BIがあなたにもたらすベネフィット(2/2 ページ)

» 2008年01月09日 07時00分 公開
[猪瀬森主(マイクロソフト),ITmedia]
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BIを構成するもの

 さて、BIのベネフィットを簡単に説明したが一般的にどのようなソリューション構成なのかをここでは説明する。

BIソリューションの構成

ETLツール

 BIのシステムを構築する大前提として、データを一元化するためのデータウェアハウス(DWH)を構築し、組織内に散在するさまざまなデータ(部署毎に散在するデータベースやERPなどのデータ)を統合する必要がある。そのようなデータを抽出(Extract)し、データウェアハウスなどで利用しやすい形に加工(Transform)し、対象となるデータベースに書き出す(Load)ソフトウェアをETLツールという。データベースソフトウェアのSQL Server 2005を例にとると、SQL Server Integration Servicesがこれに当たる。

データウェアハウス(DWH)

 データ分析を行うためのデータの倉庫(ウェアハウス)である。複数の基幹システムのデータを分析用に時系列などで統合するBIの中核に該当するものとなる。例えば、販売管理システムや一般的なデータベースソフトウェア(OracleやDB2)などのデータを、BIによる分析用としてSQL Serverに統合するといったことが行われる。データウェアハウスに蓄積されたデータがレポーティングや多次元分析などに活用されるのだ。

レポート

 蓄積されたデータを表やグラフなどの視覚的な形式で出力する機能を指す。そのほか、レポート閲覧者へスケジュールに沿った配信を行ったり、さらには閲覧者が自分の見たいデータを抽出してレポート作成できる機能などを備える。SQL ServerではSQL Server Reporting Servicesがこれに当たる。

データ分析

多次元データ分析 「Cube(キューブ)」とよばれる独自のデータベースを構築することで集計データを多次元構造で表現し、これをさまざまな角度から見ることで、全体の傾向や問題点を把握できるものだ。分析時に必要なデータを検索・集計するのではなく、事前にキューブと呼ばれる多次元のデータベースにデータを集計しておくことで、オンラインでスピーディにデータを分析できるのだ。ドリルダウン(例えば関東地区から下位の都道府県のデータを見るなど)やドリルスルー(商品カテゴリーの製品別明細を見るなど)といった分析方法を利用することでスピーディに分析が可能だ。この機能の詳細と具体例ついては別途説明する。

データマイニング 多次元データ分析により時系列データを分析する一方で、現在リアルタイムで進んでいるビジネスに関して、よりプロアクティブにデータを活用する手法がデータマイニングによる分析機能である。蓄積されたデータから、潜在的な顧客のニーズを見出し新たなビジネスチャンスを発見しようという手法である。すなわりデータ(Data)という「鉱山」からビジネスチャンスという「宝」を採鉱(Mining)することを指す。データマイニングのよくある例として米国の小売店のデータ解析例が挙げられる。日毎の製品別売上、そのほかさまざまな要素が含まれるデータベースを分析したところ「紙おむつを購入する客はビールを同時に購入する」とか「雨の日は肉の売上が多い」といった法則性が発見されたというものである。これに関しても次回以降で詳細な説明をする。SQL ServerではAnalysis Servicesが提供されている。

モニタリング

 業務データおよび組織にさまざまな形式で散在する実績データを、スコアカードや戦略マップ、分析チャートなどの形式で可視化する機能である。企業目標やビジネス戦略を実現するために設定されるKPIなどの管理指標(業績評価指標:Key Performance Indicators)の状況をゲージや信号(青黄赤)などで表示させて可視化ができる。

プランニング機能

 予算編成/予測/連結に代表されるような、Excelを多用した予算に関するプランニング業務について、データや入出力シート、データ加工ロジックをサーバ上で集中管理することで実現する機能である。

 簡単ではあるが、以上がBIの一般的な構成である。


 従来のBIシステムは、莫大なコストが掛かる上、専門的な知識を有した特定の担当者(企業内アナリストなど専門性を持つ特定のユーザー層)だけしか使いこなせないシステムだった。つまり、専門的な分析知識が必要な上にツールに関するスキルも必要であり、社員全員の意思決定をサポートするようなものではなかった(今でもそういったシステムが大半だが)。実際に導入はしたものの活用されていないという事例は非常に多い。

 しかし本来BIというものは、社員全員が企業の戦略に基づいて、リアルタイムに意思決定するためのものであり、すべての社員が利用できなければならない。そしてBIツールの選定には、社員全員が利用できることはもちろんのこと、既存システムとの親和性やコストも考えなければならない。

 次回以降は、BIの導入ステップや今回紹介した各ソリューションを活用した分析の具体例を詳細に説明することで、よりベネフィットを読者に理解していただこうと思う。

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