走ってはビルドの繰り返し――猛ダッシュで駆け抜けたケンウッドのカーナビ開発夢工房を追う 第3回(3/3 ページ)

» 2006年11月30日 07時00分 公開
[三浦優子,ITmedia]
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 高速道路に入ったものの、バグを見つけてすぐに次の出口で降り、車を停められるところに移動してデバッグ作業を行う。作業が完了した後で、再び高速道路に入ったが、また新たなバグを発見して高速を降りる・・・こんな作業を何度も繰り返したことがあるという。

 また、テスト走行を長時間続ける必要にかられて、一日で1100キロ走った日もあったそうだ。

 テスト車を走らせる様子は、マイクロソフトのウェブサイト「夢工房」の中でビデオ映像として紹介されている。実走テストが必要なカーナビならではの開発の苦労が忍ばれる。

GUIを作成するAutomotive User Interface Tool Kit(AUITK)の画面

理想のナビゲーションシステムを目指して

 現在販売されているケンウッドのカーナビゲーションシステム「HDM-555EXB」、「HDV-770」の二製品は、浜中氏、馬場氏をはじめとしたケンウッドの開発陣の努力が実って完成した製品だ。

 実際の製品は、ケンウッドのカーオーディオメーカーとして培ってきたオーディオ機能をはじめ、操作しやすい大きなアイコンのカーナビゲーションシステム、女性や高齢者でもマニュアルを見ないで操作できるようにした検索機能など、いずれも独自性があるものに仕上がった。

 だが、浜中氏、馬場氏ともに、「これで満足だとは思えないです」と口を揃える。

 馬場氏は、「究極のカーナビはどんなものか、理想でいえばテレビドラマの『ナイトライダー』のように会話して動いてくれるものだと思うんです」と話す。

 「ナイトライダー」とは米国で製作されたテレビドラマ。人工知能を搭載した車が主人公と会話しながら動き、時には人間が一切運転しなくとも目的地まで連れて行ってくれたり、危険を回避してくれる。まさに、「理想のナビゲーションシステム」だ。この「理想のカーナビゲーションシステム」に対して、馬場氏は熱く説明してくれた。

 「もちろん、すぐに実現できるわけではないことは分かっています。現在のナビゲーション機能や検索機能は、分かりやすいGUIを目指して開発したもので、他社の製品にはない特色を作ることができたとは思っています。ただ、開発に携わる者としてはそれに満足していては駄目なんです。現在は実現が不可能でも、理想のナビゲーションシステムを念頭に置きながら、開発を進めていかなければ可能性が広がっていかないんです」

 それを横で聞いていた浜中氏も、「ユーザーインタフェースをもっと使いやすいものにしていく努力は、まだまだ必要だと思います。我々の親の世代のユーザーさんからは、『カーナビを購入したものの、うまく使いこなせない』という声もいまだにあがってくるからです。カーナビは使うシチュエーションが決まっているだけに、ある部分に特化させて使いやすさを実現することも可能かもしれません」という。

 理想を追い続け、新しい製品を開発していかなければならないケンウッドの開発陣にとって、製品の完成は終わりではなく、新しいものを作り続けていくための第一歩といった方が正解のようだ。

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