“心”から人間を支えるロボットとなれるか?――アザラシ型ロボット「パロ」の秘密(3/5 ページ)

» 2005年11月18日 21時47分 公開
[中村文雄,ITmedia]

パロほど触感に重点を置いたロボットはない

 触感は、パロを象徴する感覚である。触感は原初的な感覚であるため、人間の本能に訴える力が強い。また、触感の情報には「やわらかい」「温かい」「ふかふか」など多様な感覚が混ざっており、その情報量が多いことも注目すべきだ。そのため、人間がパロを抱いて触れば、視覚や聴覚では得られない種類の安らぎを感じる。

 パロにとって「触り心地」と「愛らしさ」は非常に重要な要素であるため、外形はほとんど手作りである。まつ毛は手縫いであり、顔周りは専門家がトリミングしているため、その製作には数万円のコストがかかっている。ぬいぐるみ業者がパロの製作方法を聞きに来たとき、そのハンドメイドの丁寧さに驚きの声を上げた。また、普通のペットと同じように動物のぬくもりを感じられるよう、パロは抱いていると暖かくなり、30度程度の体温が保持されるように制御されている。動物として当たり前の機能が搭載されているというわけだ。

 パロのセンサーで特筆すべきはユビキタス面触覚センサー。セラピーのためには触り心地が良く、どこにも装着できて、性能の良い感触センサーが必要である。そのため、フィルム状の電極の間にスポンジを入れ、電位差によって触感の強弱を測定できるセンサーを開発した。パロの全身に12枚のユビキタス面触覚センサーが装着されており、どこをどのくらい強く触られているのか、また、なでられた方向などを認識する。ひげにも触覚センターが装備されており、触られると場合によっては不快な様子を示すこともある。

パロのために開発されたユビキタス面触覚センサー。IEEE TExCRA 2004国際会議(米国電子電気技術者協会主催)で最優秀賞を受賞
フィルム状の電極の間にスポンジが入っているシンプルな構造

 パロには音声認識機能があり、人間がペットに呼びかけるときに使用する約50語の語彙を理解する。また、音が聞こえる方向を知るために3D音源方位同定センサーが搭載されている。胴体内には姿勢感知用の3軸加速度センサー、鼻には明暗を測定する光センサーがある。

 パロの反応は手足とまぶたの動き、鳴き声、体温の3種類。手足とまぶたは7個のサーボモーターによって動作する。鳴き声は本物のタテゴトアザラシのサンプリング音である。音声認識用にルネサステクノロジの32ビットマイコン「SH3」が搭載されており、そのほかのセンサーからの情報処理、サーボモーター制御、行動生成の処理などは同社の「SH2」が使用されている。

関連キーワード

ロボット | ペット | アザラシ | 癒し


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ