LANケーブルからの卒業――無線のブロードバンド時代が到来「行く年来る年2007」ITmediaエンタープライズ版(2/3 ページ)

» 2007年12月28日 05時30分 公開
[國谷武史,ITmedia]

独自サービスを生むMVNO

 2007年は、「MVNO(Mobile Virtual Network Operator=仮想移動体通信事業者)」の存在も注目された。MVNOは、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクモバイルのように通信設備を保有する通信事業者とは異なり、通信設備を借りて独自のサービスを提供する。

 11月には、イー・モバイルと大手のインターネットサービスプロバイダー(ISP)5社が「MVNOコンソーシアム」を設立した。ISP5社は、イー・モバイルの設備を借りて、12月から順次サービスを始めている。MVNOでは、独自のサービス内容や利用料金を設定できる。

 従来は、KDDIの設備を利用するいすゞ自動車のリアルタイム車両管理サービス「みまもりくんオンライン」のように特定業種向けのサービスが主流で、一般ユーザー向けには日本通信がウィルコムの設備を借りて提供する「b-mobile」など一部に限られていた。

 日本通信のサービスの場合、PHS回線のほかに無線LANのアクセスポイントも利用できるため、1つのサービスで複数の無線インフラを利用できるメリットがある。このように、MVNOが広がればユーザーにとっては利用形態に応じたサービスを選びやすくなる。

 総務省もMVNOや、モバイル電子決済などのサービスを提供する「MVNE(Mobile Virtual Network Enabler=仮想移動体サービス提供者)」の参入を促進させるためのさまざまな取り組みを進める

“スマート”なモバイル端末

 2007年は、「スマートフォン」と呼ばれる通信機能を内蔵した携帯情報端末が注目された。無線データ通信では「ノートPC+モデムカード」というスタイルが一般的だが、スマートフォンは端末1台で済むため、モバイル環境でのインターネット接続や電子メール利用をさらに身近なものにした。

 スマートフォンは、第2世代、第3世代の携帯電話規格や無線LANに対応するだけでなく、Bluetoothや赤外線通信など多彩な無線方式に対応する機種が多い。データ通信ばかりではなく、周辺機器とケーブルレスな形で接続できるのがユーザーにとって大きな魅力になった。

 スマートフォンには、一般ユーザーだけでなく企業も注目する。情報漏えい防止の観点から、ノートPCの持ち出しを禁止する企業が増えているためだ。ノートPCよりも小さいスマートフォンは、ユーザーの機動性を高めることに加えて、ノートPCに近い操作性や機能を有している。

 小さいがゆえに紛失するリスクはノートPCよりも高まるものの、最近では遠隔からの操作で端末の動作を停止させたり、端末内に保存されたデータを消去したりできるようになり、生体認証への対応などセキュリティ対策が強化されて、企業でも利用できる存在となり始めた。

 国内のスマートフォン端末は、ウィルコムが「W-ZERO3」を2005年に発売して以降、種類が順調に増え、今年までに発売された機種はマイクロソフト製OSを搭載するものだけで12機種になった。スマートフォンで先行する米国は、すでに数百機種以上が存在するともいわれ、スマートフォンによる無線データ通信の利用が広がりつつある。

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