「オタリーマン」を取り込め! システム再構築・成功の秘訣運用管理の過去・現在・未来(2/2 ページ)

» 2007年07月25日 07時00分 公開
[敦賀松太郎,ITmedia]
前のページへ 1|2       

的確な提案に舌を巻く

 山本さんの提案は、これまでルータのオプション機能を利用してきたファイアウォールを統合型セキュリティアプライアンス(UTM)に置き換えること、既存のDHCPサーバと認証スイッチを利用して外部から持ち込んだ不正なPCを接続できない検疫ネットワークを構築すること、社内のネットワークに接続されているすべてのデスクトップに操作ログを記録するセキュリティソフトを導入することなど、細い部分まで考慮されたものだった。また、前任者が設置したまま放置されていたメールサーバを廃止し、ホスティングサービスを利用した方がよいという話だった。

 高橋さんは、これまで出入りしていたSI業者に山本さんが提案した要件リストを見せてみた。その的確な提案内容に、SI業者の担当セールスエンジニアは舌を巻き、後日改めて見積書と提案書をお持ちします、と言い残してそそくさと退散していった。

 その業者との打ち合わせの内容を山本さんに伝えると、山本さんは自分が常連のパソコンショップを紹介すると言い出した。そのパソコンショップには法人営業部があり、下手なSI業者よりもはるかに安価、かつ確かな品質のネットワークを構築してくれるとのことだった。後日、SI業者が持ってきた見積もりを比較してみたところ、山本さんが紹介してくれたショップから購入すれば、ほぼ同じ構成のシステムを構築するのに約半分の予算で済むことが分かった。この額ならば、何とか上長を説得できるだろう。

オタク社員は味方にすべし!

 山本さんの力を借りたことで、内部統制の条件を満たすB社のシステムインフラは、短期間のうちに構築することができた。上長の総務部長や経営陣から高い評価を得た高橋さんだが、山本さんへの恩は忘れてはいない。

 「パソコンオタク」の社員と言えば、社内のシステムインフラを勝手に利用して、自分の趣味を楽しんでいるだけの人物というイメージがある。高橋さんも、今回のシステムインフラ構築で山本さんに知恵を借りるまでは、そう思っていた。しかし、そうした知識に精通した社員こそ、実は情報システムを理解し、会社のために役立つ人材になることが分かった。

 米国の大手ソフトウェアベンダーの中には、優秀なハッカーをスカウトして、自社製品のセキュリティの脆弱性を調査している企業もあるという。ハッカーは、敵にすれば手強いが、味方に付ければ非常に頼もしい存在になる。それと同じで、優秀な「パソコンオタク」を取り込んでしまうことは、システムインフラを強化するために大切なことだ。高橋さんは、そう身をもって感じたと笑いながら話してくれた。

関連キーワード

運用管理 | 経営 | オタク


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ