LANケーブルからの卒業――無線のブロードバンド時代が到来「行く年来る年2007」ITmediaエンタープライズ版(3/3 ページ)

» 2007年12月28日 05時30分 公開
[國谷武史,ITmedia]
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さらに高速。次世代サービスがスタンバイ

 12月21日、総務省は2.5GHz帯の周波数を利用する次世代無線サービスのための免許を、KDDI系のワイヤレスブロードバンド企画とウィルコムの2社に交付した

 ワイヤレスブロードバンド企画は、「モバイルWiMAX」と呼ばれる通信規格を導入し、ウィルコムは「次世代PHS」方式を導入する。2社のサービスでは、実証実験で20Mbps以上の通信速度が確認されている。現在商用化されている携帯電話技術ベースのHSDPA方式では理論値で最大14Mbps強とされているため、2社のサービスではHSDPAを上回る通信速度のサービスが提供される見込み。ハイビジョン画質の映画コンテンツを移動しながら視聴できるといった、大容量データの伝送が可能になる。

 KDDIでは、WiMAXと携帯電話網のシームレスな接続を実現させており、ウィルコムも現行PHSとの互換性をサービスの特徴の1つに挙げている。次世代サービスでは、既存サービスとの連携も注目される。2社では2009年中に商用サービスを始めるとしている。

ユビキタス前夜

 2008年の無線データ通信を占うと、2007年に起きたブロードバンド化の波や、これまで閉鎖的とされてきた無線ビジネスの世界がインターネットのようなオープンな世界へ向かい始めた動きが本格化し、「いつでも、どこでもつながる」というユビキタスの世界を実感できる1年になりそうだ。

 無線ブロードバンドの根幹である電波周波数は、限りある国民共有の財産であるため、無制限に無線ブロードバンド化が進むわけではないが、無線ビジネスのオープン化が新しいサービスを誕生させ、ユーザーの選択肢が広がることは確かだろう。

 同時に厳しい競争環境が到来するとも予想される。通信サービスは、安定性・永続性が第一とされてきたが、無線免許を取得しながらも経営難に陥ったアイピーモバイルのように、新規サービスのすべてが質の高いものとして提供されるとは限らない。

 アナログの地上テレビ放送が終了する2011年以降は、テレビが利用していた周波数帯を新たな高速無線サービスへ割り当てることが検討されている。2008年は次世代の高速無線サービス時代の到来に向けて、事業者側には安定性と永続性、利便性という通信本来のサービス品質をユーザーに提供できるかどうか、ユーザーには、新しいサービスが希望に応えるものであるかをしっかりと見極められる目を養うことが求められそうだ。

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