一方、検索とは無関係のように思えるが、コンテンツの分類も重要となる。Ultraseekでは、あらかじめ問い合わせの予測や過去のアクセスログから、管理者側でカテゴリを準備して公開していったが、IDOLではカテゴリを作る手作業は不要だ。集めたコンテンツから、どのような情報に関して記事が書かれているのかを推測し、そこからカテゴリを自動生成して分類する機能を備える。それにより、各種ナレッジシステムのクラスタリングが実現し、分類・体系化が可能になる。
また、ユーザーが普段どのような記事を閲覧し、どんなキーワードで検索しているのかをプロファイル情報として蓄積し、同様なテーマについて人々の間のコミュニティーを形成する。それによって、検索時にプロファイル情報を裏側で照らし合わせ、ユーザー個人によりマッチした情報を検索結果として提示するという。
江川氏は、「ナレッジ活用を推進する上で、社内に蓄積する膨大なコンテンツの中からより有効な情報を見つけ出すためには、パーソナライズされた情報を加味することも重要となる」と説明する。
さらに、推奨コンテンツの自動配信にも注目した。従来型の検索は、情報を欲しいと思ったときに探しにいくというプル型がベースにあった。しかし、例えばある情報が派生した際にアラーム的に知らせてほしいとき、継続的に情報が生まれるコンテンツなどに新着情報を配信してもらうような仕組みがあれば非常に便利だ。IDOLでは、システムとしてそのようなプッシュ型の機能も担わせることができる。
情報を有効に利用するため、作った資料は共有サーバに置く、メールで配信するなど試行錯誤しているが、せっかくの情報が社内で活用されていないケースは多い。江川氏は、「欲しがっているユーザーにその情報を提供することで、システムとしての信頼性も向上し、システムに対する期待感も高まるので、より活性化した情報インフラを提供できるだろう」と話す。
従来、手作業でコンテンツを集め、タグを入れ、カテゴリ分けをしたり、類似するコンテンツ同士でリレーションをつくれるように登録したりと、さまざまに人の手を介して苦労してきたことを、オートノミーはその「自律」という名の通り、すべて自動化することを目指している。
そのために、シャノン(Claude Shannon)の情報理論(*2)とベイズ(Bayesian)推論(*3)を応用したパターン照合技術を用いて、独自に組み合わせたテクノロジー(オートノミー・ベイズ)を開発。限られた情報からの推測や、関連性のない情報同士の関連性を見いだし、類似文書を推奨するなどを可能にしている。同社はこれで100以上の特許を持つという。
「日本企業の情報活用能力はまだまだ乏しい。自分の知っている情報はごく一部と認識し、広くキャッチアップする能力が求められている」と江川氏は指摘する。情報活用はBI(Business Intelligence)のみならず、ビジネスの背景や経緯まで押さえることが重要となってくるというわけだ。あらゆる情報の中から次の一手につながる価値を見いだすことがエンタープライズサーチの本質であるのなら、今後の重要なIT投資の中で、情報の整理というポイントの比率も高まってくるのだろう。
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