携帯電話の父が語るワイヤレスサービスの未来像(2/2 ページ)

» 2007年06月13日 07時30分 公開
[國谷武史,ITmedia]
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ITmedia MASはどのようなサービスで使われているのでしょうか?

クーパー会長 MASが初めて実証されたのは、日本が開発したPHSです。PHSは、日本や台湾、中国など限定された地域でサービスが提供されていますが、世界的には先進的なワイヤレスサービスの1つになるでしょう。PHSは、基地局の設置コストを低く抑えられるため、高速通信サービスを安価に提供できるメリットがあります。これは競合他社と比べても大変アドバンテージになります。

 PHS以外にも、MASはiBurstやWiFiでも利用されています。しかし携帯電話の3Gサービスに実装されるには、数年程度かかるでしょう。MASは既存の仕組みに組み込むものではではなく、新しく設計を行う必要があるからです。今後登場する3.5GやWiMAXでは標準的な存在となるでしょう。

ITmedia MASがワイヤレスサービスを束ねる存在になるということでしょうか?

クーパー会長 個人的には、ユーザー求める使い方に応じてサービスや技術が共存する形が望ましいと考えています。ですが今後登場する新しいサービスも、必ず安価なワイヤレスブロードバンドでユビキタスを実現しなければならない、という課題に直面します。

 この業界に携わって50年近くになりますが、革新をもたらすような技術は2つか3つほどしか残されていないのではないかと思います。これから登場する技術や通信方式は、基本的に「OFDM」やMASがキーワードになるでしょう。現在標準化が進められている4Gでは、OFDMAやMASがプラットフォームとなり、いくつかの規格が共存しながら新しいサービスが創造されると思います。

日本は素晴らしい選択をした

ITmedia 日本ではこのほど総務省が次世代ワイヤレスサービスに対する指針案を提示しました(関連記事参照)。印象はいかがですか?

クーパー会長 総務省の示した案は、諸外国の制度を比較しても大変に素晴らしい内容だと思います。特に周波数の有効利用の点では、OFDMやTDD、MASのような技術を積極的に利用することを通信事業者に求めています。また、MVNOのように新しいプレーヤーの参入を促がしている点にも注目されます。

 限りある電波資源は国民共有の財産ですので、MVNOが通話やショートメッセージだけでなく、アプリケーションを活用した新しいサービスが創造されることが期待されます。実際に割り当てられる周波数は30MHz幅(全国サービス向け事業者1社当たり)ですが、最新の技術を用いれば300MHz幅に匹敵するようなサービスを実現できます。ユーザーは新しいワイヤレスブロードバンドサービスの利益を享受できるでしょう。

ITmedia 今回の指針案では既存の携帯電話事業者にとっては参入が制限されています。

クーパー会長 これは個人的な見解ですが、既存の通信事業者はこれまでにさまざまな努力を積み重ねて今日のワイヤレスサービスを実現させてきました。ユーザーにとって利益のあるサービスを実現させるには、これまでに既存の事業者が培ってきた技術やサービスをさらに成長させることのできる環境も大切だと思います。

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