走ってはビルドの繰り返し――猛ダッシュで駆け抜けたケンウッドのカーナビ開発夢工房を追う 第3回(1/3 ページ)

バグは実際に走ってみないと見つからない。一日で1100キロを走破、バグを見つけては車を停められるところに移動してデバッグ作業を行う。ケンウッドのオリジナルカーナビは、いかにして自社開発の道を切り拓いたのか?

» 2006年11月30日 07時00分 公開
[三浦優子,ITmedia]

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 「それまで他社と共同開発していたカーナビゲーションシステム(カーナビ)を、完全な自社開発に切り替える」――ケンウッドがそう決定したのは2003年のことだった。

 当時のケンウッドの開発陣営の状況を、実際の製品のデバイスドライバ開発を担当したカーマルチメディア事業部CMS企画技術部 エンジニアリングリーダーの浜中昌彦氏は次のように振り返る。

 「共同開発をしていた時には、我々が手がけていたのはオーディオのコア部分のみ。カーナビのGUI、ナビゲーション部分の開発は開発パートナーに任せていました。共同開発を実施する以前は、独自のカーナビを作っていたので、カーナビ開発に関わったスタッフは残っていたのですが・・・」

浜中昌彦氏 ケンウッド カーマルチメディア事業部CMS企画技術部エンジニアリングリーダーの浜中昌彦氏

 かつて開発に関わっていたスタッフが集められたが、残っていたスタッフはごく少数。彼らだけで独自ブランド製品の開発を進めるのが難しいことは明らかだった。

 「そこで他の部署からスタッフを募りました。ご存知の通り、現在のカーナビには、ケンウッドの得意なカーオーディオ技術をはじめ、通信、ナビゲーションなどさまざまな技術が詰め込まれています。集まったスタッフも、カーエレクトロニクス分野に携わっていた人間ばかりでなく、社内のさまざまな部署から集まってきました」と話すのはアプリケーション開発を担当した同部主査の馬場鉄弥氏。

 ケンウッドの独自ブランドによるカーナビ開発がスタートしたわけだが、その時点で、既に複数の競合企業から多機能のカーナビを提供されていた。ケンウッドとしても、できるだけ早く、高品質のカーナビを開発しなければ、独自ブランドで製品を作る意味がなかった。

 こうして2003年8月にスタートしたケンウッドのオリジナルカーナビ開発は、2005年1月に最初の製品を出荷することに成功した。ノウハウがほとんどない中で、ケンウッドの開発陣はどのようにカーナビ開発を進めていったのであろうか。

差別化としてのWindows Automotive

 現在のカーナビは、単に道を案内するだけにとどまらないさまざまな機能を搭載している。ケンウッドの得意分野であるカーオーディオとしての機能、DVDやテレビを視聴する機能、ナビゲーション機能も道を案内するだけでなく近くにあるトイレを地図上で表示するといった機能を搭載したものもある。つまり、多彩なナビゲーション機能とAV機能を搭載したマルチメディアシステムとなっている。

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