朝日放送はシスコシステムズのキャリアルーティングシステムを導入した。多様なデジタルコンテンツ配信を可能にしている。
シスコシステムズは6月9日、朝日放送(ABC、大阪市)がシスコのキャリアルーティングシステム「Cisco CRS-1」を導入したと発表した。同製品が放送業界へ導入されるのは初となる。
ABCではデジタルコンテンツの利用拡大とハイビジョン放送(HDTV)の普及により、放送局内のネットワークのIP化と広帯域化を計画した。近年は放送コンテンツをテレビだけでなくPCやモバイル端末で視聴する機会が増え、大量のアクセスに対して安定したコンテンツ配信を実現するためのネットワーク整備が必要になっていた。さらに、HD(High Definition)コンテンツの普及によって、大容量データをネットワークを介して利用するためのインフラも重要になっていた。
ABCはCRS-1を導入したことで、大量のアクセス処理や非圧縮状態で約1.5GbpsのストリーミングサイズとなるHDデータのトラフィックを複数回線分でも安定的にリアルタイム処理できるインフラを光ファイバ網で構築した。
ABCの香取啓志技師長は「現在新局舎の建設を進めており、HDベースの放送やマルチメディア時代に対応した“第二世代のデジタル放送局”になる」と話す。新局舎は光ファイバ網を整備し、HDコンテンツを制作する編集室や映像データを蓄積するファイルサーバまでを高速のネットワークでつないでいる。
同じくABCの小林慎一郎技師長付デジタルメディア担当部長は「今後は技術がコンテンツの利用を促進し、制作品質の向上をさらに加速させるだろう」と話す。CRS-1の導入で非圧縮の「4K」(ハイビジョンの4倍の解像度)コンテンツを配信できるようになり、困難だった高精細コンテンツの制作や配信が実現する。
シスコによれば、CRS-1は世界で約1600台、国内では160台前後の導入実績がある。最近では次世代ネットワーク(NGN)のサービス拡大を視野に導入を検討する企業が増えつつあるとしている。
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