ブレードサーバでグリーン&仮想化

ブレードサーバの潜在力を引き出す管理ツール群省電力も、自律復旧も

1台のシャーシの中に複数のサーバコンピュータを搭載するブレードサーバにおいては、管理ツールを利用しなければその機能を使いこなせない。N+1リカバリやサーバ構成のGUI管理といった特徴を紹介する。

» 2008年09月08日 08時00分 公開
[大神企画,ITmedia]

管理ツールが実現するあれこれ

 通常のサーバは、ラックマウント型にもタワー型にも、コンピュータを構成するすべてのパーツが搭載されており、スタンドアローンでも稼働することが可能だ。対してブレードサーバは、ブレード単体では何の役にも立たず、必ずシャーシが必要になる。なぜなら、ブレードの稼働に必要な電源はシャーシから供給され、ブレードが安定稼働するために必要な冷却機能もシャーシに搭載されているからだ。ブレードは、シャーシと組み合わせることでようやく一人前のサーバコンピュータになるわけだ。

 そのため、ブレードサーバはシャーシを1台と数え、ブレードを物理的なサーバとして個別に機能するモジュールとする見方もある。そして、こうした特殊な形状だからこそ、実現できた新しい機能もある。

 例えば、複数台のブレードサーバを現用し、1台または複数台のブレードサーバを予備として待機させておくことで耐障害性を高める「N+1/N+Mコールドスタンバイ」は、ブレードサーバならではの機能だ。通常のサーバの場合、耐障害性を高めるにはHAクラスターリングが一般的。これは現用系と待機系の台数が1対1であることが基本である(なので、調達や管理にコストも手間もかかる)。ところがブレードサーバの場合、それが複数台同士でも可能であり、障害発生時には待機系サーバに自動的に切り替えられる。

 こうした機能を簡単に実現できるのは、実はブレードサーバの管理ツールのおかげである。管理ツールがシャーシとブレードの状態を監視し、障害発生時に何をすべきか管理されているからこそ、なせるワザなのだ。

ブレード向けに豊富な機能を用意

 ブレードサーバにとって重要な役割を果たす管理ツールだが、面白いことにベンダーによって扱い方に大きな差がある。

 バラエティに富んでいるのは、HPである。「BladeSystem」では「Insight Control」を中心とした管理ツール群を利用し、各ブレードを管理する仕組みになっている。この管理ツール群により、OSの環境に依存しないリモートコントロール管理が可能なほか、障害管理、性能管理、イベント管理、自動化、消費電力や発熱の監視・管理など、あらゆる管理が行える。これらの管理ツールは基本的に有償で販売されているものだが、価格が25万円以上のブレードサーバには標準でバンドルされており、実質的にはそれほどの追加出費もなく利用できる。

Insight ControlVirtualization Manager Insight Controlで提供される諸機能(画像=左)、画像はVirtualization Manager。仮想サーバを視覚管理できる(画像=右)

 ブレードサーバの管理ツールを充実させているという点では、NECも負けていない。「SIGMABLADE」向けに用意されている「SigmaSystemCenter」は、ブレードサーバのプラットフォーム管理に必要な機能がオールインワンで提供されていることが特徴だ。特に力を入れているのが「自律」の機能。これは、障害発生時、あるいは処理のピーク時といったケースごとに、あらかじめ設定したポリシーに基づいて自動実行するものだ。前述したN+1のリカバリをはじめ、高負荷検出時のスケールアウト、業務負荷に応じたサーバリソースの配分などが行える。さらに、SIGMABLADEに用意されている管理ツールでは、消費電力天井制御、温度・ファン連動制御、最適電源稼働制御などの機能を詳細にコントロールできる。

SigmaSystemCenterの電力管理機能 省電力モードと電力しきい値を動的に切り替えられる

 日立や富士通も、ブレードサーバ用の管理ツールを用意して、自動化や省電力化などさまざまな機能を実現しているが、両社の大きな特徴は上位の運用管理ソフトウェアとの連携機能にある。日立の「Blade Symphony」は「JP1」を使って、富士通の「PRIMAGYブレードサーバ」も「Systemwalker」を使って統合管理できる。

 PRIMAGYブレードサーバのブレードビュワー PRIMAGYブレードサーバのブレードビュワー。ブレードの構成をGUIで管理できるのも管理ツールのトレンド

共通のサーバ管理ツールで対応

 一方、ラックマウント型など、ほかのサーバと共通の管理ツールを利用することを基本とし、一部ブレードサーバに特化した機能を用意して対応しているのが、IBMとデルだ。

 IBMは、「BladeCenter」の管理ツールとして「IBM Director」という管理ツールを利用する。このツールは、管理対象サーバのインベントリやソフトウェアアップデートなど、包括的な管理機能を提供するものであり、複数のプラットフォームで一貫した管理が可能な点をウリにしている。IBM Directorには、BladeCenterのシャーシやコンポーネントを管理する機能も用意されている。

 一方のデルは、「PowerEdgeブレードサーバ」にPowerEdgeサーバ共通の運用管理ツール「OpenManage」を添付している。このツールは、ハードウェアにフォーカスした管理機能を提供するもので、PowerEdgeのインストールと設定を容易にする機能、イベント監視・通知、リモート監視、ストレージ管理などの機能を持っている。

 サンも、基本的にラックマウント型と同一の管理ツールを利用することが特徴となっている。サンのブレードサーバにも当然、シャーシを管理するためのモジュールが搭載されているが、こうしたブレードサーバ独自機能も含め、ラックマウント型が混在する環境でも同様の管理ツールを使えることが、サンの特徴だ。


 現在、ブレードサーバを管理する上で各社が共通して注力しているのは、自動化(自律化)と省電力化(エコ)である。障害発生時にいかに迅速かつ自動的に復旧するか、消費電力や発熱をいかに制御するかといった点を実現する機能がブレードサーバに搭載され、それを管理ツールでコントロールする。これがブレードサーバの管理ツールのトレンドだといえる。

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