敵は「隣」にあり! 電波の陣取り合戦無線LAN“再構築”プラン(3/3 ページ)

» 2006年11月22日 08時00分 公開
[寺下義文,ITmedia]
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APの最終調整

 ここまでの工程によって、APの設定および設置場所がおおむね決まる(つまり仮設が終わる)わけだが、この段階ではまだ、実際に端末を使ってまったく問題なく通話できるとは限らない。わずか20〜30センチ端末を動かすだけで、受信感度が20〜30dBm程度は簡単に変化してしまうためだ。それほどまでに802.11という通信はナイーブなのだ。

 したがって、まずは採用しようとしている端末の1台のみをセットアップしてWLAN接続し、端末自身が持つモニタ機能を活用してAPの最終的な調整を行う。この機能は、代表的な無線IP電話端末である「WIP-5000」「N900iL」のいずれも備えている(図2)。

図2 図2●N900iLの接続ステータス画面

 この画面では、先ほど説明したSNRまでは分からない。しかし、先の調整の中で知り得たノイズの受信感度から逆算して、おおむね必要となる正規信号の受信感度も分かっているはずだ。また、そもそも活用すると決めた転送レート以下を無効化してあれば、接続に足る受信感度、SNRに達していないと「圏外」と表示されるわけなので、そうした観点でモニタ機能を使わずに調整を進めるという方法もアリだろう(表3)。

表3●WIP-5000のアンテナ表示
アンテナ表示 受信感度
マークのみ -89dBm以下
マーク+1本 -89〜-81dBm
マーク+2本 -81〜-74dBm
マーク+3本 -74〜-66dBm
マーク+4本 -66〜-58dBm
マーク+5本 -58dbm以上

 要は、この1台の端末(本番で利用する実機)を片手に、カバーしたいと考えるエリア内を持ち回り、さらにAP側の送出レベルを徐々に引き上げていくという方法でインフラの最終調整を行うのである。ここでなぜ、サイトサーベイツールなどを使わないのかと思った人も多いだろう。そのソフトを扱うには専門的な知識も必要であることはもちろんだが、正確な図面がなければ正確な値は出せないのだ。

 今、自分が席を置いているオフィス内を見渡してみてほしい。図面にはない、天井に届きそうなスチール製の棚や間仕切りがあったりはしないだろうか。また、天井には大きなはりが突出しているが、それが図面にまったく反映されていないということはないだろうか。そうした正確な情報をツールに入力してやれば、恐らくより正確なシミュレーション結果を出してくれるのだろうが、情報を調べて入力する作業の方がはるかに手間が掛かってしまう。

 したがって、いささか原始的な方法ではあるが、実機を用いて調べる方が、限られた時間の中ではより現実的なやり方だと筆者は考える。

寺下義文

日立コミュニケーションテクノロジー IPネットワークセンタ 開発部 SIP:OFFICEグループ技師。1986年、日立インフォメーションテクノロジーに入社。以来9年間データベース関連製品のプログラマーを経験し、1995年からネットワークSEとして多数の大規模ネットワークの構築も経験。さらに2003年から自社VoIP製品である「SIP:OFFICE」の開発に従事。2006年10月より事業統合により同社に転属。難解な技術を平易な言葉で表現することには定評がある。燃料は酒。これがないと走らない。


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