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» 2006年05月15日 08時00分 公開

CM出稿依頼は急増中[シリーズ特集]ネットテレビは儲かるか 第4回

 一番の成長株である〔ネット‐ネット型〕のネットテレビ(※1)の世界では、「GyaO」と「Yahoo!動画」が注目を浴びている。今は先行投資の時期と位置付け、相当な資金を注ぎ込んでコンテンツをそろえることにより、視聴者獲得を急速に進める「GyaO」。一方、1カ月あたりの利用者がすでに4000万人を超すポータルサイトの存在を武器に、徐々に動画サービスの浸透を図る「Yahoo!動画」。その動きは対照的にも映るが、どちらのビジネスモデルも、狙うは広告収益である。その広告市場が今、急激に変化している。

[アイティセレクト編集部,アイティセレクト]

 「GyaO」では基本的に、見たい動画コンテンツをクリックするとまずインターネットCM(※2)が流れる。テレビ番組のように、コンテンツ内にもインターネットCMが挿入されている。このインターネットCMは早送りしたりスキップすることができない。コンテンツを見るためには必ず再生しなければならないようになっている。このように視聴者に必ずCMを見てもらえるような仕組みを築き、広告主にとってCMの有効性を訴えた。

 こうして新しい広告収益モデルを切り開いたUSENだが、2005年4月にサービス開始となった「GyaO」事業は当初、初期投資やコンテンツの調達コストがかさんだ割には広告収入が伸びず、赤字となった(同年8月期で約40億円)。「Yahoo!動画」も、「GyaO」と同様にインターネットCMを集稿していくという。果たして、ネットテレビで広告収益モデルは成り立つのだろうか。

CM人気は業界の対応も変えた

 ネット広告専門のメディアレップである、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)のメディア本部第二メディア部長兼メディア開発部長、田中雄三氏によると、インターネットCM(当時は「動画広告」などと呼んでいた)は5年ほど前からあった。ただ、ブロードバンドの普及率が高くなかったこともあり、あまり活発に利用されてはいなかった。それが、インフラ環境が整った1〜2年前から増えてきたという。

 そこに「GyaO」が登場。マス4媒体(※3)で展開していた広告主が、ネットに着目し始めた。その後、「第2日本テレビ」「TVバンク」が立て続けに発表され、「インターネットCMがどんどん入ってくるようになった。それも、それまでネット広告を出稿していなかったクライアントから」(田中氏)。

 そうした環境の変化にDACは素早く反応し、05年8〜11月に、「GyaO」のほか「MSNビデオ」「BIGLOBEストリーム」を加えた、当時の三大動画配信サイトを対象として、インターネットCMの効果検証を実施。インターネットCMの訴求効果が高いことを確認した。

 そして1月。メディア本部を横ぐしにし、インターネットCMだけを手掛ける精鋭らを集めた組織「i-TV室」を新設した。室長は、「i-TV室設立のきっかけは『GyaO』の登場であることは間違いない」と語る田中氏が兼任することになった。

 インターネットCMの効果検証の調査結果は、i-TV室の立ち上げと同時に公開。反響は大きかった。2月に開いた、媒体社と代理店向けのセミナーには、2日間で計300名が集まる盛況ぶりだったという。

新規参入の広告主も

 田中氏と、i-TV室でプロデューサーを務める、e-ビジネス本部プロデュース部の永松範之氏によると、インターネットCMには、番組に差し込む「挿入型」と既存広告枠(レクタングル)に流す「既存枠型」の2種類がある。そのうち「挿入型」は、コンテンツを集める必要があり、お金もかかるため、現状ではテレビCMと同じものを流用していることが多く、オリジナルのインターネットCMをつくっているところはほとんどないという。

 では、なぜインターネットCMがそれほど注目されるようになったのだろうか。

 田中氏らは「以前は、パソコンで動画を見る時間は平均約10分だった。『GyaO』ができてから、それが30分くらいになった。コンテンツが良くなり、平均視聴時間が伸びた。そこで、動画にCMをはさむモデルが確立した」と説明する。かつてのコンテンツは長く見るほど面白くもなく、またそもそも短いものが多かった。それでは、CMを挿入するモデルにはならなかったということのようだ。

 「ネット広告には、費用対効果を目指すものとブランディング効果を狙うものの二つがある。今後、ブランディングでインターネットCMが拡大するだろう」(田中氏)

 企業は今まで、ネット広告の予算など組んでいなかったという。だが、インターネットCMを活用するにあたって、その姿勢を変えつつある。実際、自動車メーカーや食品会社、日用品メーカーなどですでにインターネットCMを展開し始めている。とりわけ、以前はネット広告で見ることのなかった食品や化粧品、白物家電といった新しい業種からネット広告を出す企業が出るようになったと、田中氏は指摘する。

 現状から見ると、ネットテレビのビジネスモデルは、既存のテレビと同じく広告収益依存型になることはほぼ間違いない。その成否のカギを握る出稿の状況は実際、順調に伸びているようだ(全文は「月刊アイティセレクト」6月号に掲載)。

ソフトウェアの巨人、マイクロソフトは、「Windows Media Center」を武器にデジタルエンターテイメント戦略を推進する。「メディアオンライン」のサービスでは、「Yahoo! 動画」「インプレスTV」といったネットテレビも見れる。提供を受けるコンテンツの広告枠を売っていくことだって…考えられなくもない。
デジタルコンテンツの普及拡大を目指し、インテルは吉本興業と提携してコラボサイト(http://www.digitalhome-yoshimoto.com/)で吉本所属のタレントによるコメディを動画で配信している。第一弾(CH1)はインパルスが出演するショート・ムービー。これをネットテレビというのは無理があるかもしれないが、その最新作(CH5)は明らかにあるパソコンメーカーの広告を兼ねたものになっていて、インターネットCMの一つの形を提示しているようにも思える。

(※1)インターネット放送、動画配信などさまざま呼び方があるが、通信網を使った動画サービスで、基本的に無料のものを、「ネットテレビ」と称した。ただし、統一はしていない。

(※2)いわゆる動画広告のこと。インターネット広告推進協議会(JIAA)が「インターネットCM」と定義し、3月に発表した。その内容を要約すると、インターネット(通信回線)上で映像と音声を使ってテレビCMのように時間軸で展開する広告となる。

(※3)テレビ、新聞、雑誌、ラジオの4大マスメディアのこと。

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