次世代ITオフィス環境の理想的な作り方(2/2 ページ)

» 2005年11月11日 17時00分 公開
[下村恭(ハンズシステム),ITmedia]
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 また、各拠点や各部門に設置していたサーバをすべて、データセンターに移行する計画も進めている。ダスコリ氏の考えでは、各拠点はアプリケーションサーバを含むすべてのサーバを必要としなくなるという。これを実現するため、各部門のサーバを廃止し、データセンターにポータルサイトを立ち上げた。共有文書などもこのポータルサーバ上で共有する方法にし、文書をメールで転送することをやめたため、通信量の削減にもつながったという。もちろん、サーバを統合することで、サーバの管理コストを抑えられたのは言うまでもない。

 サーバの統合に関しても、やはり現場からの抵抗もあったようだ。ただし、抵抗勢力に対しては、社長命令などのようにトップダウンで推し進めることも時には必要だとダスコリ氏は話す。また、そのためには「タイムラインが大事」と言う。いつまでに目標を達成するべきかが明確であれば、協力を得やすいということだ。

 総合的に言えることは「プロセスが重要」なのだとダスコリ氏。要件の分析に始まり、現場ユーザーの要求を聞く。このプロセスでコミュニケーションを密に行い、バランスをとって実行していく。最終的な目標がきっちりしていれば、現場とのコミュニケーションにおいてたとえトラブルが持ち上がっても、「本当にやりたいことは何か」という部分で合意が取りやすいため、「とりあえずやってみましょう」という形でまとめることも可能だったという。

新しいテクノロジー導入のコツ

 一般に、何らかの新たなテクノロジーを導入しようとしているからには、ある課題があり、それを解決しようとする動きがあるはずだ。新たなテクノロジーの導入プロジェクトはこのようにして始まることが多い。では、このプロジェクトが理想の結果を得るにはどうするべきか。

 最も重要なポイントは、コミュニケーションだ。これは、ベンダーとのコミュニケーションだけを指しているわけではない。どちらかというと、社内でのコミュニケーションの方が重要だ。意思決定を担う取締役だけでなく、現場のユーザーとの意思疎通も密にしておかなければならない。

 そしてさらに重要となるポイントは、バランスという点だ。何事にも「あちらが立てば、こちらが立たず」ということはよくある。このとき、設定した目標と関連する問題を検討した上で、全体として一番良い方法を探すことが重要だ。先の事例にあったように、明確なプロセスに基づいてプロジェクトを進めるのがまず重要だろう。ロードマップを示せるのが理想だ。

 まず最初にやらなければならないのは問題点の整理だ。最終目標の設定と言い換えてもよい。例えば通信コストが問題となっているのであれば、最終目標は通信コストの削減ということになる。この段階では、決定権を持つ取締役などとのコミュニケーションを密にし、理解を得ることが重要となる。

 最終目標が決まればそれでよいというわけにはいかないのは周知のとおり。次の段階として、付随する問題点を洗い出す必要がある。通信コストの削減が目標だとすると、通信スピードはどれくらい犠牲にできるのか、ボトルネックとなっているのはどこかなどというものだ。この段階では、現場のユーザーとのコミュニケーションが重要となる。また、この段階で、どういうやり方でバランスをとることができるのかを明確にする必要もある。

 次の段階として、問題解決のための製品やテクノロジー、サービスを探し、評価し、比較検討する必要がある。導入コストや維持コスト、導入期間、互換性など、考慮しなければならない点は多い。

 ここまでの手順を踏むと、あとは実行していく段階となる。この段階で現場からの抵抗があるようでは話にならないが、なかなか納得しない相手に対しては、毅然と推し進めなければならない場面もあるだろう。その際に最も効いてくるのが、コミュニケーションとバランスだ。普段からコミュニケーションが密であれば、深刻な衝突となる前に解決策を話し合えるはずだし、バランスを考えた上で解決策を示せば、仕方がない部分として納得してもらえるはずだ。

 プロジェクトを進めていくにあたっては、目標を設定しロードマップを示す部分が最も難しい場面となるが、明確な目標を定めることができれば、コミュニケーションを十分にとって、全社一丸となってプロジェクトを推し進めていくことが可能となる。

 テクノロジーの利用で次世代のITオフィス構築が可能になってきたが、導入でつまずいたのでは意味がない。導入においても理想的に進められるよう、最善を尽くしたい。

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