルでも同じ議論が繰り返されました。そもそもツールの比較に意味があるかというと、必ずしもそうではない気がします。やはり、まず必要な情報をきっちりと定義しておかないと、再びツールに振り回されることになるのではないかと考えます。


マイクロソフト株式会社 IT,クライアント・サービス リージョナルIT - アジア・パシフィック&ジャパン ITアカウントマネージャー 岩崎 光洋 氏


マイクロソフト株式会社 インフォメーションワーカービジネス部 製品マーケティンググループ シニアプロダクトマネージャー 昇塚 淑子氏

益子氏 ツールの使い方に視点を移すと、業務系システムは使う人が決まっていて、使い方もフローも決まっていますが、情報系システムの場合は、さまざまな立場のエンドユーザーが使うものであり、その使い方も時と場合によって異なります。

 たとえば、ある人が前年の実績を探すときと、その実績をもとに今年のプランをつくるときでは、情報の探し方だけでなく、加工のやり方や共有のやり方についても、異なるツールを使って異なる方法で行うものです。やるのは同じ人なのですが、探すにはこれを使い、加工するならこれ、共有するならこれと、ツールの使い分けを強いられています。さまざまな「便利」が提供されているのに、仕事が楽になっていない理由のひとつがそこにあるかもしれません。個々の便利ツールは特定の用途だけにしか便利でなく、ツールの使い分けを個人のオーバーヘッドで吸収している状態になっています。

岩崎氏 業務系と情報系の差異という観点では、情報共有システムは、業務系システムとは異なり、10年先を見越して要件定義をがっちり固めてつくるべきではないでしょう。運用を視野に入れた長期的な計画性は必要ですが、生き物のような情報を扱うシステムですから、変更をかければ簡単に反映されるといった柔軟性が求められます。理想を言えば、全社レベルで情報を提供する仕組みと、個人レベルで情報を精査できる仕組みの両面を提供できれば良い状態になりますね。

昇塚氏 情報共有システムは、万人に適用できるような要件がない世界ですが、従来の情報共有システムは、業務系メインフレームのようにガチガチに構築する従来の手法を当てはめようとしたために「帯に短し、たすきに長し」のものしかできませんでした。その救世主として登場したのがグループウェアによる「エンドユーザー・コンピューティング」でした。しかし、それも結局は、いろんな場所に自分勝手に情報をただ貯めるだけで、効果的に共有できなかったという結果に終わりました。やはり、従来の情報共有システムには、全社レベルと個人レベルのバランスをうまくとることのできる仕組みがなかったことが、情報共有に満足できなかった原因といえるのかもしれません。



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提供:マイクロソフト株式会社
制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2005年11月30日

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