ERPはコストが高くて大企業向けといったイメージが強いが、最近はベンダーの視点が中堅企業の市場に移っている。実際のERPを導入した中堅企業はどんな意見を持っているのか。885件の有効回答を得た調査結果を踏まえて探る。
伊嶋 謙二(ノークリサーチ代表)
今回は、ベンダーサイドも注力しているERP(Enterprise Resource Planning)の導入について、掘り下げて考えてみよう。第1回で紹介したように、ERPは中堅企業に向けたIT製品の中では、ユーザーの関心が比較的高い。ここでは、実際の導入に踏み切るための手段を明らかにしたい。
前回紹介したとおり、ERPとは同一のデータベース上でバックオフィス系の財務、人事、販売、生産をリアルタイムに一元的に管理するものである。基幹系業務システムのオフコンからオープン化へのシフトの中で、急速に普及してきたというのが大企業における流れである。
しかし、中堅企業ではどうかというと、ノークリサーチが行った『ERPの利用実態調査』によると回答企業の34.1%が、「オフコンを使ったシステム」を依然として継続利用しているのだ。第3回で問題視したように、中堅企業ではサポート切れしたWindows NTを継続利用していた。つまり、古かろうと、サポートがなかろうと、使い慣れたシステムをわざわざ入れ替えようとしないのだ。(図1)
とはいっても、もちろんERPを導入している中堅企業も多い。調査結果を基に、ERP導入劇のあらましを再現してみよう。
序章:低価格化が進むERP、ベンダーから注目度が高い中堅企業
ERPと言えば、「大企業が使うもの」というイメージが強いのではないだろうか。そのような考え方が頭の中にあるならば捨てた方がいい。というのも、ここへきて大企業へのERP導入は一巡し、国内外を問わず多くのERPベンダーが中堅企業への拡販を意識してきた。実際、導入費用として億単位の資金が必要であったERPも、現在の中堅企業向けERPパッケージは、カスタマイズや保守サービスの費用込みでも、1000万円程度から導入できるようになっているからである。
さて、ERPを実際に導入している中堅企業は、何がメリットで、いかなる方法で情報を収集し、何を基準にERPベンダーの選定を行ったのか。
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