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» 2006年05月12日 08時00分 公開

ジレンマが先行 モバイル版ネットテレビ[シリーズ特集]ネットテレビは儲かるか 第3回

 〔ネット‐ネット型〕が勢いづく中で、ネットテレビ(※1)には、端末にモバイルを使う動きも出始めてきた。USENが4月25日、「モバイルGyaO」のサービスを始めたのである(※2)。モバイルではすでに、地上デジタル放送の「ワンセグ」が始まっている。果たして、モバイルでも〔ネット−ネット型〕は成功するのだろうか。

[アイティセレクト編集部,アイティセレクト]

 USENが始めた「モバイルGyaO」。ただ、その実態は「GyaO」が完全にモバイル版になったものではない。従来の携帯電話向けコンテンツに加える形でGyaOブランドのサイトを立ち上げ、動画コンテンツを加えたものになっている。

 「『モバイルGyaO』には二つある。一つは『GyaO』をより使いやすくするためのポータルとして機能させるもの。コンテンツの一部は『GyaO』から持ってくる。もう一つは、その下にぶら下げた『ガールズGyaO』。いわゆるF0、F1層に対象を絞ったものになる。コンテンツはオリジナルを中心にそろえている。どちらも、天気予報や占いなど通常の携帯電話向けコンテンツをそろえていて、そのほかに、当初は2サイト合わせて20本ほどの動画コンテンツを用意する」(コンテンツプラットフォーム事業部ゼネラルマネジャーの松本武史氏)

 広報室の岡根麻実氏によると、「GyaO」の視聴者はM1、M2がメインで全体の7割を占めるという。つまり、「モバイルGyaO」には、「GyaO」で集客力が劣るF0、F1層の若い女性を獲得するための役割も与えられている。

ブルドーザーになり、市場を切り開く

 「サービスというのは、提供する側が勝手に出してもユーザーに受け入れられるとは限らない。携帯電話に動画コンテンツを流す場合、ユーザーに視聴習慣があるかどうかが一番のボトルネックで、突破しなければならない部分になる。5年前に『BROAD-GATE 01』(現『GyaO 光』※3)で動画配信をやったころ、PCで動画を見るという習慣自体がなかった。だから、タイミングもある。『GyaO』は、2005年に始めたから良かった。かつ、その5年前やったことが生かされているから成功したのだと思う。今の携帯電話も同じような状況だろう。何もないところから始めるので、これまでのモバイルサービスに慣れた人にどうやってシームレスに動画の視聴習慣をつけていくかということを考えなければならない」と、松本氏は語る。また、こうも説明した。

 「ナンバーポータビリティが解禁されるときに、どうサービスを拡充して顧客を逃さないようにするか。あるいは3.5GやWiMAXの時代に入って帯域が広がるとき、どうやってサービスを進化させるか。それを考えると、そのとき始めるのでは遅い。今からやっておかなければならない。今、一から『GyaO』をやろうとしても無理だ。5年間培った、見えないノウハウがいろいろある。『GyaO』の競合他社があまり出てきていないところを見ると、そうしたことが要因になっているのではないか」

 つまり、「先手必勝」というわけである。

 「『モバイルGyaO』では、早急に300万人くらいの利用者を獲得するのが必達の数字」という松本氏。F0、F1を対象にした勝手サイトなどでは、利用者数が500万を超えているところもあるとのことで、それくらいの市場は充分存在していると見ている。「だが、そうしたサイトには動画コンテンツはまだ用意されていない。ブルドーザー的な役割を担い、それを開拓していく」(松本氏)

 モバイル市場を狙っているのは、ヤフーも同じだ。「PCだろうが携帯電話だろうが、すべてのポータルになるというのが、われわれの考え。PCでできることは携帯電話でもやりたい」とヤフーのマーケティング部広報の羽入正樹氏がいうように、いずれはヤフーもモバイルで動画サービスを展開することは大いに予想される。

 そのヤフーが動き出す前に、と、「ブルドーザー的な役割」を買って出た「モバイルGyaO」。モバイルの世界でもネットテレビの象徴になり得るだろうか。

 ただ、モバイルでは4月から、デジタル放送サービスの「ワンセグ」が始まった。放送コンテンツを通信端末の携帯電話で見るため、ネットテレビではないが、携帯電話に対する個人の可処分時間は「ワンセグ」に大きく取られる可能性もある。対応している端末がまだ3機種しかないものの、サービス開始時点ですでに計50万台が売れたといわれている。今後その数が増えることは間違いない。

“地上デジタル推進大使”は、実は1年くらい前からさまざまな活動をしている。浴衣を着て会見に登場したり、サービス開始初日に街頭に出たり……。その甲斐あってか、「ワンセグ」人気はなかなかのもの。
「ワンセグ」は当初、地上デジタル放送がすでに開局されている24都府県を中心とした28都府県の主要放送局で始められた。一部を除き、年内にほぼ全国区に広がる予定。

 「テレビのコンテンツは強い」と、ヤフーのメディア事業部ディレクション室でチームリーダーを務める山根陽一氏はいう。もちろん、テレビがすべてではないだろうが、集客力があるのは否定できない。そのため、「ワンセグ」が幅を利かせるようになると、携帯電話におけるネットテレビはかなりニッチな存在になることも考えられる。とはいえ、パソコンほどインフラの整備が追いついていない現状では、どうにもならないだろう。「ワンセグ」の成り行きを、「指をくわえて見ている」というのが、モバイルにおけるネットテレビの実態といえるのかもしれない……(全文は「月刊アイティセレクト」6月号に掲載)。

(※1)インターネット放送、動画配信などさまざま呼び方があるが、通信網を使った動画サービスで、基本的に無料のものを、「ネットテレビ」と称した。ただし、統一はしていない。

(※2)3月27日よりすでに試験放送を開始している。記事内における「モバイルGyaO」に関する情報は、試験放送開始時点のもの。

(※3)USENが提供する、個人向け光ファイバーインターネット接続サービスの名称。プロバイダーとして、ユーザー会員向けに有料・無料の動画コンテンツをそろえる。

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