OracleとSAPの「買収合戦」、浮かび上がるソフト業界大再編の予兆ITトレンドの“眼”

10月中旬、独SAPが仏Business Objectsの買収に、米Oracleが米BEA Systemsの買収に相次いで乗り出した。現時点で合意に達したのは前者だけだが、ここにきて新たなソフトウェア業界再編の可能性が浮かび上がってきた。

» 2007年10月23日 07時00分 公開
[松岡功,ITmedia]

 これまで何度も再編劇を繰り返してきた世界のソフトウェア業界に、また新たな衝撃が走った。今まで大規模な買収を行わず自力成長路線を取ってきたSAPが、ビジネスインテリジェンス(BI)ソフト大手のBusiness Objectsの買収に乗り出したからだ。

 両社はすでに合意に達しており、買収総額はおよそ68億ドル(約7900億円)。買収取引は2008年第1四半期中に完了する見込み。買収後もBusiness Objectsは独立した企業として運営されるが、経営陣やリソースは共有していくという。ただし、Business Objectsのジョン・シュワルツCEOは引き続き経営の陣頭指揮を執るようだ。

画像 仏Business Objectsの買収に乗り出した独SAPのヘニング・カガーマンCEO

 買収に慎重だったSAPがBusiness Objectsの買収に乗り出した背景には、ここ数年、相次ぐ買収で事業領域を拡大しつつある宿敵Oracleに対する危機感がある。Oracleはおよそ3年前のPeopleSoftを皮切りに、ミドルウェアやアプリケーション分野で30社以上も買収によって獲得してきた。

 中でもSAPが危機感を募らせたのは、今春Oracleが企業業績管理(EPM)ソフトの有力ベンダーである米Hyperion Solutionsを買収したからだ。これによってOracleは自社のBIソフトとHyperion SolutionsのEPMソフトを組み合わせたソリューションを強化し、特にHyperion SolutionsのEPMソフトを使用するSAPの既存ユーザーが多いことから、SAPの“外堀”を埋める戦略に出た。

画像 企業買収に力を入れる米Oracleのラリー・エリソンCEO

 さらに、SAPによるBusiness Objects買収の衝撃が冷めやらないうちに、今度はOracleがアプリケーションサーバなどのミドルウェア大手である米BEA Systemsに買収提案したことを発表した。提示した買収総額はおよそ67億ドル(約7800億円)。くしくもSAPがBusiness Objectsと合意した金額とほぼ同じだ。ただし、こちらはBEA Systemsが「Oracleの提示額は当社の価値を過小評価している」として、買収提案を拒否する姿勢を示している。とはいえ、Oracleはまだあきらめていないようで、引き続き交渉を継続する構えだ。

メインプレーヤー同士の大型合併も

 OracleとBEA Systemsの交渉は予断を許さないが、いずれにしてもBusiness ObjectsやBEA Systemsといった有力ソフトベンダーが相次いで買収の対象になったことに、新たなソフトウェア業界再編の予兆を感じている関係者が少なくないようだ。

 ある関係者は、「いよいよOracle、SAPにIBM、Microsoft、それに加えて、異なったビジネスモデルで挑むGoogleの5社をメインプレーヤーとしたソフトウェア業界大再編を迎えようとしているのではないか。場合によってはメインプレーヤー同士の大合併もあり得るかもしれない」と言う。

 メインプレーヤー同士の大合併といえば、この5社の中では、MicrosoftとSAPの合併話がこの2年ほど浮かんでは消えている。さらに、このところ水面下では、BIエンタープライズサーチといった注目分野の有力ソフトベンダーが、次なる買収の対象として取りざたされている。

 前出の関係者が言う5社のメインプレーヤーの動きを占うならば、OracleとSAPがエンタープライズ市場に強い総合ソフトベンダーとして、IBMを加えた三つどもえの戦いを展開する一方、ボトムアップ戦略でエンタープライズ市場に挑むMicrosoftとGoogleが、豊富な資金を武器に新たな買収戦略を仕掛ける可能性は大いにある。

 それにしても、これらソフトウェアのメインプレーヤーが、かねて「総合化」を競ったハードウェアベンダーと本質的に同化しつつあるように思えてならないのは筆者だけだろうか。今やソフトウェアがITソリューションの源泉であることは明白だが、総合化がもたらすメリットとデメリットを、ユーザーとしては凝視しておく必要がありそうだ。

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