11gのビジネスケースとは(2/2 ページ)

» 2007年07月19日 18時43分 公開
[Brian Prince,eWEEK]
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パフォーマンス低下のない暗号化

 ナンダ氏によると、暗号化は、PCI(Payment Card Industry)基準やSOX法(サーベンス・オクスリー法)など多数の法規制の要件になっているという。従来、暗号化にはパフォーマンスの低下という問題があった。あるフィールドを暗号化すると、そのフィールドに対してインデックススキャンが使用されなくなるためにパフォーマンスが低下するのである。11gでは、暗号化はディスクレベルで行われるが(これは法令に違反しない)、マッチングはメモリ内で行われるため、パフォーマンスに影響が出ることはない、と同氏は話す。

 「パフォーマンスに影響を与えることなく、より多くのデータを暗号化できるようになった。これはCIOにとって朗報だ」(同氏)

 ミズーリ州セントルイスにある金融サービス会社のWachoviaでシニアデータベース管理者を務めるエド・マルヘレン氏は、11gで最も素晴らしい機能として自動ストレージ管理、パーティション管理、仮想カラム、強力なパスワード管理を挙げている。特に、パーティショニングの自動化に関連した機能は、月次データの管理にかかる時間の短縮につながるという。

 「これらの機能は管理コストを削減し、より多くの時間をほかのデータベースタスクに費やすことを可能にするだろう。Real Application Testingについても詳しく検討し、信頼性の高いアプリケーションの開発が行えるようになるのか確認するつもりだ」とマルヘレン氏は話す。

 マルヘレン氏によると、Wachoviaでは52人のOracle DBAがさまざまな業務部門に配置されており、社内の認定プロセスを経て、この秋にはアップグレードに向けた準備を開始したいとしている。

 一方、ナンダ氏によると、Starwoodではアップグレードを急がないようだ。というのも、同社ではHewlett-PackardのItanium搭載コンピュータ上でHP-UX OSを運用しているが、8月に予定されている11gの最初のリリースはLinux向けであるからだ。Oracleでは、ほかのプラットフォーム向けのバージョンの提供時期を明らかにしていない。しかしファインバーグ氏の予想によると、Windows向けバージョンは1カ月遅れで登場する可能性が高い。

 「Oracleの顧客の大半が11gを真剣に検討し始めるのは、2008年末近くになってからだと思う。11gの本格導入が始まるのは2009年だろう。しかしこれは悪いことではない」とファインバーグ氏は語る。

 また、OracleのライバルであるSAPがいつ11gを認定するのかという問題もある。最近では両社の間で訴訟まで起きるなど、両社の反目は公然の事実だ。独バルドルフに本社を置くSAPでグローバルコミュニケーションを担当するスティーブ・バウアー副社長は、11gのテストを実施した後、市場が要求すれば認定を行うとしている。

 「SAPのアプリケーションの運用基盤となるデータベースを選ぶのは当社の顧客であることを指摘しておきたい」とバウアー氏は話す。「SAPは顧客のニーズに基づいて動いており、顧客が選んだデータベースなら何でもサポートするつもりだ。当社の総合的な製品ロードマップおよび開発戦略の一環として11gのサポートを追加する予定だ。どんな新データベースの場合でもそうだが、SAPが11gのサポートを追加する正確な時期は、顧客の間でのOracleの新リリースの普及状況と顧客のニーズによって決まる」。

 Gartnerのファインバーグ氏は、SAPは特定のデータベースに固執しない企業であり、OracleとSAPはパッケージ型アプリケーション分野で最大の競合企業同士であると述べている。「SAPがすぐに認定を行うとは思えない。これはOracleとSAPとの間の戦いの行方を左右する要因になるだろう」と同氏は語る。

 ファインバーグ氏によると、11gの普及に影響するもう1つの未知数は、Oracleがどの機能を有料にし、顧客がそれにお金を払うかどうかだという。

 企業の幹部に11gのビジネスケースを訴求するには、彼らのニーズを理解する必要があり、Oracleのハーディー氏によると、それはコストをコントロールしながらビジネス目標を効果的に達成することに帰着するという。Oracleでは、Cクラスの幹部(CEO、CIO、CFOなど)に11gを利用する必要性を理解してもらうために、サンプルケーススタディ、プランニングの評価、顧客の声の紹介といった手段を活用する考えだ。

 「CIOとCEOたちは、ビジネスの要求に応えると同時にコストを抑制するというチャレンジを前にしている。Oracle Database 11gは、低価格のサーバとストレージのグリッドを極めて効率的な方法で活用し、あらゆるタイプのビジネスアプリケーションをサポートするインフラを提供することにより、この2つのチャレンジに対応する」とハーディー氏は話す。

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