「遅い」「高い」……。かつて、無線のデータ通信はこのように評された。2007年は無線のブロードバンド化が一気に進み、料金にも値ごろ感が出てきた。2008年はどのような進化を遂げるのか?
2007年は、無線データ通信のブロードバンド化が進んだ1年となった。以前はウィルコムの独断場だったが、3月末にはイー・モバイルが高速データ通信に特化したサービスを始め、既存の携帯電話事業者もデータ通信サービスを強化した。通信速度は、「kbps」から「Mbps」へ、料金も従量制から定額制へのシフトをしつつある。2008年は、さらにどのような進化を遂げるのだろうか。
一般ユーザーにとって無線データ通信が身近な存在となったきかっけは、ウィルコムが2001年に開始した「Air H"(エアーエッジ)」だろう。当時、社会人1年目で一人暮らしを始めたばかりだった筆者は、高額な電話加入権を払い、1.5MbpsのADSL回線を引くか、32kbpsのエアーエッジを利用するかで思い悩んだのを覚えている。結果的に、通信速度は遅いながらも、ケーブルレスなエアーエッジの魅力に取りつかれた。
その後もウィルコムは、複数の基地局に同時接続することで、通信速度の高速化を進めてきた。現在では最大512kbpsの「W-OAM typeG」方式を導入している。同社ではバックボーン回線のIP化を進めており、最大800kbps程度まで高速化できるという。
13年ぶりの新規携帯電話事業者となったイー・モバイルは、第3世代通信方式W-CDMAの高速化規格「HSDPA」を採用し、最大3.6Mbps、月額5980円の定額料金制で無線データ通信市場に参入した。開業時、千本倖生会長兼CEOは、「無線ブロードバンドで通信市場に風穴を開ける」と宣言した。
同社はその後、月額2480円から利用できる「ライトデータプラン(年間契約割引適用の場合)」や月額3980円で約1Gバイトまでのデータ通信ができる「ギガデータプラン」を導入。12月には7.2Mbpsのサービスも始めた。加入数は11月中旬までに16万件強を獲得し、「無線ブロードバンド」という概念をデータ通信市場に定着化させつつあるようだ。
会社名 | NTTドコモ | KDDI | イー・モバイル | ウィルコム |
---|---|---|---|---|
下り最大速度 | 3.6Mbps | 3.1Mbps | 7.2Mbps | 512kbps |
上り最大速度 | 384kbps | 1.8Mbps | 384kbps | 512kbps |
月額料 | 4200〜1万500円 | 5985〜6930円 | 2480〜1万980円 | 1万1088〜1万2915円 |
定額適用外時の通信料(/1パケット) | 0.012円 | 0.0525円 | 0.0105円 | なし |
対応端末 | FOMA A2502ほか | W05K | D02HW | AX530IN |
メリット | 通常のFOMAエリアも利用可 | 上り速度は国内最速 | 下り速度は国内最速 | 無線LANアクセスポイントも利用可 |
デメリット | 月額料の上限が高額 | 従量課金でのパケット単価が高額 | サービスエリアが大都市部に限定 | 月額料が高額 |
以前から従量課金制でデータ通信サービスを提供してきたNTTドコモとKDDIも、相次いで定額制サービスを開始した。NTTドコモは当初、インターネット接続と電子メール利用に制限していたが、現在ではVPN接続などができるようにしている。KDDIは、基地局やバックボーン回線のトラフィック状態によって利用を制限するとしながら、基本的にはFTPなど多彩な通信プロトコルの利用を認めるサービス内容となっている。
既存の携帯電話事業者がこうした動きを強める背景には、通話料収入の減少に伴うデータ通信料収入の拡大があるといわれる。各社の決算発表などで公開しているARPU(加入者1人当たりの月間収入)をみると、各社とも通話料収入の割合が減少し、データ通信量収入が拡大していることが分かる。各社とも、データ通信利用の拡大に期待し、ARPUを高めることへ注力している様子がうかがえる。
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