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» 2007年04月16日 08時00分 公開

WiMAXと見える化――富士通が提示する2つの研究戦略

富士通研究所は2回目となる研究戦略説明会を開催。研究開発がグローバル化し、オープン化や国際標準でさまざまな国の企業で競争が拡大する今、同社はイノベーションそのものが国家戦略となっていると説明する。

[富永康信(ロビンソン),ITmedia]

 富士通研究所は4月13日、2006年に続き2回目となる研究戦略説明会を開催した。同社が具体的な研究成果として披露したのは、モバイルWiMAXの電力効率を向上させる技術と、データベースからの業務プロセスを可視化する技術だった。

画像 富士通研究所の村野社長

 冒頭、説明会に臨んだ代表取締役社長の村野和雄氏は、「技術開発戦略と知財戦略とを一体としてとらえることが重要だ」と述べ、同社が21世紀型の研究所を目指す中で「デマンドプル型イノベーションを意識したビジネス」「海外研究所の活動強化」「パートナーとの開発分担による連携強化」「知財・標準化との連携」の4つのフェーズに注力していく考えを示した。

 また、公開した研究開発ロードマップによると、ITシステム/サービスに最も重点を置く一方、NGN(次世代ネットワーク)のインフラやサービスに向けたネットワーク技術、半導体やナノテクなどの基盤技術にも人とカネを投入していく計画である。当面の2007年度は、Webサービス、ブレードサーバ、光/ワイヤレス、システムデバイス、ナノテクノロジーの5つの技術を重点テーマに開発を進めるという。

画像 富士通研の研究開発ロードマップ

 また、富士通の法務・知的財産権本部の亀井正博 知的財産戦略室長は「事業戦略、研究開発戦略、知的財産戦略の三位一体に加え、最近はスタンダード戦略との連携も重要になった」と話す。特に、特許の側面からのフィジビリティースタディによる知財戦略を織り込み、自社の特許ポジション(優位性と弱点)の確認と、特許取得計画などの“攻め”、他社特許侵害回避などの“守り”両面での技術動向調査が大切になるという。

 さらに、国際的なスタンダードの領域拡大に対応するため、富士通ではスタンダード戦略室を設けた。ITU-TやISO/IECにおける主要メンバーとしての活動と、ライセンス管理団体「MPEG-LA」で管理する映像国際標準のH.263、H.264、VC-1(WMV)のすべてにおいて必須国際標準特許を認定されているという。

注目の2つの研究成果

 その後、説明会では2007年度の注目すべき2つの技術が紹介された。その1つが、WiMAXシステムにおけるモバイルWiMAX端末向け高効率電力増幅技術だ。

画像 電力効率40%を実現する歪み補償

 これまで富士通全体では、WiMAXの基地局、端末、デバイス、標準化に関するエコシステムを構築し、ワイヤレス変復調技術であるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)、周波数効率向上のためのMIMO(Multiple Input Multiple Output)、および高効率電力増幅器の技術を蓄積してきた。

 しかし、モバイルによる利用が期待されると、WiMAXの弱点だった歪み補償による多大な電力消費が大きな壁となり、送信用アンプの高効率化が課題となっていた。富士通研究所では、その歪み補償回路を小型化するとともに、ドハーティ型アンプに工夫を加えることで高効率アンプの開発に成功。電力効率40%を実現することで、送信時間を5割延長し、上りの伝送速度も1.5倍にすることができるという。

 また、2つ目の技術は、世界初となるデータベース情報からの業務プロセス可視化技術。ITシステムは現実世界で流れる人、モノ、金、情報のフローを想定し、効率化するために開発されるが、企業の多くは現状を把握できていないという。その複雑な業務プロセスを可視化し、課題や問題点の「気づき」を得るための技術として開発された。

画像 発見されたイベントとそれらをつなぐ複雑なフローの流れ

 例えば、商談発生から受注、生産指示といった業務の流れの中で、データベースにはそれらの痕跡(イベント)が記録されている。それを発見して時系列でつなぎ、重ね合わせることで、全体フローの流れが曲線でつながれたイベント群が表現される。

 このシステムを利用すれば、見えていなかった繰り返しや差し戻しなどが複雑に入り組んでいる実態が明らかとなり、無駄な業務や不正行為、ベストプラクティスなどが可視化される。また、システム強化の際のテストシナリオとしても有効だという。

 国内外からもすでに数件の引き合いが来ており、同社は今後経営層にアピールするサービスとして商品化を急ぐ考えだ。

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