特集
» 2006年07月31日 10時00分 公開

Ottawa Linux Symposium4日目:クローハートマン氏による基調講演Linuxの最新動向が一目で分かる(2/6 ページ)

[David-'cdlu'-Graham,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 次に同氏が紹介した神話は、「カーネルの設計に一貫性がない」、つまりはロードマップが確立していないという、Linux攻撃の常套句として使われている誤解であった。ロードマップやデザインパスというのは、マーケティング部門の人間にとってお気に入りの言葉だが、Linuxはそうしたものを提供していないと同氏は語る。つまりLinuxは、以前に誰もが手掛けなかったものを生み出し続けているのだと。

 同氏はまた、「オープンソースの開発過程は、その大部分において、既存の経営管理理論の枠組みに収まっていない」という、ミシガン州立大学で社会科学部の学部長を務めるMarietta Baba博士の発言を引用した。

 次に同氏は、宗教画風的な男の裸体の絵画と、奇妙な姿をしたイカもどきの動物とが収まったスライドを映し、「Linuxとは進化のことであり、インテリジェントデザインではない」というリーナス・トーバルズ氏の発言を引用した。

 Linuxが当初(基本的に)サポートしているのは単一のプロセッサだけであったと、クローハートマン氏は説明する。その後、ある者の手によりほかのプロセッサ上でも動作するように改修が施されたのであるが、このような進化は現在も進行中なのである。つまり、Linuxを進化させている原動力は、マーケティング上の都合なのではなく、現実的な要求なのだと。

 同氏は続けて、進化を促進する唯一の方法は、カーネルへのコードを追加することであると語った。つまり、コードによる裏付けのないアイデアだけでは、ここまで到達することはできないのだと。

 次に同氏が言及したのは、LinuxがPOSIX標準に準拠したのは、6ないし8年前のことになる点であった。そしてカーネルの進化速度は、いまやメジャーリリースごとに6000ものパッチが提供されるほどに高速化している。つまりこうした現状は単に変化の速さだけでなく、安定性の面でもかつてないレベルに到達していることを示しているのだと。

 そして同氏は、Linuxをめぐる次の神話に話を移し、「安定したAPIがカーネルに装備されない限り、どのベンダーもLinux用のドライバを作ろうとはしない」という、よく知られた誤解の1つを紹介した。この種の話題に疎い聴衆に対する補足として同氏は、APIとはカーネル内部で使われている情報交換手段の1つだと解説している。そしてこうした問題については、カーネルのソースディレクトリにある Documentation/stable_api_nonsense.txtに詳しく解説がされていると説明がされた。

 また同氏は、リーナス氏は安定したAPIを必要としていないと説明している。例えばUSBスタックなどは、すでに3回も再実装が行われている。それどころか現状でLinuxは最高速のUSBスタックが利用可能であり、むしろハードウェア的な制限がネックになっているとのことだ。つまりLinuxはスリムであると同時に複合化した存在なのであると。

 なおUSBスタックについてはWindowsもこれまでに3回の書き換えを行っているが、この点について同氏は、無統制に存在する雑多な旧式化した独立系ドライバを生かし続ける必要上、いずれも既存システムの範ちゅうでの改訂に過ぎなかったとしている。その点Linuxはドライバ群をネイティブにサポートしているため、独立系ドライバの存在が問題となることはなく、必要に応じてAPIを書き換えることが可能で、その際にカーネル中の旧バージョンドライバの延命を気にかける必要もない。つまりWindowsはドライバ群を統制下に置いていないため、結果として任意にAPIを変更することができないのであると。

 次に同氏が反駁した神話は、「わたしの使っているドライバは、マイナーなハードウェアの付属品に過ぎない。そんなものが、メインラインのカーネルに採用されることはない」という誤解であった。これに対してクローハートマン氏は、わずか2人のユーザーに使われているだけのアーキテクチャも存在しているという反例を挙げている。そのほかにも使用ユーザーが1人しかいないというドライバも多数存在していると。

 またクローハートマン氏は、ある企業が必要とするマイナーなタスク用のドライバをカーネル中に取り入れることが可能であるかを、同氏に問い合わせてきたケースを紹介した。最終的にこのドライバが組み込まれた結果、同様のタスクを必要としていたほかの複数の企業が、独自バージョンのドライバを維持する必要性から解放されたということだ。結局このドライバの使用範囲は、当初は誰もが想像しなかった規模にまで広まり、現在では数千単位のデバイスでサポートされているという。つまり、誰かが独自のコードを公開すれば、多くの人々がその恩恵を受けられる可能性があるのだと。

Copyright © 2010 OSDN Corporation, All Rights Reserved.

注目のテーマ