NGNがターゲット――シスコが新世代エッジルータを発表

シスコシステムズは、新開発プロセッサを搭載した通信事業者および企業向けエッジルータ「ASR1000」シリーズを発表した。

» 2008年03月05日 15時48分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 シスコシステムズは3月5日、新開発のネットワークプロセッサ「Cisco QuantumFlow Processor」を搭載する通信事業者および企業向けエッジルータ「ASR1000」シリーズを発表した。4月に発売する。

 新製品は、企業とコンシューマ双方で広がる大容量マルチメディアデータのネットワーク利用に対応するため、数十ギガビットクラスのスループット処理を視野に入れた拡張性や、グリーンITのための省電力性、TCOおよびサービス停止を回避する運用性の高さなどを特徴としている。

「日本市場を強く意識して開発した」と話すオーバービーク(左)とASR1000シリーズ

 エザード・オーバービーク社長兼CEOは、「新プロセッサの開発に5年と約2億5000万ドルを投じた。2011年には1カ月に29エクサバイト(約290億ギガバイト)のデータがネットワークを流通する。次世代のネットワークサービスに求められるコスト、拡張性、冗長性を重視して開発した」と述べた。

 1チップ上に40のコアを搭載するQuantumFlow Processorは、並列処理により160のスレッドを同時に実行でき、最大12万8000のQoS(Quality of Service)ポリシーに対応する高度な処理性能を有する。500タイトルのWebビデオとHDTVのストリーミング配信、5000回線のVoIP通話、750回線のVPN接続、200回線のHDビデオ会議を同時に処理できるという。

 ASR1000シリーズでは、2RU/4RU/6RUの3種類をラインアップし、まず2RU/4RUモデルでは5ギガビット、6RUモデルは10ギガビットのスループットに対応する。QuantumFlow ProcessorやVPN/ファイアウォール機能、レイヤ4以上でのパケット解析機能などを1つにした「ESP(組み込みサービスプロセッサ)」というモジュールを交換することによって20ギガビット以上のスループットに対応できる構成で、将来的に100ギガビットクラスへの対応を視野に入れている。

ASR1000シリーズの主な仕様と企業で想定される利用シーン(右)。NGNを通信する固定通信事業者だけでなく、3.9世代携帯電話システム「LTE」などIPベースのプラットフォームを検討する携帯電話事業者にも最適だという

 また、同シリーズに搭載されるOS「Cisco IOS XE」では、仮想化機能を利用して2つの仮想IOSを稼働させ、ソフトウェアの更新時に一方の仮想IOSを稼働させながら、一方の仮想ISOで更新作業ができるようになっている。これにより、サービスを停止させる手間を回避できるという。1ポート当たりの消費電力量は、6RUモデルのASR1006の場合、1Uサイズのインターネットルータ「7301」に比べて約46%減少した。本体前面から背面へのエアーフロー構造を採用してラックへの収容性を高めるとともに、空冷の効率性を向上した。

 製品価格は、2RUモデルのASR 1002が469万9000円から、4RUモデルのASR1004が728万3000円から、ASR1006が857万5000円からとなる。VPNやファイアウォールなどの機能は別途ライセンス購入が必要。

 ASR1000シリーズは、NTT東西が3月末から商用サービスを開始するNGN(次世代ネットワーク)のエッジルータとして採用された。オーバービーク氏は、「NGNではデータ/音声/映像/モバイルを統合した“Any Play”サービスという形で提供されるようになり、Ciscoはこうしたサービスを支えるアーキテクチャの普及に努める」と述べた。

 「企業のパフォーマンスを高め、NGNで先行する日本の国際競争力の強化を支援したい」(同氏)

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