Symantecは自社製品にバンドルするため、SaaSプロバイダーのMessageLabsを買収した。一方、GoogleはセキュリティSaaSの価格体系を簡素化した。
SymantecとGoogleは、SaaSやクラウドコンピューティングを「騒ぎすぎ」と批判したOracle CEO、ラリー・エリソンのメモを読まなかったようだ。Symantecは自社製品にバンドルするため、SaaSプロバイダーのMessageLabsを買収した。一方、GoogleはセキュリティSaaSの価格体系を簡素化した。エンタープライズアプリケーションやメッセージング/コラボレーションツール用のWebサービスセキュリティ市場は、今や活気に満ちて絶好調だ。
OracleのCEO、ラリー・エリソンはWebベースコンピューティングに冷笑を浴びせ、業界の熱狂をやゆしたが、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)市場が順調に発展していることは、GoogleやSymantecの新しい動きが証明している。
Symantecは10月8日、MessageLabsを6億9500万ドルで買収すると発表した。セキュリティSaaS関連の企業買収では、2007年のGoogleによるPostini買収の6億2500万ドルを超え、過去最大となる。一方、グーグルは同日、Postiniベースのメッセージセキュリティソフトウェアの価格体系を変更し、電子メールの保存期間を最大10年まで延長した。
451 Groupアナリストのポール・ロバーツ氏は、「MessageLabsはメッセージングサービスやSaaSセキュリティサービスをプロビジョニングし、提供、管理するための最も成熟したプラットフォームだ。これでSaaSセキュリティは、Symantecの将来を担う主力エンジンとなった」と語る。
SaaS用のオンプレミスセキュリティソリューションに興味を示す企業や、連邦民事訴訟規則の電子メールアーカイブへの適用に苦慮する企業にとって、今回の買収は重要な意味がありそうだ。ロバーツ氏はこう指摘する。
「MessageLabsプラットフォームを取得したことで、Symantecは電子メール、IM、Webの脅威を検出できる成熟した、収益性の高いSaaSポートフォリオを手にした。また同社は優秀な開発陣を迎え入れることになり、情報漏えいの防止やコンプライアンス、データアーカイビングなどをカバーする包括的なセキュリティSaaSビジョンをさらに前進させることが可能になった」
ロバーツ氏はまた、「Symantecの販売チャネルと販売力、さらにはエンタープライズ市場におけるGoogleなどの有力プレーヤーの失敗などを考えあわせると、同社がセキュリティSaaS分野のトップに立つチャンスは十分にある」と話す。
端的に言えば、MessageLabsはSaaSセキュリティのマーケットリーダーであり、Symantecはそれに賭けたのである。どうやらエリソン氏は急いで消火ホースを引っ張り出し、SaaSに向けてもっと冷たい水を浴びせかける必要がありそうだ。あるいは少なくとも、セキュリティドリブンのSaaSだけは例外だ、と弁明すべきかもしれない。
一方、Googlegがエンタープライズ市場で苦戦しているかどうかはさておき、同社は大企業にPostiniをもっと魅力的に見せるための方法を模索して、今回、価格体系にサービスの長期化を反映させた。
今後、Google Message Discoveryで電子メールを10年間保存する場合、ユーザーあたり年間45ドル、1年間保存する場合、ユーザーあたり年間25ドルでサービスを利用できる。また1ユーザーあたり10ドル追加すれば、保存期間を1年延長できる。
Googleでは、サービス期間を10年間にすることで、企業はストレージキャパシティを気にすることなく、民事訴訟の証拠開示のためにメッセージを保存、検索することが可能になるとしている。Google Message Discoveryには、このほかにもアンチスパム、アンチウイルスフィルタリング機能が含まれ、一般に広く普及するMicrosoft ExchangeとIBM Lotus Domino電子メールサーバをサポートする。
Symantecが将来のMessageLabsのアップグレードに関して、Googleから学ぶことがあるとすれば、オンプレミスソリューションよりもSaaSのほうがはるかに有利であることを宣伝するチャンスを絶対に逃してはならないということだ。Googleの製品マーケティングチームに所属するビル・キー氏は、Googleのオフィシャルブログにこう書いている。
「オンプレミスのセキュリティおよびアーカイビングソリューションのトータルコストを考慮すれば、電子メールを7年間保存するためにかかる費用はユーザーあたり年間200ドル以上。Googleの規模の経済を活用すれば、ユーザーは同じ目的をユーザーあたり年間45ドルで実現できる」
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