各社がブレードサーバの100ボルト対応に踏み切る理由Weekly Access Top10

大手4社が製品を展開する100ボルト対応のブレードサーバ市場。なぜこういった動きが起きているのか。100ボルトブレードサーバは中小企業を救う処方箋となるのか。

» 2007年10月28日 03時05分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 第3位に入ったクインランド、地域生活情報ポータルサイトを全国26地域に拡大は、2006年4月の記事だ。ITマーケティングを駆使した“Web2.0”的なビジネスモデルを有する企業として取り上げられることもあったが、10月25日に大阪地方裁判所から破産開始決定を受けた

 積極的なM&Aで拡大を図ってきた同社だが、投資回収が進まず事業を継続できなくなった。本業以外の事業を急拡大したことで、本業がおろそかになってしまったことが破産の一因として挙げられる。一時期隆盛を極めたネットビジネスも今は飽和状態。これからは、IT企業のみならずいかなる企業もきちんと本業に取り組むという真摯な姿勢が求められるということが、改めて浮き彫りになったのではないか。

 さて、話は変わるが、今週、日本IBMが100ボルト対応のブレードサーバ製品を発表した。100ボルトブレードサーバ市場への本格参入は大手では日立、NEC、日本HPに続き、4社目となる。

 ノークリサーチが調査した「2007年中堅・中小企業のサーバ/クライアント管理実態調査報告」では、現在中小企業において、x86サーバ全体におけるブレードサーバの割合は2%程度にすぎないという。

 中小企業でブレードサーバの導入が進まなかったのは、ブレードサーバに対して「エンクロージャが(自分たちのビジネス規模では)大きすぎて高額」「機器の構成が複雑」といったイメージを持つことが多いことに起因する。日本IBMでは、ブレードサーバを一定台数以上購入した場合、シャーシを105円で提供するなどのキャンペーンを実施していたのも、顧客のこうした声を反映したものだ。

 さらに、オフィスで一般的に用いられるのが100ボルト電源であるのに対し、サーバでは200ボルト電源が一般的であったのも中小企業がブレードサーバを導入しづらかった一因だ。サーバベンダー各社による100ボルト対応ブレードサーバの投入がこの時期になったのは、大企業相手のビジネスを考えていたこともあるが、技術的な課題があったことが大きい。

 供給電力を維持しつつ電圧を200ボルトから100ボルトにすると、電流量が2倍必要になるが、交流/直流の変換効率を考えると容易ではなかった。もちろん熱などの問題を抜きにすればもっと早く投入も可能だったであろうが、高密度のブレードサーバで熱が発生しすぎるのは大きなリスクとなるため、各社とも高い変換効率を持つ電源ユニットの開発にいそしんだのだ。

 上記問題を解決する小型の電源ユニットが開発されたこと、そして、CPUの低消費電力化も進んだことで、クアッドコアのプロセッサすら搭載可能な100ボルト対応ブレードサーバが各社からリリースされるようになった。もちろん電源出力容量などを考えれば200ボルトブレードサーバの方が拡張性などに優れるが、仮想化技術の発展などもあり、数枚の100ボルト対応ブレードサーバにシステムを統合可能な環境が整ってきた。各サーバベンダーとも中小企業の実情を勘案し、手ごろな枚数でのブレードサーバソリューションの提供を開始した今、中小企業にとってブレードサーバの導入は積極的に検討してもよい時期であると言ってもよいだろう。

 IDC Japanの調査でも、2010年までサーバ市場全体が年次5%で成長すると予測しているが、このうちブレードサーバは年次20%で成長する“有望株”だ。x86サーバで利用可能な仮想化技術の発展により、高密度型のシステム構成は今後しばらくトレンドが続くと見られる。

 ブレードサーバの導入をためらっていた企業は、こういった市場の動きを機に、導入を検討してみてはいかがだろうか。

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