企業でのモバイル環境が注目される中、モトローラとマイクロソフトがエンタープライズ向けモバイルの方向性を示す。
モトローラは4月25日、企業ユーザーを対象とした「エンタープライズ・モビリティ・アドバンテージ・セミナー」を都内で開催。同社およびマイクロソフトが企業向けビジネスの方向性について説明した。
モトローラグループの企業ユーザー向けビジネスでは、昨年まで日本シンボルテクノロジーがハンディターミナルやバーコードスキャナ製品を中核に事業を展開してきた。今年1月1日付けで同社とモトローラが統合し、新たに「エンタープライズ・モビリティ・ビジネス本部」として活動している。
冒頭、モトローラエンタープライズ・モビリティ・ビジネス ディレクターの宮崎康樹氏は「近年、多くの調査会社が企業のモビリティ対応の重要性について言及し、企業のモバイル化が世界規模で注目されている」と述べた。トータルコスト削減やワイヤレスインフラの普及、社員の労働環境の多様化から、モバイルに対する企業の期待感が高まっているという。
同社の事業優位性について、宮崎氏は65年以上のビジネスの実績、グローバル規模での開発・サポート体制、9000社以上との協業体制を挙げた。「例えば二次元バーコードや無線LANコントローラーを世界で初めて開発するなど、現代のモバイルに不可欠な要素技術をわれわれが開発してきた経緯がある」(同氏)と話した。
今後はこうした点を生かし、ソリューションサービスの強化を図るという。従来から強みとしている小売や物流、製造など業界別のソリューションに加え、メッセージングなどコミュニケーション分野にも注力していく。2006年11月に買収したプッシュEメール(携帯電話端末への電子メール自動配信)ベンダーGood Technologyのノウハウを導入していくとしている。
マイクロソフトは、スマートフォン/PDA向けOS「Windows Mobile」の企業ユーザー向け展開について説明した。
同OSを搭載する端末は、昨年グローバルで約2000万台以上を出荷したという。採用したキャリアは55カ国115事業者となり、ラインアップも140機種以上になった。
ソリューションセールス統括本部ソリューションスペシャリストの中島憲彦氏は、「企業は業務生産性の向上に加えて、情報資産を安全に持ち出すソリューションとしてもスマートフォンに注目している」と語った。
Windows Mobileには、Officeアプリケーションのモバイル版が搭載され、1万8000種以上のサードパーティー製のアプリケーションが存在する。特に企業ユーザーとって必要なセキュリティ対策では、遠隔操作でのデータ消去、操作ロック、外部記録媒体の暗号化(Windows Mobile 6のみ)の基本機能をOSレベルで実現した。また、開発環境はVisual Studio 2005を利用でき、SQL Serverとの連携によるモバイル環境でのデータベース活用ができるようになっているという。
Microsoftは米国の企業ユーザーを対象にした利用動向調査で、メッセージ(電子メールなど)機能の利用者が2006年の約630万人から2011年には1470万人に、業務アプリケーション利用者は同90万人から450万人に、両方の利用者が同360万人から1980万人に拡大すると予測している。
「日本は米国と反対に業務アプリケーション利用が主体だが、今後はメッセージ機能の利用者が急速に拡大するとみている」(中島氏)
Windows Mobileは、昨年初頭に最新版のバージョン6を搭載する端末が世界で発売された。今年は、企業の管理が端末を集中管理できる「System Center Mobile Device Manager」をリリースする予定。これにより、OSやアプリケーションのバージョン管理、パッチファイルやセキュリティポリシーの端末への配布、業務に不要なアプリケーションの強制停止といった機能を利用できるようになる。
中島氏は、「携帯電話は新製品のサイクルが早く、対応が難しいという企業が多い。Windows Mobileは汎用性を生かし、アプリケーションを長期利用できる環境の整備に努めている」と話した。
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